手近な部品で周波数カウンタを作る企画の7回目です。
今までの各回の概略です。
1 siliconvalley4066 さんの「STM32F103C8T6で192MHz周波数カウンタ」を見て、この企画がスタート。TTL レベルで 66 MHzまで計測
2 市販品のアンプ(20 dBm 程度)をつないで 53 Mhz まで
3 手持ちの部品でブレッドボード上に作ったアンプで 24 MHz まで
4 自作基板でプリスケーラの機能確認(1/256、1/512)
5 おじさん工房さんの RFC-5 を組み立てる。測定周波数は ~ 1.3 GHz(プリスケーラあり)
6 RFC-5 のアンプ(120 MHz まで計測可能)と他の MCU(20 Pin)で動作確認
前回の記事は、下のリンクから確認してください。
今回は、オリジナルのソフトは変更せずに、外付けのハードウエアで入力回路の切り替えをして、測定上限周波数がどこまで行けるか調べます。
LCD の交換と消費電流の確認
切替回路を作る前に色々な場合の消費電流を確認します。
前回のブログ記事で LCD を変更して消費電流を測りましたが、その他の部分の電流値を測っていなかったので、実際に周波数カウンタにした時の電池駆動を考えて簡易計測しておきます。
No. | 状 態 | 消費電流 | 増加 |
1 | アンプなし、3V LCD、バックライトなし | 13mA | – |
2 | アンプなし、5V LCD、バックライト有り | 32mA | 19mA |
3 | 1 + アンプ | 86mA | 73mA |
4 | 1 + プリスケーラ(MB506) | 41mA | 28mA |
5 | 1 + プリスケーラ(HMC363,MB506) | 103mA | 90mA |
6 | 1 + 20dB 低雑音アンプ | 86mA | 73mA |
HMC363 と MB506 を使ったプリスケーラは、やはり電気を食いますね。
また、BF862 は入手できなかったので分かりませんが、2SK2394 を使ったアンプは思ったよりも消費電流が多いようです。
これでは、実際にケースに入れて周波数カウンタを作る時には、電源には 9 V 電池ではなく、リチウムイオン充電池(18650 など)を使用したほうが良さそうです。
入力切替回路の検討
高周波信号の切替と言えば RF スイッチですね。
部品箱をひっくり返すと、使えるかどうか分からないスイッチが出てきました。
しかし、この小型周波数カウンタに使うには大きい上に、上限が数 GHz というオーバースペックです。
次に考えられるのは、MCU の複数の入力端子に信号を入力してソフトウエアで切り替える方法です。
でも、この周波数カウンタ(RFC-5)に使用している MCU は 8 Pin のなので余分な端子はありません。
(下図は STM32G031J6M6 の各ピンの用途です。5ピンを外部接続がない「NC」としていますが、実際には内部で複数のカウンタの接続用に使用してるので空きピンはありません。)
そこで、ハードウエア的に切り替える回路を検討することにします。
切替回路には、まずは手持ちの部品でこんな回路で試してみます。
ロジック IC も最高速の ALVC や VCX シリーズなら、現在動作している周波数カウンタの入力周波数(129 MHz 程度)まで動作するようですが、手持ちには HC と AC シリーズしかありません。
実測
まずは「74HC00」で作った回路で切り替えが出来るのかを確認します。
回路はユニバーサル基板で作りました。
本当は高周波なので IC ソケットは使用したくなかったのですが、IC の再利用のためにソケットを使いました。
この状態でアンプの入力端子に信号を入れてみます。
まずは 1 MHz です。
スイッチを切り替えるとちゃんと信号が表示されました。
スイッチを元に戻す(信号を入れていない側)と無信号表示「—-」です。
どこまで行けるか見てみましょう。
40 MHz 位までは計測出来ました。
データシート上の実力では「HC」シリーズは 20 MHz 程度の実力のようですが、倍ぐらいの周波数まで動作しました。
では、60 MHz 位まで動くはずの「AC」シリーズではどうでしょう?期待が膨らみます。
74AC00 に交換して試してみます。
ダメですね。
40 MHz まで行かないです。
お試し
スイッチという言葉を見て最初に思い浮かべるのは、どんなスイッチでしょうか?
私の場合はスライド・スイッチが一番最初に浮かびました。
簡単にネットを検索した限りでは、普通のスライド・スイッチで高周波を切り替えている例は見かけません。(もちろん、使えないから誰もやらないのでしょう。)
ダメもとですが、普通の DC 用のスライド・スイッチでも試験してみます。
接続は単線で、すぐに外せるように半田は「チョン付け」です。
この状態で信号を入れてみます。
最初は 1 MHz です。ちゃんと切り替わりました。
10 MHz、20 MHz、あれ? 74HC00 の 40 MHz を超えても正常に切り替わります。
最終的には 90 MHz 位まで切り替えて計測出来ました。
ちなみに、事前にブレッドボードでも試験しました。
ブレッドボード上にスイッチを配置して、同軸線ではない単線で配線したところ、スイッチを切り替えても切り替わりません。(常に高周波が計測できる「導通」状態)
もしかしてと思って、スイッチを外しても「導通」した状態でした。
多分ブレッドボード内の縦に並んだ端子が、コンデンサの役割をして高周波信号を「導通」していたのだと思います。
(元々、数 MHz 以上の信号をブレッドボードで扱ってはいけませんよね。)
評価
現在のところ、組み立てている「おじさん工房さんの RFC-5 周波数カウンタ」は簡単なアンプを付けて120 MHz 程度まで、MB506 のプリスケーラを付けて 70 MHz ~ 1.3 GHz まで計測できています。
KiCad で専用のプリント基板を作れば、プリスケーラのない状態でも 200 MHz 程度まで計れる十分に使える計測器が出来そうですが、元々の設定画面に分周設定があるのでプリスケーラを付けたいところです。
通常入力とプリスケーラ入力を切り替えるために予備試験を行いましたが、ピンダイオードや FET、専用 IC でも使って RF スイッチ基板を作らないと 100 MHz 以上の高周波を切り替えることは出来ないことを再認識しました。(普通のスライド・スイッチで 90 MHz 位まで行けたのにはビックリしましたが・・・)
こうなると同じコアを使った MCU でピン数の多い物を使って、ソフトウエア的に切り替えが出来るのが一番な気がしてきました。
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