「車検証」は誰のもの?

先日、2年ぶりの車検を受けました。
前回の車検で、すでに車検証は A6 サイズに小さくなり、内部に IC チップが埋め込まれていることは知っていました。
どうやら、ネットで調べてみたら電子車検証の表面には変更されない情報が印刷されていて、内部の IC タグには次回車検日など変更される情報が書き込まれているようです。
この情報は、パソコンやスマホを使うと個人でも見ることが出来ます。

そして、車検ステッカー(検査標章)もデザインが変わって、令和5年7月から貼り付け位置が「前方かつ運転席から見やすい位置」に変更になっています。
つまり、フロントガラスの中央に貼っていたステッカーは、(右ハンドルなら)フロントガラスの右前に貼るように変わりました。
なんだか、他にもいっぱい変更されていて知識が追い付かないので、変更された内容を忘備録としてまとめます。
そして、調べ始めて疑問に思った、「車検証」は誰のものなのかを生成 AI で調べてみました。

車検ステッカー(検査標章)

この下の画像は、国土交通省 自動車局 整備課「令和5年度7月より、車検ステッカーの貼り付け位置が変更となります。」より引用しました。
新しい車検ステッカー(検査標章)の貼り付け位置は、下の図のとおり「運転席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置」になりました。
また、フロントガラスの上部が濃く着色されている場合は、下にずらして貼ります。

多分、現在市販されている車両のフロントガラス中央には、各種センサやカメラが搭載されているため変更されたのだと思います。(昭和の役所なら車検ステッカーを張るのに邪魔だから、自動車メーカに各種センサは横に移動しろと命じそうですが・・・)

ここで注意事項は、左ハンドルの車は運転席が左側になるので、車検ステッカーを貼る位置は反対側(左側)になります。
つまり、この図を見て外車の左ハンドル車で、車検ステッカーを右側に貼ると法律違反になりますね。気を付けましょう。
(1年点検が終わると貼ってくれる「点検整備済みステッカー(ダイヤルステッカー)」は、左ハンドル車の場合は右側に貼られるので間違わないか。)

車検ステッカーを外から見た図です。
この状態では分かりづらいですが、大きな数字が車検満了の月、小さな数字が車検満了の令和の年です。
満了年の印字位置は左上→右上→右下→左下の順で年ごとに表示場所が変わります。(令和6年は左下、令和7年は左上)

車検ステッカーの内側から見た図です。
こちら側を見ると、車検満了年月日が良く分かりますね。

ちなみに、車検を受けるとフロントガラスに「保安基準適合証」という書類をたたんだ袋が張り付いて帰ってきますが、車検ステッカーとの張替は15日以内に行わないと違反になります。

1年点検などが終わると貼ってくれる点検整備済みステッカー(ダイヤルステッカー)です。こちらは中央の大きい数字が次回検査年、切り欠き部分が検査月です。
色は全部で4種類あり、年ごとに橙色、青色、赤色、緑色と変わります。

日本自動車整備振興会連合会より引用

車検証

2023年1月4日より、IC チップが内蔵された「電子車検証」が交付されています。
今までの車検証は A4 サイズでしたが、新しい電子車検証は A6 サイズで右側の余白部分に IC チップが入っています。(同じく紙製です)

国土交通省特設サイト より引用

今までの紙の車検証では記載されていた次回車検年月日などは、電子車検証の表面には印刷されずに IC チップに書き込まれます。
次回車検年月日が表面に印字されなくなったので、新しい電子車検証は汚れて読めなくなるまでは再利用が可能になりました。

そして、2026年1月までは「自動車検査証記載事項」という IC チップに書き込まれた内容を印刷した書面が補助的に交付されます。(IC チップに対応する移行期間の猶予処置ですね。)
車検の見積もり依頼などでは、車検証以外にこの「自動車検査証記載事項」のコピーも必要な場合があるので、なくさないようにしましょう。(車検証は車に積んでおかないと違反ですが、「自動車検査証記載事項」は車載の義務がありません。)

楽天損保より引用

電子車検証の取り扱い

IC チップが入った電子車検証は、紙の車検証と違う慎重な取り扱いが必要になります。
国土交通省 電子車検証特設サイトの「よくあるご質問」などに記載されている注意事項は、
・保管の際は、過度な高温を避ける。
・折り曲げ禁止
・コピー機の「自動原稿送り機能(フィーダー)」の使用注意
・IC タグの切り取り禁止
・電子レンジの使用禁止
・IC タグは5分程度の防水機能を完備しているが、記載事項が読めなくなったら再交付
・IC タグの書き換えは専門業者以外は禁止

電子車検証の利点と欠点

国土交通省が車検証を電子化することの利点としてあげているのが、
・A4 から A6 に小型化される。
・アプリで車検情報が見られる。
・(許可された)車検整備業者は、車検証受領のために運輸支局へ出頭不要になる。

