そろそろボーナス時期なので、サンタさんに「今年は頑張ったので、あれが欲しいなぁ。」とお願いをする頃ではないでしょうか?
私も、今年はガンバってブログの記事を沢山書いたので、故障して修理が出来ていない「あの機材」、オシロスコープが欲しいと思っていました。
そこで、アマチュアが手が届くレベルのオシロスコープを調べてみます。
実は、この時期に「オシロスコープ欲しい熱」が高まったのには理由があります。
2024年は普及価格帯のオシロスコープに、自家用車で言うところのモデルチェンジが多く行われました。
以前の様な安価な価格で、高性能化した新型が購入できるようになったのです!
オシロスコープの製造会社
現時点(2024年末)で、個人が趣味に使う価格帯のオシロスコープをネットで調べてみました。
まずは、日本国内で通販などで個人が購入できるオシロスコープの製造会社です。
(日本国内の主要な家電メーカは、社内の製品検査のために計測器製造部門を持っていましたが、悲しい事に現在はほぼ見かけなくなりました。)
なお、前回購入した中古(オークションで入手)のテクトロニクス オシロスコープがすぐに使えなくなったので、保証が付いた新品の入手を考えました。
1 テクトロニクス(Tektronix):その昔、国内では SONY と合弁会社で計測器を作っていました。オシロ界のベンツ的な存在ですが、安価なシリーズ(TBS1052Cなど)も販売しています。
2 キーサイト(Keysight):会社の歴史的には、HP(ヒューレット・パッカード)→アジレント・テクノロジー→キーサイトの流れです。車で例えると BMW 的な感じでしょうか。(個人の意見です。)
3 テレダイン・レクロイ(Teledyne LeCroy):1964年に素粒子物理学のメーカとして創業した異色の計測器メーカで、現在の企業規模は世界第3位です。車ならテスラ的な感じでしょうか?
4 横河計測株式会社:横河電機から計測器部門を分離した会社で、1988年からデジタルオシロスコープを販売しています。現在でもオシロスコープを販売していますが、少し高価(最低価格で50万円台)です。
5 岩崎通信機株式会社(IWATSU):旧 NTT(日本電信電話公社)の周辺会社ですが、趣味で手が届く価格帯のオシロスコープを販売しています。(訂正:今確認したら、DS-5100B シリーズは販売終了でした。)
その昔、IWATSU のアナログ・オシロを持っていました。
6 テクシオ・テクノロジー(TEXIO):トリオ→ケンウッド→テクシオになりました。以前持っていたデジタル・オシロはここの物でした。
7 RIGOL:1998年に中国・北京で創業された計測器メーカです。
8 OWON:1990年創業された中国の計測器メーカです。
9 SIGLENT:2002年に創業した中国の計測器メーカで、中国の深圳に本社、アメリカのオハイオとドイツのアウクスブルクに海外拠点を持ちます。Teledyne LeCroy の OEM 元で共同開発も行っているそうです。
他にも、ドイツのローデ・シュワルツ (Rohde&Schwarz)などがオシロスコープを発売していますが、予算的に届かないので省きます。
この中で、個人でも手に入る価格帯で、十分な性能を持つオシロスコープを製造していると私が感じたのは
・テクトロニクス
・テクシオ・テクノロジー
・RIGOL
・OWON
・SIGLENT
以上の5社でした。
この会社の販売している製品を比較してみます。
現在、購入できる製品
趣味で購入できる価格帯(10万円以内)の商品を比較します。
オシロスコープの外観は、各製造・販売会社から引用しました。
テクトロニクス TBS1052C
テクトロニクス社の HP で確認できた最も安価な製品です。(約7万円)
TBS1052C の主な性能です。
周波数帯域 50MHz
チャンネル 2
サンプル・レート 1GS/s
レコード長 20kポイント
垂直軸分解能8bit
TEXIO DCS-1052B
TEXIO 社の DCS-1052B も価格は7万円台(79,800円)です。
主な性能です。
周波数帯域 50 MHz
チャンネル 2
最高サンプル・レート 1 GS/s
最大レコード長 20k
垂直軸分解能8bit
RIGOL DHO804
RIGOL 社の今年の新製品である DHO804 です。
この商品は最新で高性能なのに、4チャンネルで約6万円(59,400円)です。
周波数帯域 70MHz
チャンネル 4
最高サンプル・レート 1.25GSa/s
最長メモリー長 25 Mpts
垂直軸分解能 12bit
トリガタイプ:I2C、SPI、UARTプロトコル
