スタートレックという SF テレビドラマに出てくる通信機「コミュニケータ」を作る企画の2回目です。
ブログの記録を見たら、初回の公開日時は2023年なので3年近く前でした。
(初代スタートレックについてとコミュニケータの製作資料は、以下のリンクをご覧ください。)
ここまで間隔が空いたのには訳があります。
コミュニケータの中央の丸い部分は特徴的にグルグル回転しますが、そこが再現できませんでした。
3年前に試作したコミュニケータです。(今見てみると、作りが雑でサイズは小さい。)

3年前は、オリジナルに近い構造を目指して時計のメカを内蔵しました。(オリジナルはストップウォッチを内蔵しています。)
しかし、クオーツ式の腕時計(セリアで100円!)のメカを内蔵したために、スムーズな回転ではなく1秒刻みで動くのでグルグルが再現できませんでした。
ハードオフやヤフオクなどで(クオーツ式で電気的に ON OFF 出来る)ストップウォッチなどを探しましたが見つかりません。
機械工作が得意で超小型の歯車の組み合わせを変更できれば、秒針部分をスムーズな回転に改造できるのかもしれませんが、ちょっと無理ですね。

ところが、この3年の間にスマートウォッチの普及が進み、高精細な丸形の TFT LCD が安価(500円程度)で手に入り、Arduino IDE で簡単に制御できるようになりました。
(下図は AliExpress の販売店より引用した、ドライバ IC に GC9A01 を使用した円形ディスプレイ)

このグルグル部分を機械的な回転ではなく、液晶画面に動画で表示する方法で再現してみます。
初回は、コミュニケータの部品の準備編です。
コミュニケータとは
初代スタートレック(TOS)に出てくるコミュニケータのおさらいです。
コミュニケータは、金色のフタ型のアンテナが付いた、本体は黒色の手のひらサイズの無線機です。
1966年と今から60年前にデザインされたその形状は、2つ折り式の携帯電話の先駆けともいわれています。
アンテナ部を開けると「きゅーきゅきゅ」と独特な音がして本体が起動し、内部のスイッチ操作で通信が可能です。
本体中央には、用途不明の渦巻き模様?がグルグルしています。

劇中に出てくる宇宙船のエンタープライズ号は、ワープ航法で光より早く宇宙空間を飛行することができます(デロリアンと同じく、タキオンを使います。)が、その華奢な構造から大気圏内には突入できません。
エンタープライズ号のクルーは、5年間の宇宙連邦の星域調査任務のために、毎週、未知の惑星を見つけて上陸します。

惑星に上陸するには、通常なら大気圏を往復する小型艇を使いますが、この世界では「転送装置」を使って一瞬で惑星まで移動できます。(特撮代を節約するためではなく、未来の技術の成果です。)
上陸した主人公のカーク船長とクルーは、エンタープライズ号と連絡を取るためにコミュニケータを使います。
小型軽量の通信機ですが、中継機などは必要なくいつでも母船と連絡ができます。
また、惑星調査が終わって母船に帰るときはコミュニケータで「転送」(Beam me up, Scotty)と指示することで、艦内の転送機に転送されます。
このコミュニケータは、他の劇中に出てくる小道具とともに、「Wah Ming Chang」氏の作品です。
Chang 氏は古典的名作、1960年の映画「タイム・マシン 80万年後の世界へ」に出てくる中世的なスタイルのタイムマシンを作ったことでも有名です。
情報収集
コミュニケータを製作するための情報をネットを調べると色々なページが見つかりましたが、中でもすごい HP がありました。
「HeroComm」さんのページです。ここを見れば、コミュニケータを作るために必要な全ての情報がまとめられています。
ここは本当にすごい情報量です。
(下のリンクは、HeroComm さんのコミュニケータを作るための部品のページです。)
サイズ
コミュニケータの本体は、滑り止め加工がされたつや消し黒色のプラスチック製です。
その元となったのは、プラ製の筆箱です。(STERLING PLASTIC社製の「SLIDE-TOP pencil case」商品番号 #632)
この筆箱のスライド式の蓋と内部の仕切りを除去して、全長 23 cm の筆箱を 10 cm 程に切り詰めたものを型にして作られています。

HeroComm さんでは、実際にテレビ放送で使われた10種類のコミュニケータのサイズを(可能な限り)実測してデータを公開されています。
今回は、このサイトで「アルファ」と呼ばれるコミュニケータを参考にモデルを作ります。
基本的には、この「Alpha Hero Communicator Blueprints」に書かれているデータを使いました。
ここで公開されている資料では、小数点2桁まで計測したインチサイズで書かれていますが、製作するモデルで使うために小数点1桁のセンチメートルの近似値にしています。

細かな設計図を描くよりも、いつもの Fusion で 3D モデルを作った方が早いのでサイズを表にまとめます。
ついでなので、本体だけではなく他の部品のサイズもまとめておきます。(単位が不ぞろいだと見づらいので、表内はミリに統一しました。)
| 部位 | 長さ | 幅 | 高さ |
| 本体上部 | 105mm | 63mm | 12mm |
| 本体下部 | 105mm | 63mm | 10mm |
| プレート | 107mm | 65mm | 15mm |
| アンテナ | 74mm | 42mm | 6.4mm |
| パネル | 17mm | 41mm | 不明 |
| マイクグリル | 11mm | 10.2mm | 不明 |
| スイッチ・ノブ | 6.3mm | 4.7mm | 3.6mm |
| リング | 32mm | 28mm | 6mm |
| 重量 | 116g |
材料
HeroComm さんの資料はとても充実していて、たとえばアンテナ部の穴あきの板はコミュニケータを作った Chang 氏宅に残っていた材料を成分分析しています。( C26800 合金、厚さ:0.6 mm、穴径:2 mm、穴間隔:3.2 mm(千鳥配置))
今回は、オリジナルのレプリカを作るわけではないので、ホームセンターなどで手に入る材料と 3D プリンタで作ります。
アンテナ部
アンテナ部の必要な部品です。
・穴あき金属板(パンチングメタル)
・真鍮線
・ホイール部

