周波数カウンタを作る 9

周波数カウンタを作る企画の9回目です。今までの各回の概略は下のとおりです。

1 siliconvalley4066 さんの「STM32F103C8T6で192MHz周波数カウンタ」を見て、この企画がスタート。TTL レベルで 66 MHzまで計測
2 市販品のアンプ(20 dBm 程度)をつないで 53 Mhz まで
3 手持ちの部品でブレッドボード上に作ったアンプで 24 MHz まで
4 自作基板でプリスケーラの機能確認(1/256、1/512)
5 おじさん工房さんの RFC-5 を組み立てる。測定周波数は ~ 1.3 GHz(プリスケーラあり)
6 RFC-5 のアンプ(120 MHz まで計測可能)と他の MCU(20 Pin)で動作確認
7 カウンタの入力を切り替える実験(40 MHz 程度までは切り替え可能)
8 RFC-5 をプリント基板化する前のアンプ類の接続方法の検討

前回の記事は、下のリンクから確認してください。

今回は、KiCad で周波数カウンタのプリント基板を作ります。

RFC-5 周波数カウンタ

SDR(Software Defined Radio:ソフトウエア・ラジオ)や NanoVNA の情報で有名な「おじさん工房」さんの最新作が超小型周波数カウンタ RFC-5 です。

RFC-5 はSTM32G031J6M6 という(少し前まで秋月電子で安価で販売していた)STM32 シリーズの Cortex-M0 コアで SOP-8 の超小型 MCU を使用した、38 mm X 38 mm という極小のユニバーサル基板上に組み立てられた高性能な周波数カウンタです。
(周波数カウンタに使用している MCU)

このサイズで以下の機能があります。

1 周波数計測範囲は、~ 200 MHz 位まで
2 GPS DO などを入力とした周波数自動調整機能(1, 10, 100, 1k, 10k, 100k, 1MHz ~ 100MHz)
3 外部にプリスケーラをつないだ場合の倍率設定:x64、x128、x256、に設定できます。
4 オシレータの自動判別機能:10MHz, 13MHz, 20MHz, 26MHz を自動判別
5 表示方法の設定:無信号時の表示を「表示を消す」と「測定値のホールド」から選択

これだけの高性能な周波数カウンタが、ほんの少しの部品で製作できるように回路図とファームウエアなど全ての情報をおじさん工房さんのホームページで公開されています。

KiCad で作図

それでは、いつもの KiCad でプリント基板を作ります。
まずは、おじさん工房さんの RFC-5 のページから回路図を落としてきます。

今回はこの回路図に「20dB 低雑音アンプ」のパターンも追加して、部品実装でどちらのアンプを使用するか選べるようにします。

また、電源スイッチと充電・変圧回路基板もプリント基板上に実装しましたが、操作スイッチはケースに組み込めるように別基盤にしました。
(充電・変圧回路基板:これ1枚に USB からの給電、リチウム電池の充電と設定電圧への昇圧の3つの機能が組み込まれています。)

作図が終わったプリント基板

さて、出来上がったプリント基板はこちらになります。

メイン基板
サイズは横幅が約 8 cm です。

スイッチ基板
操作用のスイッチ基板は、メイン基板から切り離してケースに取り付ける予定です。

部品などの大まかな配置です。
作製したプリント基板の左上に BNC コネクタとアンプ部品を組み込むと、オリジナルの周波数カウンタが出来ます。
この部分の回路は、オリジナルで使用している「BF862」が手に入らないので「2SK2394」に置き換えても抵抗など値はそのままで動作することを、すでにブレッドボードなどで実験しているので問題なく動くはずです。

基板左下に BNC コネクタと「20dB 低雑音アンプ」部品を付けると高感度な周波数カウンタが出来るはずですが、まだ動作確認をしたことがないのでプリント基板が出来上がって組み立てるのが楽しみです。

GND などの区分です。
LCD を 3.3 V 対応品にしたので、デジタル回路は全て 3.3 V 系に収められました。
アンプ部のアナログ系 GND(5 V 系) は別系統にしてノイズ対策を行ったつもりです。

別バージョン

RFC-5 は 8ピンの MCU を使用していますが、STM32G031 には 20ピンのバージョン(STM32G031F6P6)があります。
この 20ピンの MCU でも RFC-5 のファームウエアが、そのままで動作することを確認しています。
そこで、20ピンの MCU を乗せて回路を一部改造したバージョンの周波数カウンタのプリント基板も作図しておきます。
こちらのバージョンも充電・変圧回路とスイッチ基板を含んでも、余裕で横幅 10 cm に収まりました。

ピン数が多い MCU 用に、操作スイッチが4個のバージョンのスイッチ基板も作図しました。

完成したプリント基板データ

オリジナルの周波数カウンタ、20 ピンバージョン、2種類のプリスケーラなど全ての KiCad の作図が終了したので、1つの基板(10 cm X 10 cm)にまとめました。

発注先はいつもの PCBgogo さんです。
複数基板を配置して V カットを付けると製作代金が高価(2万円位)になったので、各部をGND でつないで1枚の基板(?)になっています。
この状態なら10枚で $5(+送料)でオーダー可能でした。

一部の部品が乗ってませんが、プリント基板全体の完成予想 3D 図です。

LCD と操作スイッチを合成した、周波数カウンタの完成予想図です。
リチウム充電池は写っていませんが、この感じだとケースに入れても 10 cm X 4 cm 位には出来るかな?

次回の予定

オーダーしたプリント基板が出来上がったら、自宅リフローでオリジナルの RFC-5 と20ピンの MCU 版の周波数カウンタを組み立てます。

「20dB 低雑音アンプ」の性能も気になりますね。
新たにプリント基板化した2種類のプリスケーラで、どこまでの周波数が計測できるかも楽しみです。

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