旧型端子をリニューアル2(Easy FC 編)

レガシーポート(RS232)を USB に置き換える企画の第2回です。
(初回のスペアナアダプタ GigaSt を USB 化する話と「RS-232」が使用している端子の規格などは下のリンクで解説しています。)

今回は、「CYTEC」さんの周波数ドリフト特性を、自動的に記録し保存できる「Easy FC」という周波数カウンタアダプタ的な器材です。

「CYTEC」さんは、長期間、精力的に色々な電子キットなどを企画・販売されている JE1AHW さんが運営する電子工作・ハムの味方のサイトです。
このサイトでは、トランジスタを使用した小規模の回路から周波数カウンタやパワー計などの計測器、本格的な無線機まで、数々のキットの販売や自作に役立つ情報・回路図・ソフトウエアが公開されています。

CYTEC さんのサイトは、下のリンクをご覧ください。(大変参考になります!)

なお、今回の記事では CYTEC さんへのリンクや回路図の引用などをしていますが、作成者の JE1AHW さんから使用許可を頂いています。

Easy FC とは

Easy FC は、パソコンに接続する簡易的な周波数カウンタです。

サイトではその機能を
「今まで、VFOなどの周波数ドリフト特性を測定するには、時計を見ながら、周波数をプロットしていました。「EasyFC2システム」は、お手持ちのパソコンにアダプタ-をつなぎ、自動的にグラフを描かせる物です。時間も、1日分が測定できます。これでVFOの開発が、やりやすくなります。」
と解説しています。

これを作った時は、自作した周波数カウンタに使っている基準発信器の周波数のずれを可視化するのに使ったような記憶があります。

Easy FC の外観

Easy FC は完成品は販売されておらず、プリント基板と部品が集まったキットの販売と製作用データの公開がされています。
製作用のデータは、CYTEC さんの HP の下の方の「PIC12F629使用「EasyFC2 Ver1.2」システムの製作」にリンクがあります。(ファイル名:EasyFC2_System.lzh)
解凍するには「lzh」ファイルが解凍できるソフトを準備してください。

ご覧になって分かるように、私が製作した Easy FC はジャンクなイーサネットの HUB のケースを流用しています。
かなり昔の LAN の HUB は、BNC 端子が付いていました。
BNC ケーブルなら同軸線なのでノイズに強く、対候性のケーブルを使用すれば屋外でも配線が出来ました。(接続には T コネクタとターミネータが必要だったので、部品箱には在庫が眠っています。)

この HUB を利用すると、ケースを加工しなくても BNC 端子を挿入する穴が開いています。
そして、金属製の重量のあるケースなので、しっかりとした計測器用の BNC ケーブルをつないでも動いたりしません。

裏側は「RJ-45コネクタ」が並んでいた部分を金属製のカバーでふさいで「RS232」端子を取り付けました。

Easy FC の内部

ケースを開けたとき、当時のいい加減な作り方にビックリしました。
(せっかくの証拠写真を撮り忘れました。)
基板はエッチングで自作した物ですが、ケースに固定するのに両面テープを使用していました。
(一応、絶縁のために基板とケースの間には透明なプラ板が入っていましたが・・・)
両面テープがはがれて基板がズレたら、ケースに触れて短絡してしまいますね。

エッチングして作った基板裏側の写真は撮っていました。四隅に両面テープの固着した後があります。

この基板に取り付けられている D-Sub 9ピンにつながる配線を取り外します。

取り外しには今回も、白光の808(半田吸取器)を使います。
配線は3本だけなので、簡単に配線を取り外せました。

USB への改造

部品箱の USB 変換機を並べた写真は前回の使いまわしです。
今回の Easy FC のケースには余裕があるので、赤くて一番サイズの大きい USB 変換器を使います。

最初に分解したときの写真を撮り忘れたので後ほど撮影した写真です。(基板をネジでケースに固定しました。)
ケース内部には十分な余裕があります。

変換機用のケースを製作

USB 変換器のケースは前回のデータがあるので、基板サイズを変更するだけなので簡単に出来ました。

しかし、使用しているフリーの 3D ソフト Fusion 360 が最近調子が良くありません。
ソフトを起動しても途中で止まってしまいます。製造元の対応方法も色々と試しましたが改善しません。
何度か立ち上げて動いたときに修正しました。

