オシロスコープ専用信号発生器(SAG1021I)2

前回、Siglent 社のオシロスコープに接続して使用する信号発生器「SAG1021I」の動作確認を行いました。
今回は、この信号発生器の性能の確認と波形の保存・出力をしてみます。

なお、オシロスコープが故障したので、色々なオシロスコープから悩みながら Siglent 社の「SDS804X HD」を選んだ理由は、下の記事をご覧ください。

使用したオシロスコープ

オシロスコープは、Siglent の SDS804X HD を使用しました。
同社では安価なシリーズですが、最新式の解像度 12 ビットです。

販売店の HP より引用

オシロスコープと今回紹介する信号発生器の入手元は、「T&Mコーポレーション株式会社」です。
他にも販売店はありますが、こちらに決めた理由はこんな感じです。
・Amazon で(たまに)特売をやっている。
・製品を販売するだけではなく、使い方や動作原理などの情報を HP 上でたくさん公開している。
・担当者が親切

SAG1021I 信号発生器

SAG1021I は、Siglent 社のオシロスコープ専用のオプションです。
この信号発生器はご覧のように小型軽量ですが、単体では使用できません。
単体でも使えて、オシロスコープに接続しても使用したいなら、同社の SDG1032X シリーズの信号発生器がおススメです。

販売店の HP より引用

SAG1021I の主要機能
・USB 電源で動作する。
・最大出力周波数:25 MHz(サイン波)
・最大出力振幅:6Vpp(50Ω時 3Vpp)
・出力チャンネル:1ch
・出力端子はオシロスコープのグランドから絶縁
・任意波形を 45 波形内臓
・外部リファレンスクロック入力なし。

性能の確認

前回は、オシロスコープで SAG1021I の周波数精度と信号振幅を確認しましたが、自宅でで得きる範囲でもう少し正確に計測してみます。

周波数精度

取扱説明書に記載されている SAG1021I の周波数精度は ±50ppm ですが、前回のオシロスコープで計測した結果は -160 Hz だったので「-1.6 ppm」程度と高精度でした。

今回は、GPSDO(ji1udd さん設計)を信号源にした、おじさん工房さんの高精度周波数カウンタ RFC-7 で計測します。

波形の出力

SDS804X HD の日本語版のマニュアルには、SAG1021I から波形を出力するには「前面パネルの WaveGen ボタンを押す」と書かれていますが、表面パネルには物理ボタンの「WaveGen」は見当たらないようです。(私の眼が節穴なのかな?)

実際には、左上のメニューの Utility > Wave Gen を押して、信号発生器の機能を呼び出します。

メニューは右側に表示されます。
出力波形は、サイン波・10 MHz・1.00 Vpp に設定しました。

電源オンから1時間程度経過してから、RFC-7 で周波数を計測しました。
約 -122 Hz ですね。オシロスコープで計測した結果より、約40 Hz 良い結果になりました。

ただし、ネット上で他の方が SAG1021I の周波数誤差を計測した結果では「-3 Hz」だったので、それよりは40倍以上誤差が大きいということですが・・・
(本体を開封せずにオシレータの調整ができれば良いのですが。)

振幅の確認

前回は信号発生器の出力モードを DC にして、オシロスコープでその電圧を測定していました。
測定結果は、DC 3 Vpp 出力で 2.96 V だったので、誤差は -0.04 V でした。

今回はちゃんとしたマルチメータ(検定していないジャンクですが)で計測します。
信号発生器の出力は、DC・1 Vpp に設定しました。

HP 3478A(青ロゴ品)マルチメータの測定結果は1.00239 V だったので、誤差は「+0.00239 V」でした。
設定したオフセットの「1.00」を満足する非常に高精度な値ですね。

ネットで確認した SAG1021I の振幅の測定結果では、10 kHz のサイン波・出力振幅を 6 Vpp(= 2.121 Vrms)の時、実効値電圧は 2.1206 V だったそうなので、誤差は「0.0004 V」と高精度だったようです。

波形の保存と出力

アナログ・オシロスコープしかない時代に入力した波形データを保存したり、信号発生機で再現することは大変な手間がかかりました。
しかし、現在ではオシロスコープはデジタル式になったので、入力後にすでに A/D 変換されているのでデジタルデータ化した波形データを保存したり再現するのも簡単になりました。
Sigleent 社のオシロスコープを使用して波形を保存し、SAG1021I で出力する方法には2つあるようです。

1 オシロスコープ単体で波形を保存し出力する。

2 オシロスコープと Windows パソコンを USB で接続し、EasyWaveX ソフトウエアで波形を保存・出力する。

オシロスコープで保存・出力

オシロスコープには波形データを保存するメモリがないので、USB 端子にメモリを刺すかネットワーク上の保存領域に波形を保存します。
今回使用したオシロスコープ (SDS804X HD)には、USB 端子が2つあります。
正面の1個は信号発生器をつなぐので、USB メモリは後部の USB 端子へ差し込みました。

信号発生器から波形を入力して、保存できるかやってみます。
保存できる形式は、以下の3種類ですね。

・セットアップ、リファレンス
・イメージ(*.bmp / *.jpg /*.png)
・波形データ(バイナリ/CSV/MatLab)

