プリスケーラのプリント基板化

周波数カウンタを作る企画は、現在、KiCad を使用しておじさん工房さんの「FRC-5 周波数カウンタ」のプリント基板を作っている状態です。
その流れで、今回は FRC-5 に外付けするプリスケーラを基板化します。
(完成予想の 3D 画像の例です。実際にはメスの BNC コネクタで FRC-5 と直結予定です。)

なお、前回の周波数カウンタの記事は、下のリンクから確認してください。

使用するプリスケーラ IC

プリスケーラ IC には、部品箱の在庫の関係などで下の2種類を選びました。

1 MB506:100MHz-2.4GHz、64,128,256、+5V
2 uPB1507:500MHz-3GHz、64,128,256、+5V
(このブログでは型番の頭の「マイクロ」を「u」で代用しています。)

1個目は富士通の「MB506」です。(現在は正規品の入手は難しそうです。海外から購入すると偽物が届くようです。)
少し前の電子工作では良く使われていた、プリスケーラ IC の定番ですね。

AliExpress や Amazon 等で販売されている完成品のプリスケーラ基板もこの石を使ったものが多いです。(この基板には後で説明する「ECl – TTL 変換回路」は付いていません。)
この IC は下のリンク先の周波数カウンタの記事で使用していますが、ここで使った自作基板は作りが悪かったのかカタログ値よりだいぶ低い「70 MHz ~ 1300 MHz」までしか計測できていません。(1/256 倍で検証)

2番目はNEC(現在はルネサス)の「uPB1507」です。
こちらは現在でも秋月電子で購入可能なので選びました。(販売コード:101341、400円)
ただし、ネット上の情報を調べた限りでは、下限の周波数が高く使いにくいようです。

秋月電子では他にも「MC12080DR2G」というプリスケーラ IC を販売しており、これを使った基板の完成品も扱っていますが、上限周波数が 1.1 GHz と上2つの IC(3 GHz 程度)よりかなり低いので採用しませんでした。(「MC12080使用プリスケーラーキット」販売コード:115487、1,200円)

ECL – TTL 変換回路

プリスケーラ IC は、高速動作をさせるために「ECL」規格で動作しています。(0.8 V 論理)
どちらのプリスケーラ IC も出力は ECL のはずです。
一応、データシートを調べておきましょう。

MB506:1.6 V p-p
uPB1507:2.6 ~ 4.7 V p-p

あれ?「uPB1507」は直接 CMOS ドライブが可能と書かれています。
先入観を持たずに、ちゃんと調べないとダメですね。

ネット上の製作例を見ると MB506 も uPB1507 も出力には「ECl – TTL 変換回路」が付いています。
しかし、データシートの記載が正しければ uPB1507 には変換回路はいらないと思います。

前回の実験で MB506 の出力にある「ECl – TTL 変換回路」をバイパスして実験したところ、測定できる下限周波数が上がった(60 MHz → 120 MHz)ため、製作する2種類のプリント基板上には、どちらにも「ECl – TTL 変換回路」のパターンを付ける事にします。(実験して不要ならバイパスします。)

使用する回路の検討

前回使用したプリスケーラ基板は、GBPPR(Green Bay Professional Packet Radio)さんの「13 GHz Frequency Counter Prescaler」をそのまま作りました。
この回路では「ECl – TTL 変換回路」に専用 IC(MAX961)を使っています。
しかし、現在では入手が困難なので他の方法を考えます。
(前回使用した MAX961)

採用した回路

「ECl – TTL 変換回路」を国内外の色々な情報で検討してみました。
その中には旧型のトランジスタ1個の回路から、専用の IC を使った回路まで様々な方法を見かけました。

最終的に「博物電機研究所」さんの「実験」のページ「テーマ4:レベル変換回路」を参考(そのまま使わせてもらいます。)にしました。
こちらの記事では汎用のロジック IC(74HC04)を使用して、5種類の回路を検証しています。

その発端となったのは、初期型の秋月電子の MB506 使用プリスケーラ・キットが正常に動作しなかった事です。
そして実験の結果、改良回路を使用したところ入力が 100 mVp-p 以上あれば MB506 データシートどおりの 2.4 GHz まで計測できるプリスケーラになったそうです。
つまり、秋月電子の「高感度・広帯域 2.4GHzプリスケーラ・キット Ver.2」回路の元祖?ですね。
(現在販売している「MC12080使用プリスケーラーキット」でも同様の回路を使用しています。)

基板の作図

では実際に KiCad で作図を行います。

入力予定の信号の上限は 3 GHz 以下ですが入力端子には BNC(カタログ値では 4 GHz まで) ではなく、SMA(18 GHz)を使います。

出力端子は、入力周波数の 2.4 GHz(最大値)を 1/256 すると 10 MHz 以下になるので BNC を使います。(使用予定の基板用メスの BNC コネクタ)

本来ならば GHz 帯の回路なので基板の種類にも気を付けるべきでしょうが、今回は通常の基板で実験してみます。

なお、「ECl – TTL 変換回路」の引用元では 74HC04 を使用していましたが、この IC は 14 ピンで場所を取るので MSOP-8 の TC7WU04 を使ってみます。(データシートでは動作速度は同じ程度でした。tpd = 6 ns)(秋月電子 販売コード:110462、150円)

ほぼ完成したMB506 を使用した基板です。
プリスケーラ IC は在庫の関係で DIP タイプです。
その他の部品は、周波数カウンタで使う予定の 1608M サイズの SMD 部品を使いました。

uPB1507 を使った基板です。IC サイズは SSOP-8 なのでかなり小型化できました。
(こうやってみると、小型だと思っていた BNC コネクタの大きいこと!)

基板の単価を抑えるために毎回オーダーの最大サイズは 10 cm にしていますが、両方のプリスケーラ基板を並べてちょうど 10 cm に入りました。(切断幅 3 mm を含む。)

現在、作図している周波数カウンタ2種類のプリント基板が出来上がったら、基板製作会社へオーダーします。
通常はデータの修正が終了して製作指示をすると、基板製作に1日、発送に1日、輸送に2~3日程度で手元に届くので、KiCad の作図をがんばろう!

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