OWON SDS1104
OWON 社の SDS1104 は、秋月電子と共同開発したタイプです。(秋月価格:39,800円)
通常タイプとの違いは、電源がアダプタになっていて AC 直結ではありません。
(AC トリガがかからないようです。他の違いは分かりませんでした。)
周波数帯域 100 MHz
チャンネル 4
最高サンプル・レート 1 GS/s
最大レコード長 20K
垂直軸分解能 8bit
SIGLENT SDS804X HD
SIGLENT 社の SDS804X HD も今年(2024年)の新商品です。
今回のリストの中では2番目に高価(74,800円)ですが、標準で I2C、SPI、UART 以外に自動車用の CAN、LIN プロトコルにも対応しています。
周波数帯域は若干低いですがアップグレード可能(200 MHz まで)で、サンプル・レート、最大レコード長ともに最高値です。
周波数帯域 70MHz
チャンネル 4
最高サンプル・レート 2 GSa/s
最大レコード長 50 M / 100 M ポイント
垂直軸分解能 12bit
トリガタイプ:I2C、SPI、UARTプロトコル、自動車用のCAN、LINプロトコル
一覧表で比較
文章で書いても、どれが良いのか分からないので、表にして比較します。
型番 | TBS1052C | DCS-1052B | DHO804 | SDS1104 | SDS804X HD |
製造会社 | テクトロニクス | TEXIO | RIGOL | OWON | SIGLENT |
周波数帯域 | 50MHz | 50 MHz | 70MHz | 100MHz | 70MHz |
チャンネル | 2 | 2 | 4 | 4 | 4 |
サンプルレート | 1GS/s | 1 GS/s | 1.25GSa/s | 1 GS/s | 2 GSa/s |
レコード長 | 20k | 20k | 25 Mpts | 20k | 50 M / 100 M |
垂直軸分解能 | 8bit | 8bit | 12bit | 8bit | 12bit |
その他の機能 | I2C,SPI,UART | I2C,SPI,UART,CAN,LIN | |||
価格 | 約7万円 | 79,800円 | 59,400円 | 39,800円 | 74,800円 |
カタログ値の意味
オシロスコープの書籍やネットの情報で、オシロスコープの性能を表す値を確認します。
一応、重要だと思う値は上の表で拾えていると思います。
性能を示す重要な値は、
・周波数帯域
・チャンネル数
・サンプルレート(サンプリング周波数)
・レコード長(メモリ長)
・垂直分解能
・その他の機能
ですね。
周波数帯域
オシロスコープの周波数帯域とは、入力された正弦波信号が振幅の70.7%(-3dBポイント)まで減衰した周波数を示しています。
つまり、周波数帯域 100 MHz のオシロスコープで 100 MHz の信号を測定すると、その信号は 30% 減の値となります。
この値は「最小保障値」なので、メーカによっては 100 MHz でも振幅が 20% 以下しか減らない器材もあるようです。
つまり、最大周波数帯域でも(場合によってはそれ以上でも)波形が出ているか確認することは出来ますが、電圧値は信用できません。(元々、オシロスコープで振幅を「計測」するべきではないと思いますが・・・)
信号を正しく測定するためには「3倍ルール」や「5倍ルール」と言うものがあるようです。
つまりこのルールに従えば、公称 100 MHz のオシロスコープで振幅などを含めて正しく測定できる周波数は 1/3 ~ 1/5 程度の 33 MHz ~ 20 MHz 位までとなります。
ちなみに RIGOL と SIGLENT の周波数帯域は、後から有料でソフトウエア・アップデートにより周波数帯域幅の制限を解除(現在の 70 MHz から最大 200 MHz?へ)出来るそうなので、最初に購入するなら最低周波数帯域の安価な物(表に記載している型番)を狙います。
チャンネル数
これはハードウエア的に決まっている数なので、後から追加することが出来ません。
そこで、出せる価格の範囲で多チャンネルの方が良いでしょう。
(2チャンネルでは I2C は見られても SPI は無理ですね。)
2チャンネルしかなくて7万円台のテクトロニクスと TEXIO は、ここで脱落です。(さらに金額を積めば4チャンネルを選ぶことも可能ですが、今回の選択からは外れます。)
サンプルレート
サンプルレート(サンプリング周波数)とは入力信号を A/D 変換する速度です。