今回も一度で成功したわけではなく、2回失敗しました。

回路図の確認

Easy FC の内部構造や MCU から「RS232」への接続を確認しようとして、CYTEC さんから最新の回路図をダウンロードして中身を見てみました。
すると、使っている MCU が違います。
「あれ?落としてきた回路図では PIC12F629 が使われているぞ。」

PIC12F629 は 8Pin のオペアンプみたいな形の MCU です。
ところが、我が家の Easy FC は PIC16F873 が使われています。28 Pin の MCU なので全く形が違います。

どちらも、
・電源電圧最大:5.5V
・コアサイズ:8bit
・命令長:14bit
・クロック:20MHz
・データROM:128B
は同じですが
12F と 16F シリーズではメモリなどが結構違いますね。

12F62916F873
ROM1875 kB7125 kB
RAM64B192B
プログラムメモリ1kWord4kWord
GPIO622
タイマ23
価格200円800円

色々と探して PIC16F873 を使った Easy FC の回路図を見つけました。
(CYTEC さんの「ラクダの足跡」という名前の製作用データ置き場にありました。)
PIC12F629 を使ったデータもありました。
(こちらは最初のページにあったのと同じデータでした。)

比較してみます。
どうやら、知らない間に Easy FC はバージョンアップしていたのですね。

12F62916F873
回路図名称Easy FC2Easy FC
製造年20122003

入力回路も全然違います。
(これ以降は 12F629 を使った新型を「Easy FC2」、16F873 を使った旧型を「Easy FC」と呼びます。)
Easy FC2 の入力部です。
2SK241 と 2SC1815 を使ったアンプになっていますね。

Easy FC の入力回路です。
こちらが我が家の物ですね。
説明には
・VR で波形を最大に調整する。
・必要に応じてアンプを使う。
と書いてありました。

「うーーん、アンプ付きの回路に直したくなってきた!」
でも、今回の趣旨はインターフェースの USB への変更なので、改造は次回ですね。

USB 変換器の接続

USB 変換機の入出力を EasyFC へつなぐための接続を回路図で確認します。
(Easy FC の関連部分を引用します。)

回路図では「RS232」の変換に MC145407 が使われていますが、自作基板では手元にあった ADM232 を使ってレベル変換をしています。

今回USB 変換機は PIC16F873 の
TX:17 ピンに USB 変換器の RXD
RX:18 ピンに USB 変換器の TXD
に接続します。
合わせて最初から USB 変換器からの +5 V と GND もプリント基板へ接続しておきます。

元々、「RS232」は、クロック信号を持たず通信を行う調歩同期型(UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter)なので、クロック信号は必要ありません。

動作試験として、ばらした状態でこの接続でパソコンにつないだら接続が完了しません。
事前に「RS232」でつないだ時は動いていたので Easy FC の異常ではありません。
電源も正常に来ているし・・・
一応、TX と RX を逆にしてみます。

今度は動きました。
この AliExpress で購入した USB 変換器につなぐ場合は、
PIC16F873 の
TX:17 ピンに USB 変換器の TXD
RX:18 ピンに USB 変換器の RXD
を接続すると動作しました。
(他のアダプタでは検証していないので、理由は不明です。また何か間違っているのかな?)

