前回、デジタル回路の解析に便利な、ロジック・アナライザをプリント基板をオーダーして製作しました。
このロジアナは、gusman 氏が設計したもので、内部はよく使われている CY7C68013A ではなく Raspberry Pi Pico が使われています。
製作したロジック・アナライザ Ver.5 の性能は、24チャンネル・100 MHz ですが、最近になって Ver.6 が公開され。その性能は Raspberry Pi Pico 2 を使うと 400 MHz まで向上します。
そして、部品箱には使い道の決まっていない Raspberry Pi Pico 2 とレベルコンバータ用の IC の在庫があります。
これは、新型のロジアナを作ってみなければ!
今回の記事を書くために製作したプリント基板とメタルマスクは、PCBWay さんに提供を受けています。よろしければ、下のリンクのクリックにご協力ください。

ロジアナ基板のデータ
ロジアナ基板のデータは、GitHub で公開されています。
詳しい内容は、以下のリンクをご覧ください。
しかし、ここに公開されている基板製作用のファイルを探し出して、プリント基板製作会社にオーダーするまでには長い道のりが必要です。
そこで、PCBWay で簡単にロジアナ基板をオーダーする方法を紹介します。
PCBWay のコミュニティ
PCBWay には「PCBWay+」というコミュニティがあります。
「本家」PCBWay の HP 上部「共有プロジェクト」を押すと「PCBWay+」へ行くことができます。

ここでは、プリント基板(3D プリンタ用ファイルもあり)の様々なデータが公開されています。

ページを開くと、上にあるメニューの他に週刊のおススメなどが表示されます。

gusman 氏のロジアナ V.6
gusman 氏が設計したロジアナ Ver.6 のデータも、このコミュニティで公開されています。
私がページを見たときには、このロジアナは大きめの写真付きでメインページに紹介されていました。

この画像が表示されている間はロジアナのデータを探すのは簡単ですが、紹介が終わるとプロジェクト内から探すのは大変なのでリンクを置いておきます。
リンク先を開くと、こんな感じでページが開きます。
(gusman 氏はスペイン在住だったのですね。)

ロジアナ基板を PCBWay でオーダーして製作するのは簡単です。
このページの右側にある「Add to cart」を押すと、プリント基板のオーダーができます。

ユーザー登録が済んでいれば、居住国が自動で判断され送料込みの値段が表示されます。
(今までに4枚のプリント基板をオーダーしたところ、優待割引がレベルアップしたらしく「$-0.05」割引でした。今後が楽しみです。)
送料込みで $13 以内です。つまり2千円(初回なら $5 オフ)程度で、ロジアナのプリント基板がオーダーできます。

ちなみに、このプリント基板は PCBWay で組み立てもオーダーできます。
先ほどのロジアナの最初のページで「PCB + Assembbly」を押してから「Add to cart」を押すとプリント基板の製作と組み立てが注文できます。
実際に組み立ての注文はしたことがないのですが、今回、試しにページを開いてみましたが思ったより安いですね。
送料込みで $33 ぐらいで、日本円だと約5千円です。
組み立て料金には部品代は入っていませんが、送料分が割引になり OCS の送料台 $9.77 が料金から引かれています。

ご覧のようにマウスのクリック数回だけで、ロジアナの基板をオーダーできます。
何て便利な世の中になったのでしょうか。(さすが21世紀!)
製造と輸送日数
信号発生器の基板と併せて今回の基板を頼んだので、書いてある内容は繰り返しになりますが、オーダーすると2日で基板とメタルマスクの製造が終了しました。
工場から出荷された荷物は、その日のうちに出国側の税関を通過し、航空便で日本に到着後に税関検査が終了して、佐川急便で東京から北海道まで届きました。その間、4日でした。
合計で6日ですね。
「プリント基板が作りたいなぁ。」と週末に思い付いたら、次の週末には実際にプリント基板の組み立てが出来る速さです。
ユニバーサル基板で部品配置に苦労する必要もなく、極楽な週末電子工作が行えますね。
到着時の様子
プリント基板などが到着した時の荷姿です。
佐川急便で届きました。
箱に傷もなくキレイな状態で届きました。

梱包状態など
基板は、しっかりと梱包材に包まれてシールされ乾燥剤が入った状態です。
(このキャラクタの使用についてはパテント表示などの記載がないため、著作権者から許可が得られているのか非常に疑問に思いましたが、オリジナルのデータを変更せずにオーダーしました。)

メタルマスクは、曲がらないように2枚の板に挟まれていました。

出来上がった基板
到着したプリント基板は、いつもどおりに良い出来です。
今回のプリント基板は、400 MHz までのデジタル信号を扱う細かなパターンが描かれているので、電子拡大鏡で確認しましたがパターンも印刷された文字も問題ありませんでした。
しかし、使用しているコンデンサと抵抗のサイズが 0402(1005M、1mm X 0.5 mm)なので、手はんだは(私には)絶対無理です!