通常は使用する周波数帯域の5倍程度は必要だと言われています。
選択に残った DHO804(6.25 倍)、SDS1104(10倍)、SDS804X HD(10倍) は、どれも周波数帯域の10倍位のサンプルレートがあります。(RIGOL と SIGLENT は制限解除をして 200 MHz にした場合で比較)
ただし、これらの値は1チャンネルの場合です。通常、この価格帯のオシロスコープは同時に使用するチャンネル数が増えると、その分、数値が倍数的に減少します。(2チャンネル同時使用だと 1/2 など)
レコード長(メモリ長)
アナログ信号を一度にデジタルに変換する波形の長さに関係する値です。
デジタル・オシロスコープで記録できる(画面に表示できる)時間は、サンプル間隔とレコード長(メモリ長)を掛けたものになります。
実際の動作では変わってきますが、おおざっぱに言えば数値が多いほうが長時間の信号観察に役立ちます。
ここで、レコード長が 20 k しかない OWON の SDS1104 は黄信号が点灯しました。
垂直分解能
今回比較するオシロスコープは 8ビット又は 12ビットです。
DHO804(12ビット)、SDS1104(8ビット)、SDS804X HD(12ビット)です。
少し前までは、オシロスコープを選ぶ場合に「8ビットあれば大丈夫」という意見が多かったようですが、高価だった 12ビットの物が安価で手に入るのであれば、キレイに波形が表示できる12ビットが良いでしょう。
(波形表示の比較(SIGLENT の HP より引用))
しかし、A/D 変換を行う際には色々なノイズが混入します。
8ビット変換なら拾ってしまうノイズ量も問題にならないレベルであっても、12ビットになるとノイズ対策をしっかり行わないと、それが信号源なのかノイズなのか分からなくなります。
販売しているメーカのノイズ対策の能力が問われる部分ですね。
その他の機能
しばらく電子工作から離れている間に、手に届く範囲のデジタル・オシロスコープにも CPU の各種信号解析機能が標準で搭載されるようになったようです。
まるでロジアナが内蔵されている感じです。
確認した限りでは、RIGOL と SIGLENT は、CPU の周辺機器制御で良く使われる I2C,SPI,UART が簡単に表示できるトリガ機能が付いています。
SIGLENT は、さらに標準で自動車用の CAN、LIN プロトコルを取り込むことが出来ます。
(SIGLENT HP の信号解析例)
さらに、SIGLENT の SDS804X HD は別売で「16チャネル・ロジック・アナライザ」や「信号発生器」をつないで制御することが出来るようです。
(写真は、「16チャネル・ロジック・アナライザ」の動作)
OEM の確認
残った RIGOL と SIGLENT のオシロスコープは、どちらも使ったことがありません。
そこで、どちらのオシロスコープを選ぶかの参考として、OEM 先について調べてみました。
ネットの書き込みなどを見てみると、「RIGOL は Agilent(現Keysight)のOEM」と書かれた記事を複数見ました。しかし、調べてみるとすでに10年ほど前(2010年頃?)には、そういった関係は終了していたようです。
現在は RIGOL が他社のオシロスコープを開発しているという事実はないようです。
SIGLENT は Teledyne LeCroy の OEM 元で共同開発も行っているらしいので調べてみました。
Teledyne LeCroy T3DSO1104HD は 100 MHz モデルで 490 000円です。
(下の表は Teledyne LeCroy より引用)
(多分同じに見える)SIGLENT の SDS1104X HD は 286 000円なので、約半額ですね。
この表の LeCroy 最上位クラス(T3DSO2354HD)と同等と思われる SIGLENT SDS2354X HD は 759 000円ですから、30万円以上節約できる「ジェネリック・オシロスコープ」です。
SIGLENT が、あの有名な Teledyne LeCroy のオシロスコープを作っているメーカだという噂は本当のようです。
安価なシリーズの SDS800X HD は LeCroy では扱ってはいないようですが、上位シリーズのオシロスコープを作っている会社なら、他のシリーズの性能にも問題はないでしょう。(素人のくせに偉そう)
よし、決めました!
次のオシロスコープには SIGLENT SDS804X HD を導入しようと思います。
オシロスコープの開封
突然ですが、もう、オシロスコープが届きました!