「セットアップ」と「リファレンス」は、オシロスコープの垂直・水平軸の設定などの情報です。
イメージは、波形を図形として保存します。
この2つの保存データでは、波形として SAG1021I で出力できないです。
「波形データ」で保存してみましょう。
簡単に保存できました。

次に保存した波形データを呼び出して、SAG1021I で出力してみます。
あれ?出来ないですね。
取扱説明書を確認してみます。

取説に出ている、タイプ別の保存・呼び出し可能の表です。
ダメですね。オシロスコープ単体では波形データの呼び出しは出来ないですね。
これではオシロスコープで取り込んだ波形を SAG1021I から出力できません。

種類保存呼び出し
セットアップ
リファレンス
BMP
JPG
PNG
バイナリ・データ
CSV データ
Matlab データ

オシロスコープと SAG1021I だけでは、取り込んだ波形の再現は無理なようです。

EasyWaveX で波形を保存・出力

Siglent 社が無料配布している信号発生器の制御ソフトウエアである EasyWaveX を使って、オシロスコープで入力した波形を保存・出力してみます。

EasyWaveX の導入

Siglent 社の「Firmware and Software Downloads」に行きます。
この記事を書いている時点での最新版は「EasyWaveX_V1.1.0.25 (Release Date 04.17.25 )」でした。(各信号発生器のソフトウエアの項目のところに同じものがありますから、どれかをダウンロードします。)

EasyWaveX ソフトウエアは、英語版で Windows 対応版のみが公開されています。
このソフトのインストール前には、「NI-VISA」という LabVIEW で有名な NI (ナショナル・インスツルメンツ)社(現在はエマソン社が買収)の計測器の制御用ソフトウエアもインストールしなければなりません。
ユーザ登録をして NI-VISA を導入しておきます。

なお、NI-VISA を全て入れると容量的にも大変なので、ランタイム・パッケージだけをインストールすることも出来ます。
NI-VISA ランタイム・パッケージ」からダウンロードして導入してください。
(EasyWaveX 内の「EasyWaveX Install and User Guide」内に記載されているランタイム・パッケージのリンク先は、旧バージョンの為か現在はリンク切れで表示できません。)

その後、EasyWaveX をインストールします。

機材の接続

オシロスコープと SAG1021I を USB ケーブルで接続します。
オシロスコープとパソコンは LAN でつなぎました。

EasyWaveX で波形の保存

まず、外部から信号を入力します。
信号発生器は、nobcha さんが設計された R909-VFO(Si5351 使用)を使いました。

出力周波数は、10 MHz にセットしてオシロスコープの CH1 に入力しました。

この波形を EasyWaveX で保存してみます。
ソフトを立ち上げて、左側の窓の「Network …」の部分をマウスで右クリックすると「Create VISA TCP/IP Resource」項目が出てくるので選択します。

表示される窓にオシロスコープの IP アドレスを入力します。

「Comunication」項目から「Import waveform from scope」を選びます。

ー重要ー
次の画面でオシロスコープを接続する前に、真ん中の「Parameter Settings」の「Points」を「Auto」から「16K」に変更します。
これをやらないと、 SAG1021I の最大取り込みポイント数を超えるために、後ほど紹介するようにエラーになります。

マウスでオシロスコープを選んで、右側の「Connect」を押します。

そして、一番下の「Import」を押して波形を取り込みます。
取り込みが終了したら、波形ファイルをパソコンに保存しておきます。

EasyWaveX で波形の出力

先ほどパソコンに保存した波形データを SAG1021I から出力します。
LAN でオシロスコープと接続する設定をしていない場合は、上の手順で IP アドレスを設定しておきます。

「Comunication」項目から「Send waveform to AWG」を選びます。

中央の「Parameter Settings」の「Wave List」から保存した波形を選んでおきます。
SAG1021I を選んで「Connect」を押して、一番下の「Send」を押すと保存した波形が出力されます。
(正常に波形が出力されると、下のメッセージが表示されます。)

保存した波形データが SAG1021I に対応しないデータの場合は、以下のメッセージが表示されます。
この場合は、保存したデータのポイント数が規定値以上なので、保存画面で「16K」に設定して取り込みをやり直します。

SAG1021I から出力された波形です。
波形の形とタイミングは似たような波形が出力されていますが、振幅は異なるようです。

EasyWaveX のその他の機能

EasyWaveX には、波形の編集機能が備わっています。サイン波などの標準的な波形なら振幅と周波数などを設定して波形を作ることができます。
また、数式で新しい波形を作り出すことも出来ます。
しかし、このソフトの細かな使い方は同梱される PDF ファイルを見ると「使い方はヘルプを見ろ」としか書かれておらず、自己研鑽が必要なようです。

まとめ

出力信号の周波数と振幅の誤差を確認しましたが、取説に記載の精度より何倍も良好でした。
また、オシロスコープに入力された波形を保存して再現できることも確認できました。
これで安心して、この信号発生器を使うことができます。

次回は、オシロスコープで信号発生器を制御して自動計測を行える「ボード線図」機能について検証してみます。

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