最近、しばらく使っていなかった 3D プリンタの出番が増えています。
オーダーしたプリント基板を入れる一点物の器材のケースなどを自作るのに使っています。
その昔、3D プリンタは「自宅で何でも作れる夢のマシーン」として宣伝されていましたが、実際に使ってみると苦手な事も多いです。
ある程度の手入れが必要な事と、特に平らな板状な物を作ると出来上がりまでに、すごく時間がかかる事が弱点だと思っています。
しかし、ちょっとした工夫で、大変便利に使えます。
誰かがつぶやいていましたが「市販で手に入る物は買おう。1点物を作るなら最強!」という使い方をおススメします。
今回と次回で、私が愛用している 3D プリンタで簡単に出来る物の中から、はんだヘルパーを2つご紹介します。
2つとも 3D プリンタ用の製作データを公開している Thingiverse で見つけました。
良く利用させてもらっている Thingiverse とは、電子工作だけではなく色々な種類のデータを公開しているサイトです。
他の 3D プリンタ用データを公開しているサイトと異なり、全てのファイルをオープンソースで公開しています。(ここで公開されているファイルを無断で転用して、高価で販売している悪徳サイトもあるそうなのでご注意ください。)
数えきれないほどのファイルがあるので、色々なジャンルの物を見ているだけで時間を忘れてしまいますね。
今回紹介する1つ目は、「Folding Third Hand / Helping Hand」です。
(3D プリンタ用のファイルは、以下のリンクをご覧ください。)
いわゆる、半田付けをする時に使用する「第3の手」ですが、他の商品と違うのは使わない時にコンパクトに畳めるところです。
さらに、どっしりしていて動きませんし、ロボットみたいでカッコ良いです。
作り方
3D プリンタで必要なファイルを出力します。
上のリンク先でダウンロードできる圧縮ファイルの中には、8種類の STL ファイルが入っています。
私は、ubuntu 版の 「UltiMaker Cura」というスライサー(STL ファイルを 3D プリンタ用のファイルに変換するソフト)を使っています。

最初のうちは、SD カードに STL 形式のファイルを入れて、3D プリンタで認識されないので「故障した?」と勘違いしていましたが、通常の 3D プリンタは Gcode という形式のファイルしか読み込めません。Cura などのスライサーソフトで変換して使いましょう。(当時の私への助言です。)
ちなみに、使用している 3D プリンタは Anycubic 社の I3 Mega です。
少し古い器材(2020年頃購入?)ですが、頑丈な金属製のボディのおかげで、ほとんど調整いらずですが元気に働いてくれています。
(梅雨時でも安心な「フィラメント用ドライ・ボックス」の製作記事は、下のリンクをご覧ください。)
スライサーの設定
この半田ヘルパーで使う部品は、細かな出来上がりは求めないので、
設定は、
積層サイズ:0.3 mm
充填率:25%以下で可
サポート、ラフト共になし
材料は PLA、ABS、PETG なんでも OK です。
必要な材料
3D プリンタで出力する部品以外に必要な材料です。
ワニ口
50 mm(差込口が 5 mm)、2個(腕を追加する場合は、その個数分)
他の部品はホームセンターで簡単に手に入りますが、このワニ口だけ入手性が悪いかもしれません。
Amazon などでも販売していますが、個数が多いです。(私は AliExpress で購入しました。)

M5 ネジ
・40 mm X 1
・15 mm X 4
M5 ナット X5

M3 蝶ネジ
・15 mm X 8
M3 ナット X8
(写真は腕1本分です。)

金属製の棒(プラ製でもOK)
直径:9.5 mm、長さ:15 cm
(少し長い棒を購入して、ダイソーのパイプカッターで切断しました。)

出力部品
3D プリンタで出力した部品です。
台座部分です。

腕部分の1本分です。

組立手順
台座の組み立て
まず、台座部分を組み立てます。
M5 のナットをはめ込みます。
横に1個

金属軸固定部分の裏側に4個です。

M5 ネジ4本で金属軸を挟み込みます。
ここに使うネジは普通の物でかまいませんが、見た目を良くするために、今回は黒色の六角ボルトを使用してみました。(何となくロボの眼っぽいですね。)

最後に M5 40 mm ネジを差し込めば、台座の完成です。
ここのネジは締めすぎると台座を畳めなくなるので、良い感じで締めます。

腕の組み立て
腕を組み立てます。
今回は、在庫の関係で2種類の蝶ネジを使っています。
蝶ネジ側がネジの物と蝶ネジ側がナットの物ですが、どちらの種類でもOKです。
(蝶ネジとネジが一体になっている方(左上側)が比較的安価なようです。)

先端にワニ口を差し込めば、腕の完成です。
最低でも腕は2本作ります。
必要なら、もう1本追加しても便利に使えます。

ところで、私の 3D プリンタの設定が悪かったのか、中央の回転する部分は差し込んだだけの状態です。
本来は内部にネジを組み込むのですが、このままでもしっかり固定されているので、この状態で使います。
組み合わせ
出来上がった台座と腕を組み合わせます。

もう片方の腕も取り付けますが、使い勝手を良くするために、蝶ネジの向きはこのようにすると良いでしょう。

使用例
出来上がった半田ヘルパーの便利な使用例です。
2本の線をつなぐ
コネクタなどを使わずに、2本の線をつなぐことは良くあると思います。
そんな時に、今までは器用に指で挟んだりしていましたが、これからはヘルパー君にお任せです。
使用例なので配線はむいていませんが、こんな感じでしっかり固定してくれます。

部品に配線する
小部品に配線する時も、しっかりと固定してくれます。
(本来はスイッチの端子に絡めて半田付けしますが、試作品の場合です。)

熱に弱い部品の固定
ロジアナのクリップを作る時にも紹介しましたが、熱に弱いプラ部品に接している端子を半田付けする時にも重宝します。
熱が伝わって欲しくない側を、ワニ口で挟んで半田付けします。
これで気持ちだけでも安心して半田付けに専念出来ますね。

高さなどの比較
最後に、良くある金属製の半田ヘルパーとのサイズの違いを比較します。
設置面積です。
製作した 3D プリンタ製の方が倍以上は大きい感じです。

高さを比較します。
製作したほうが5分の1程度の薄さです。
これなら、使わない時に隙間に入れて置けるので、場所も取らないです。

評価
このモデルを公開して頂いた「dsmith1960」さん、ありがとうございます。
(公開されたコメントを読むと、実際には同様の作品を改造したもののようです。)
今までは半田付けをするときに「もう1本手があれば・・・」と思う事が多かったのですが、これを作って解決しました。
また、安定して固定して作業が出来るので、やけどの心配が減った気がします。
評価は、腕の回転軸部分が未完成なので95点です。
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