穴あき金属板
C26800 合金(通称「真鍮(しんちゅう)」)のちょうど良い穴あき金属板は、近くのホームセンターや通販では見当たらなかったので、ホームセンターで売っていた穴径:2 mm、厚さ:0.5 mm のアルミ板を購入しました。

真鍮線
アンテナ部をUの字に囲むように直径 1.6 mm の真鍮線が使われています。
自宅の在庫を確認したところ 1.5 mm のアルミ線がありましたが柔らかすぎます。
さらに探すと、屋内配線(VVF ケーブル)の被膜をむくと 1.6 mm の銅線が出てきました。これを使います。

ホイール部
アンテナ回転部分のホイール部品は、オリジナルでは直径 16 mm の真鍮棒を 3 mm の厚さに切断したものを使っていますが、金属加工は大変なので 3D プリンタで作ります。
スイッチノブ
スイッチノブは、AURORA 社の T-Jet シリーズというスロットカー(コースを走らせて遊ぶミニカー)のタイヤ用ホイール部品(Wheel Hub 8316)を使用しています。

さすがに探してもアメリカ製の1960年代の「ミニカー」の補修部品は入手困難なので3Dプリンタで作ります。
サイズはこんな感じです。(裏にはタクトスイッチを取り付ける 4 mm 程度の穴を開けます。)

ところで、実物はこのように小さな径の上に大きな輪が乗ったシルクハットのような形状ですが、半径 3 mm 位の小さな形状の部品を 3D プリンタで作るのは難しいです。

そこで、形状を簡略化して作ります。

表示灯部
いわゆるインジケータです。
HeroComm さんのサイトで「アルファ」と呼ばれているコミュニケータの表示灯は、左から薄青に見える透明・赤色・青色の順です。(実際の商品名は#2000 で、SS16 Crystal AB、SS16 Siam、SS15 Olivine AB)
オリジナルのこの部分は、スイッチに使ったのと同じミニカーのタイヤ・ホイール部品をひっくり返して、その上にスワロフスキー社の8面カットの人造宝石(クリスタルガラス製)を載せたものです。
つまり、台座の直径は 6 mm で、スワロフスキーの SS16 の直径は 4 mm です。

世界中のネットショップを探せば、スワロフスキーの同じような石は入手できそうですが、ダイヤのような形状にカットした石の裏側に LED を入れて電飾しても光を通さないですよね?
そこで、百均の安価な宝石的なモノを加工して使います。
「ジュエリーシール」です。
これは、透明なプラスチックの裏側に銀色の蒸着がされていてキラキラしていますが、裏の銀色を削ると光がとおります。

マイク・グリル
「2001年宇宙の旅」という映画に出てくる意志を持ったコンピュータ(本物の AI?)HAL9000 のスピーカ・グリルもそうですが、コミュニケータのマイク部分も当時のラジオのスピーカ・グリルの金属製部品を使用しています。
オリジナルと同じように作るには1960年代のラジオが必要ですが、当時のラジオは eBay でも入手困難なので、どうしようかな?

いつもの百均パトロールに行ったときに、ダイソーで見つけました。
「アルミメッシュスポンジ 2個入り」です。

中身はこんな感じです。
色は銀色ですが、かなりオリジナルのマイク・グリルに似てませんか?
これを切り抜いて使ってみます。

合成皮革
実際にはオリジナルのコミュニケータの本体は、滑り止めの凸凹が付いた「Kydex 100」というプラスチック・シート製です。
この素材は、ヒートガンなどで温めると柔らかくなり冷えると形状を保持するので、ナイフのサヤ、モデルガンのホルスター、バイクのカスタムパーツなどに使われていて、日本でもミリタリー系の資材を扱う店から通販で入手できます。(Kydex は、積水化学のアメリカの子会社です。)

オリジナルと同じものを作るのではなく、スイッチや内蔵する基板などの配置も考えたボディを 3D プリンタで作る予定なので、出力した本体の外側に滑り止めシートを張ろうと考えました。
「しかし、宇宙連邦の高級将校が携帯する無線機の表面処理は滑り止めが付いたプラ製だろうか?」
少し考えて(脳内補正?)コミュニケータが実在するなら、その本体の表面は手触りが良くて滑らない革製なのではないかと・・・
アマゾンで評判の良い合成皮革を取り寄せて使ってみます。

内蔵する電子機器
制御用の MCU には内蔵スペースが狭いので小型なものを使いたいですが、グルグルの動画再生を行うので高速描画が可能な ESP32 C3 SuperMini(互換機)があります。
(ESP32 C3 は、SRAM 400 kB、フラッシュ 4 MB 搭載する RISC-V 160 MHz の(Arduino UNO と比較すると)高性能な MCU です。)
そして、効果音などの再生にはデロリアンでも使った DFPlayerMini(互換機)を使用します。
その他に薄型のリチウムイオン電池と充電基板
+5 V 昇圧基板(+5 V が DFPlayerMini の正常動作に必要なため)が必要なので、並べてみるとコミュニケータの中身はパンパンですね。
(他にもスイッチや LED が入る予定です。)
次回の予定
次回は、通販で色々な材料の到着を待っている間に、手元にある材料でアンテナ部分を作ってみます。



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