しかし、どう見ても車検証を電子化して便利になるのは車検整備業者で、車検証や検査標章(車検シール)の印刷や交付から解放されて日々の業務が非常に楽になるのは国交省の職員(運輸支局)のような気がします。
さらに、許可されていない(小規模な)車検工場などは、国交省が委託した「記録事務代行サービス」を利用しなければならず、その費用は車検代と国交省の予算(税金)から支出されています。
(下図の右側の上下の変化をご覧ください。)

自動車検査証の電子化に関する検討会報告書(令和2年6月,2020年)より引用

車検証が電子化される事でユーザーの利点は、アプリで読み込むと次回の車検日を教えてくれたり、車のリコール情報が分かるぐらいです。(スマホのカレンダーとネット検索で代替可能です。)

電子化になって車検を受ける際の手数料が数百円増加したために、ユーザの負担は増えました。
極言すると電子車検証とは、「車検整備業者の手間軽減と国交省職員の業務軽減、国交省による新たな委託業務発注のために、車のユーザが費用を負担する制度」だと言えます。

車検証の空き領域の利活用

令和7年4月から、電子車検証の IC タグを利用した「車検証の空き領域利活用サービス」が開始されています。
電子車検証に内蔵されている IC タグには、車検証の情報では使い切らない空き容量があるので、民間企業に国交省の許可を得てアプリケーションを導入してみませんか?という国交省からの宣伝です。
(以下の図は、車検証の空き領域利活用サービスから引用)

この空き容量を利用したアプリケーションの導入例として、駐車場の案内サービス、カー用品店による消耗品の交換時期通知などが出てきますが、何だかモヤモヤします。

なぜ、このサービスを見て不安に思ったのかを考えてみました。
・車検を受けて電子車検証の費用を払っているのは、車両のユーザである。
・そうなら電子車検証の所有者は、車両のユーザではないか?
・一応(小さな灰色の字で)「保有者の同意が必要」と書かれているが、国と企業が何か良く分からないアプリを書き込むサービスって良いのかな。
・例えれば、スマホの空き容量があるから、電波を管理している総務省がスマホの中に企業の宣伝アプリを書き込むサービスを始めるようなものでは?

IC チップの容量

空き容量の話が出たので、電子車検証に使用されている IC チップの規格を調べてみました。
しかし、通常の検索と ChatGPT の調査では情報が確認できませんでした。

電子車検証の詳細は非公開です。以下の情報は Grok の回答です。

電子車検証のICチップ容量の概要

電子車検証(自動車検査証の電子版)に使用されるICタグ(ICチップ)は、ISO/IEC 14443 Type A規格に準拠した非接触型ICタグで、主にNXP Semiconductors社のMIFARE Ultralight(またはその派生型、例: Ultralight EV1)を基盤としたものです。このチップは低コスト・低容量設計が特徴で、車検証の基本データを格納しつつ、空き領域を将来のサービス拡張(例: 整備履歴記録)に活用する目的で採用されています。

容量の詳細(総容量が間違っているような・・・)

総容量512 bits (64 bytes)ICタグ全体のユーザー利用可能メモリ。主にページ構造(16ページ × 4 bytes/ページ)で構成され、書き込み回数制限(約10,000回)付きのシンプルなメモリ設計。セキュリティ機能は最小限(パスワード認証のみ)で、NFC Type 2規格にも対応。
通常使用容量(車検証データ)約0.5 KB(推定500 bytes未満)車検証情報(有効期間、所有者・使用者住所、帳票タイプ、車両IDなど)を格納。データ項目の合計サイズから推定され、総容量の大部分を占めますが、具体的なバイト数は非公開。アプリ(車検証閲覧アプリ)で読み取り時にJSON/XML/CSV出力可能。
空き容量約2 KB(2048 bytes)車検証データ以外の余剰領域。令和7年(2025年)4月から「車検証の空き領域利活用サービス」開始予定で、民間事業者がアプリを搭載(例: 鍵付き/無し領域)。総容量が64 bytesのため、これはチップ全体の空き(または拡張領域)を指す可能性が高いが、公式には約2 KBと明記。整備履歴や移動サービスなどの追加データ格納に活用。

電子車検証は誰のもの?

電子車検証が本当に車のユーザのものなのかを調べてみました。
まずは、「車検証 所有者」でネットで検索すると、車の所有者の情報しか見つかりませんでした。
そこで、生成 AI に聞いてみました。ChatGPT と Grok の回答です。

ChatGPT の回答

車検証(電子化された自動車検査証/ICタグ付)の発行主体は国(国土交通省)が規程・調達を行う。カードの製造は契約業者が請け負う(国交省の単価契約公告あり)が、個別の「1枚あたりの製造単価」は公表情報では明確な“定価”が見つからない。車検手数料の改定等は国交省の手続きに従う。

うーーーん、ChatGPT の回答では明確に誰が所有者なのか分かりませんね。

Grok の回答

・車検証の所有者は国土交通省であり、ICチップの情報は国土交通省が管理している。
・費用は、初回発行は車検費用に含んでいる。
・再発行手数料は350円
・車検証は国家の登録制度の一部として、国が保有・管理する文書です。個人が車検証を「所有」しているわけではなく、交付されたものは使用権(閲覧・携行義務)のみが与えられます。