必要な部品
このロジック・アナライザは、ほとんどの機能を MCU(Pi Pico 2)内のファームウエアが担当しているので、使用部品はほんの少しです。
Raspberry Pi Pico 2
メイン部品の Raspberry Pi Pico 2 は、WiFi 機能付きでも無しでも OK です。
(Raspberry Pi Pico も使えますが、最大周波数は1/4に遅くなります。)

TXU0104PWR
5 V のロジック信号を高速に、Pi Pico 2 の入力上限電圧である 3.3 V に変換するために使用します。
最大の24チャンネルを使うために6個の IC を使います。

コンデンサなど
・100 nF、0402(1005M) 12個
・100 kΩ、0402(1005M) 1個
・8.2 kΩ、0402(1005M) 1個
・SMD ダイオード:LL4148 1個
・16ピン 2列 L型ピンヘッダ 1個(入力用)
・3ピン L型ピンソケット 1個(外部同期・増設用)
・3ピン L型ピンヘッダ 1個(外部同期・増設用)
・スイッチ、SK13D07VG5 1個(特殊な感じの4ピン、3回路のスイッチです。)

オリジナルでは入力部に L 型ピンヘッダ(ピンが出ているオス)を使っていますが、すでに前回、Ver.5 用のプローブの端子をオスで作っているので、このままでは使えません。

そこで、この部分はピンソケット(差し込むメス)に変更しました。
プローブ部
このロジアナは最大24チャンネルなので、20チャンネル分(10 X 2)は完成品を AliExpress で購入しました。

残りは4チャンネルですが、I2C や SPI などで使えるように5チャンネル分のプローブを自作しました。
材料は、
・プローブの先 5個
・圧着用ピンヘッダ 5個
・適当な配線 5本分
プローブ部の製作
まず、色付きの並行コードを準備します。

圧着端子を準備します。
圧着端子は専用工具で圧着します。
5本分の圧着が終了です。
本当は、グランド線を分かりやすくするために黒色の線が欲しかったのですが、無かったので紫色をグランドにします。

プローブの先端は、ほかのチャンネルと同じ2つに開くタイプを使いました。

先端の拡大写真です。
この小さな金具で、しっかりと IC の足などにプローブを固定します。

配線の色と同じ色のプローブ部に、先ほど作った配線をはんだ付けしたらプローブは完成です。

ロジック・アナライザ基板の組み立て
このロジック・アナライザ基板の組み立ては、非常に細かな部品を使っていることを除けば非常に簡単です。
Raspberry Pi Pico 2 とレベルコンバータ IC(TXU0104PWR) 6個、コンデンサ、抵抗とダイオードを「自宅リフロー」して、手はんだでスイッチとソケットを取り付けるだけです。
基板へクリームはんだの塗布
今回はプリント基板に併せてメタルマスクをオーダーしたので、クリームはんだは簡単にプリント基板に塗布できました。
(0402(1005M)サイズの部品なんか無理だと思ったら、メタルマスクを使うと何とか完成できました。)
部品の搭載
表面実装部品を基板に載せます。
細かい部品が多いので、電子拡大鏡で確認しながら行いました。(手がプルプルしました。)

自宅リフロー
いつものようにヒートプレートで基板を加熱します。
加熱中に2~3個のコンデンサの向きが移動しましたが、何とか先の細いピンセットで修正できました。
これだけ小さな部品が密集していると、加熱した基板上で隣との隙間が狭い状態で修正するのは大変でしたが、何とか完成しました。

・・・が、今回の基板は Raspberry Pi Pico 2 の取り付け端子がリフロー用の端子なのに、クリームはんだを忘れていました。
メタルマスクは、ギュツと押さえるとたわむので、部品が付いた状態でもう一度メタルマスクを上にのせて、クリームはんだを塗布しました。
そして、2度目のリフローを行いました。
(まあ、短時間の再加熱なので大丈夫でしょう。)

スイッチ・端子などの取り付け
残りのスイッチ、入力端子を手はんだで取り付けます。
チャンネル拡張用の3ピン端子は、24チャンネル以上の用途を今のところは考え付かないにので、今回は取り付けません。
スイッチは在庫にあった少しケースの形状が違うものを、入力端子はメスの L 型2列で13ピンの物を2個1で加工して使いました。

ファームウエアの書き込み
Raspberry Pi Pico へのプログラムの書き込みは、バイナリ・ファイルが有れば非常に簡単です。
GitHub の Release セクションに行きます。
現在の最新バージョンは 6.1 ですが、ファームウエアは 6.0 のところにあります。
個々のファイルは折りたたまれていて見えないので、「Assets」を押します。

私は WiFi が搭載されていないモデルを使ったので、「logic-analyzer-firmware_v6.0.0_BOARD_PICO_2.zip」をダウンロードしました。

このファイルを Pi Pico 2 に書き込みますが、手順は超簡単です。
Pi Pico 2 表面のリセットスイッチを押しながら、Pi Pico 2 をパソコンにつなぎます。
(写真は以前の Pico です。)

「RPi-RP2」と言う名前の USB 外部記憶装置として Pi Pico が認識されるので、Windows エクスプローラでファームウエアを張り付けるだけです。
無事ファームウエアが書き込まれたら、勝手に Pi Pico はリセットがかかり、ロジック・アナライザとして機能します。

動作確認
GitHub の Release セクションの上の方にある「logicanalyzer_6.0.0.1-win-x64.zip」を解凍して適当なフォルダに入れておきます。
そして、完成したロジックアナライザ基板を Windows パソコンにつなぎます。
ロジアナのプログラム名は「LogicAnalyzer.exe」です。
これを実行しますが、こんなメッセージが出るときはパソコンに Python が入っていないかパスが通っていないです。

Python をインストールするときは、一番下の「Add python.exe to PATH」にチェックを入れて「Install Now」を押します。

オシャレな起動画面の後に動作画面が表示されます。
試しに I2C の信号を見てみました。

ところで、現在起動しているのは Ver.6 のロジアナ・ソフトです。
このロジアナ・ソフトは、前回の Ver.5 のソフトに比べると洗練されて良い感じです。
そこで、Ver.5 の Raspberry Pi Pico で作ったロジアナをつないでみます。
残念!エラーで接続できませんでした。
Ver.6 のソフトには Ver.6 のハードが必須のようです。

それでは、逆も試してみます。
Ver.5 のソフトに Ver.6 のハードをつないでみます。
こちらもダメですね。
Ver.5 のソフトも Ver.5 のハード専用でした。



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