今回は、どう見ても消費電力が少なそうなので、初めから電源を USB バスパワーにして取り扱いを簡単にします。(消費電流の削除のために RS232 変換 IC の ADM232 も外しました。)

一応、この状態でモバイルバッテリから電源を供給して消費電流を確認します。

あれ?電流がゼロですね。(左下の値です。)
動作確認用の LED は点灯しているので動作はしているようです。
この USB 電源計測アダプタは前回の簡易スペアナ・アダプタの GigaST でも使いましたが、数十mA 位の少ない電流は測れないのかな?
(後ほど、パソコンの USB モニタ機能で調べたら消費電流は 90 mA 位でした。)

Easy FC の組み立て

すでに一部組み立てが済んでいますが、元の状態からの変更は、
・プリント基板が両面テープで固定されていたのを、M3 ネジに変更
・電源端子、D-Sub 端子は除去

正面の写真です。電源端子を外したのでカッコ悪いですね。
機能確認が無事終わったら、表面の文字などのシールを作り直します。
(型番も Easy FC の間違いですね。)

後ろ姿です。
「RS232」用の D-Sub 端子がなくなりスッキリしました。
(USB 変換器ケースの上側が干渉するので、カッターで切断しました。)

動作確認

今回使用した USB 変換器が使用している変換チップは「FT232」です。
秋月電子の有名な「FT232RL USBシリアル変換モジュール」(販売コード:101977)も持っているので、ドライバはこれを使ったときに入れたものですね。
ちなみに「FT232」のドライバは、チップの製造メーカ FTDI 社の HP からダウンロードできます。

赤い USB 変換器は Windows10 のノートパソコンで問題なく認識しました。
(いつも Windows のソフトを動かすときは、膝の上にノートパソコンを置いて動かしています。下の写真の状態です。本当のラップトップですね。)

Easy FC Ver 1.2 のソフトを立ち上げて、使用している COM ポートをノートパソコンの「FT232」が見えるポート(今回は COM6)に設定します。
このソフトは起動の際に COM ポートが正しくないと動作しないのでいったん終了します。

再度立ち上げると、正常に認識しました。
手元に適当な信号源が思いつかなかったので、ルビジウムの基準信号発生器をつなぎました。
この基準信号源がふら付くことは考えられないので、Easy FC に使用している 12.8 MHz の TCXO の安定度を見ている形になります。
しばらく動作させましたが、一番下の桁が多少動いている程度ででした。
インターフェースを USB 変換器に交換しても問題なく動作していることが確認できました。

ところで、作業部屋のディスプレイの裏には、Linux(ubuntu)が入った「小型化改造パソコン」(総製作費用110円)が固定されていて、簡単な記録やネットでの調べもの、3D プリンタのファイル作成などに使っています。
このパソコン(Linux)で Easy FC の制御用ソフトが動けば、毎回 Windows パソコンを出して来て膝の上で動かす手間が省けます。
(下の写真は壁面書庫の様子で、ディスプレイの裏に「小型化改造パソコン」がネジ止めされています。)

じゃあ、食わず嫌いで手を出していなかった Wine(Wine Is Not an Emulator:Linux 上で Windows のソフトを動かすもの)を入れてみましょう。

Wine の導入と設定方法などの細かな手順は別記事で書く予定ですが、2~3か所の設定方法で悩みましたが1時間くらいで簡単に出来ました。
Linux が入っている「小型化改造パソコン」は、捨てられていた昔のノートパソコンを拾ってきて改造した、いいかげんなパソコンですが、Wine を使う事で Linux 上で軽快に Windows のソフトが動いています。
(下の写真は、Easy FC の Windows のソフトが Wine で動いている様子です。Easy FC ソフトの下に Linux の端末が見えます。)

これで、膝の上でノートパソコンを使いながら制御していた器材が、壁面書庫に作り付けのパソコンにつないで使えるようになったので、使い勝手がすごく良くなりました。

評価

まず、Easy FC2 だと思っていた我が家の装置は旧型の Easy FC だったのにビックリしました。
そして、1枚限りのプリント基板をエッチングして、ドリルで穴あけして作っていた昔の自分は頑張っていたなぁと褒めてやりたかったのですが、基板を両面テープで止めているようではダメですね。

信号源の周波数安定度をパソコンで簡単に計測できる Easy FC が、USB 変換器を内蔵して USB バスパワー化できましたし、(もっと遅くて不具合が出ると思って)食わず嫌いだった Wine が動くようになって使い勝手が飛躍的に向上しました。

満足度は95点です。(Linux パソコンに Wine を入れて Windows のソフトが使えるようになった点数も加算されています。)

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