たまに生成 AI は本当でないネットの情報を拾ってくることがあるので、法令から根拠を調べてもらいました。
「車検証の所有権が国土交通省であることが書かれた法令の文章を調べてください。」と聞いてみます。

その回答です。

登録制度の概要(第4条)
自動車の登録は国土交通大臣が行い、これにより所有権が公証されます。車検証はこの登録の証明書として機能し、大臣が交付するため、所有権は国に帰属します。
原文: 「国土交通大臣は、政令で定めるところにより、自動車の登録及びこれに係る手数料その他の費用を徴収し、並びに登録簿を備え、これを管理しなければならない。」(関連する登録効果として、所有権公証の行政登録が規定されています。)関連法令:道路運送車両法

つまり、電子車検証と内蔵された ICチップは国(国土交通省)のもので、車のユーザは車検証を閲覧・携行させていただくために費用を払っているという事です。(書き換えは出来ません。)
だから、(車検証保有者の同意があれば)どのようなアプリでも入れ放題という事ですね。

検討段階では

電子車検証の検討は約2年間、高名な学者など18名によって11回にわたって行われて、最終的には報告書が提出されています。(自動車検査証の電子化に関する検討会参照)

自動車検査証の電子化に関する検討会報告書」令和2年6月(2020年6月)を読んでみると、(以下は個人的感想です。)
・政府から各種業務を電子化するように色々な指示が出されているが、(各省庁の制約で)車検証の電子化は遅れている。
・車検証の電子化の検討段階で「令和元年5月に道路運送車両法の一部改正法が公布」されたので、5年後に法律で電子化が開始されるから、急いで電子化しなくちゃ。
・まだ電子車検証の現物は出来ていないけど、普通のカードサイズ(ID-1 型)が良い感じだから、これを使って色々なサービスの付加価値を足そう!

という事で、この時点(2020年6月)では、電子車検証はプラスチック製のクレジットカードサイズでした。

検討段階ではクレジット・カードサイズと結論が出ていたので、時間のかかる法律の変更は、道路運送車両法の第58条の2項を「自動車検査証は、…記録されたカードとする」と形状が明記されました。

ところが、国交省に検討会から報告書が提出された半年後の、国土交通省の報道発表(2020.12.8)で電子車検証は「A6 サイズ」の紙に決定したと発表されました。(この短い期間に国交省内部でどのような決定がされたかは、資料が見つかりませんでした。)
これは、国が定める法律ではなく国交省で決めることが出来る「自動車の登録及び検査に関する申請書等の様式等を定める省令」の第18号様式を書き換えるという方法で実現されています。(A6 なら、クリスマス・カードと同じサイズなので、薄い紙製でも「カードだ」という論法でしょうか?)

しかし、この急な変更のために、2019年からプラスチック・カード前提でアイディアを募集していた「車検証の空き領域の利活用」の内容が現状とは合わなくなってしまいました。
いったい誰が、紙製で壊れやすく車に常に備え付けておかなければならない電子車検証を、駐車場やカー用品店に持って行って「ピッ」と認証させるのでしょうか?(濡れたり汚れたり壊れたら再発行ですよ。さらに、車に入れ忘れたら最大50万円の罰金と前科が付く可能性があります!)

まとめ

電子車検証の採用自体を悪く言うつもりはありません。
しかし、ユーザの利便性を理由に挙げて開始しておきながら、急な方針転換や法律の解釈変更など納得できない点が多い気がします。
まず、最初に国交省は法律に明記してあるとおり、「電子車検証はA6サイズのカードになりました。」と宣伝すべきです。(やましいことがなければですが・・・)

電子車検証にアプリを入れる件はすでにスタートしていますが、「紙の車検証」を車内から持ち出して端末にかざす動作が前提なので、実現性に疑問があります。
急な方針転換はプラのカードだと高価になるという理由のようですが、安価にするならテレビの B-CAS カードのような方法もあったでしょう。

さらに高度な電子化をするなら、どうせ車に積んでおくのがデフォルトの車検証ならば車両に IC チップを埋め込んで、車種がマイクロバスと認識したら児童の取り残しがないことを確認しないとエンジンが切れなくしたらどうでしょう。(子供の人命優先という事なら、多少の費用負担増は可能では。)
また、アメリカ・カナダ・オーストラリア・EU各国のように、商業車はアルコールチェックに合格しないとエンジンがスタートしないシステム(アルコール・インターロック)にも出来たと思います。
車の新しい制御技術の先頭を走れたかもしれないのに、大きなチャンスを逃して大変残念でした。

細かなことを言えば、電子車検証の表面には変更されない事項が印字されると規定しておきながら「使用者の氏名又は名称」は印刷されています。
これは、道路運送車両法で車検証に使用者の氏名を記載すると書かれている為ですが、道路運送車両法の車検証をカードにするという改正の時に修正しておけば解決する問題でした。

このように色々と残念な点が多い電子車検証ですが、車に積んでおかないと50万円以下の罰金を払わなければならないので、文句を言わずに「車検証の持ち主」に従う事にします。

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