いつもは「開封の儀」的な内容は書かないのですが、久々の新品オシロスコープに興奮したので紹介します。
荷姿
オシロスコープは SIGLENT 社の日本代理店「T&Mコーポレーション株式会社」より届きました。
中国から AliExpress などの通販で頼んだ場合なら、オシロスコープなど高価で取扱注意の商品であっても、パッケージに直接送り状などが張り付いて届きますが、今回はさすがに国内からの発送です。外箱に入っていました。
この箱を開けると、SIGLENT 社の箱が出てきました。
箱を開封すると、厳重に梱包されたオシロスコープが出てきます。
中身はオシロスコープ以外に
・70 MHz のプローブが4組
・3P の電源コード
・USB ケーブル
・英語版の「Quick Start」
・検査成績表
が入っていました。
オシロスコープの本体です。
新品はピカピカで気持ちいいですね。
サイズの比較です。
左下は故障したテクトロニクスの TDS3012 です。
その上に、原寸大で印刷した紙製の RIGOL DHO804 を乗せてみました。(小さいですね。)
右側が新品の SDS804X HD です。
テスト信号の確認
早速、(マニュアルも見ずに)付属しているプローブを開封して、チャンネル1につないでテスト信号を見てみます。
「Auto」スイッチを押すと確認ウインドが出て、了解を押すとテスト信号は見られましたが補正が必要です。
プローブの根元にある調整部を、プローブに付属の工具で少し回すと正常になりました。
最新式の 12ビット・オシロスコープの波形はキレイですね。
まだマニュアルを読んでいないので、波形の画像への保存方法が分かりません。
次回からは波形データをパソコンで取り込んでキレイな図を掲載します。(多分・・・)
起動時間の確認
テクトロニクスの TDS3012 程ではありませんが、このオシロスコープを初めて電源を入れた時に、使用可能になるまで時間がかかったように感じたので、数値で比較できるようにストップウォッチで計ってみました。
スマホのストップウォッチを準備して電源を入れます。
ロゴが表示されました。
プローブをテスト信号端子につないだままだったので、波形が自動的に表示されました。
時間は御覧のとおり 35秒ですが、画面が出るまでは30秒を切っていました。
テスト波形が安定して出てからストップウォッチの停止を押したので、実際の起動時間はもう少し早いと思います。
初回は色々な事が気になるので、時間がかかったように感じたのでしょう。
思ったより全然早かったですね。
動作音の確認
色々なオシロスコープのレビューでは、動作音(主にファンの音)が気になるという方が多い気がしたので、このオシロスコープでも動作時の音を測ってみます。(この SDS804X HD がうるさいという意見は、私が確認した限りでは見ませんでしたが・・・)
まず、オシロスコープの電源を切った状態です。39.8 dBA です。
JIS などの標準値では、静かな図書館が 40 dBA なので十分静かな室内です。
オシロスコープ動作時の直近の状態です。(騒音計を、ほぼオシロスコープに接するぐらいの近さで計測)
52.4 dBA です。これは家庭内の平均的な音の 50 dBA を多少上回る程度です。
確かにファンの音は聞こえますが、何かの作業をしていると気にならない程度の音量です。(個人の意見です。)
画面保護
最近のデジタル・オシロスコープは液晶画面の大型化が進んでいて、表面にはタッチパネルを装備しているので操作中に画面を傷つける可能性が高まっています。
少し前のオシロスコープには、ダイソーなどで安価で購入できるゲーム機(Nintendo Switch 用)の保護シートが使えたらしいのですが、付けてみるとこの器材に使うには小さすぎました。
実際の画面部分のサイズは 187 mm × 110 mm 位です。(定規を置いて写真を撮りました。)
画面中央に黒く見えている部分が、臨時に貼り付けた Nintendo Switch 用の保護シートです。
画面の表示部分だけなら、これでも間に合いますが、LCD 全面の保護のためには小さすぎました。
とりあえずペンなどで操作する部分の保護は出来ているので、ゆっくりと保護シートを探します。
取扱説明書
今回入手したオシロスコープ SIGLENT SDS804X HD は、英語版の簡易説明書「Quick Start」とプローブの袋の中に英語版のプローブの説明書が入っていました。
現在では、スマホやパソコンがあれば英語の翻訳には不自由しませんが、出来れば日本語版が欲しいところです。
探すと、SIGLENT 社の日本代理店の HP に日本語版の取扱説明書(ユーザーマニュアル)がありました。
こちらの「取扱説明書・マニュアル」のページで「SDS800X」で検索すると、英語版と日本語版の各種マニュアルがダウンロードできます。
ただし、クイックガイドとプローブ(PB470)の日本語版の取扱説明書は見つかりませんでした。
しかたがないので翻訳中です。
次回の予定
次回は、日本語版の取扱説明書(ユーザーマニュアル)を読みながら、オシロスコープの操作方法を確認します。
最新のオシロスコープに備わった色々な機能を使いこなすことは出来るかな?
確認したい内容としては、
1 基本操作
2 タッチ操作
3 オシロスコープ言語の日本語化
4 ネットワーク設定と波形・画面のキャプチャ
5 I2C 等の波形のデコード
です。
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