初めて新品のオシロスコープを入手してご機嫌な毎日ですが、オシロスコープの操作方法の基本的な事を結構忘れていました。
そこで、一番の基本となるオシロスコープ用のプローブの使い方を振り返ります。
ついでに、今回のオシロスコープに付属してこなかった、高周波測定の必需品「グランド・スプリング」を自作します。
なお、入手できる色々なオシロスコープから、悩みながら SDS804X HD を選んだ細かな過程は下の記事をご覧ください。
プローブの種類
オシロスコープなどに使うプローブには、色々な種類があります。
通常、標準で付属するのは、
・パッシブ:(受動)内部に電源を必要とする電子回路などが無いタイプ
・電圧式:波形の縦軸は電圧
・入力インピーダンス:1 MΩ
・入力抵抗値:10 MΩ
・入力容量:数 pF ~ 十数 pF(SDS804 HD 付属品は 14pF ~ 18pF)
・減衰比:10対1(1対1との切替式が多い)
が一般的です。
・アクティブ(能動)タイプには、GHz 帯の高周波を扱う差動プローブがあります。
・電流タイプには、電流の変化を波形として見られる電流プローブがあります。
・デジタル信号を扱うプローブには、ロジックプローブがあります。
プローブの取り扱い
プローブの基本的な使い方と取り扱い方法を解説します。
プローブの使い方
オシロスコープに付属するプローブは、通常は 1X と 10X の切替が付いています。
これは、簡単に言うとオシロスコープ本体の入力側には 1 MΩの抵抗が入っているので、プローブの抵抗値を 1 MΩと 10 MΩに切り替えることで倍率を変更しています。(解説なので実際の値とは異なります。)
ご存じのとおり、どんな計測器でも計る対象に影響を与えてはいけません。
例えば、少量の水の温度を測るのに、水温より非常に高い温度の温度計を入れると、正しい水温が測れません。
同様に、回路内の抵抗値が低いところ(例えば 50 Ω)に 50 Ωの抵抗値のプローブをつなぐと、計測できる電圧値が半分になってしまいます。
そのため可能な限り高い抵抗値のプローブが望ましいのです。
可能な限り、プローブは 10X 側に切り替えて使いましょう。
また、「波形」というと家庭用電源の AC 100 V を思い出す方も多いのではないでしょうか?
日本国内なら、安定した 50/60 Hz の信号が手近なコンセントまで来ているので、オシロスコープを購入したら「試しにちょっと見てみようかな。」とプローブの先をコンセントにつなぎたくなりますが・・・
危険です!オシロスコープやプローブの定格内であっても、家庭用の 100 V を測るのはやめましょう。
なお、オシロスコープの入力端子は BNC 型なので、信号源などと BNC – BNC ケーブルでつなぎたいところですが、通常の BNC ケーブルのインピーダンスは 50 Ωです。(アンテナ用などは 75 Ωです。)
そのため、プローブ用の 1 MΩと 50 Ωの入力切替が付いていないオシロスコープでは、ターミネータなどを接続しないと正常な振幅で計測することが出来ません。
高級機ではないオシロスコープを使用する場合は、下の写真の様なフィードスルー・ターミネータ(写真は販売店からの引用です。一流メーカ品だと数万円!)などを使用する必要があります。(アマチュアなら他の安価な方法があるので、他の記事にします。)
最後に一番重要な事ですが、プローブを使う前には必ず校正を行います。
オシロスコープ表面に付いているテスト信号端子にプローブを接続して、波形のゆがみをなくします。
プローブを他のチャンネルに移動した時にも、この校正が必要です。
プローブの取り扱い
オシロスコープ用のプローブは、デジタルマルチメータのテストリードとは違って、信号を正確に本体へ届けるために色々な工夫がされています。
そのためケーブルは特殊な物を使用しています。
写真は、断線したテクトロニクスのプローブの芯線をむいたところです。
電子拡大鏡で拡大写真を撮ってみました。
比較対象に、家庭内 100 V 配線用の VVF ケーブル単線を並べてみました。
(比較対象が大きすぎて、軽自動車と大型トラックみたいですが)
プローブの芯線は、写真のとおり通常は髪の毛と同じくらい細い、直径 0.1 mm 程度の細線を使用しているので、たまに見かけるプローブを結んで収納することは厳禁です。
(写真は「360LiFE」の「業界人もやってる! コードが絡まない「8の字巻き」ってなに?」から引用)
ダメ!絶対!!
施設でもたまに見ますが、ラックなどにひっかけて収納するのもオシロスコープに接続する端子側が重たいプローブでは、細線が断線する可能性が高いので避けた方が無難です。
付属品収納ポーチに入れて引き出しなどで保管しましょう。
同じ理由で、結束バンドなどでギュッとしばって保存するのも良くないですね。
グランド・スプリングの作り方
通常、100 MHz を超える周波数を取り扱うオシロスコープでは、プローブの付属品にグランド・スプリングが付属すると思います。
今回入手したオシロスコープは、計測可能な最高周波数が 70 MHz のためか、プローブのグランド・ケーブルはワニ口のものしか付属してしてきませんでした。
グランド・スプリングは単体で販売されていますが、ネットで検索すると出てくる一流メーカ製(KEYSIGHT N4828A)は1個で3000円程ですから、4チャンネル分購入すると1万円を超えてしまいます。
そこで、簡単に自作してみました。(写真は KEYSIGHT N4828A)
必要な材料
必要な材料は、百均などで手に入ります。
1 銅線の単線(昔はダイソーで購入できましたが、現在は銅の価格が高くなり販売していません。)
ダイソーで入手できるアルミ線は抵抗値が大きすぎるので使えません。ホームセンターの量り売りで配線用の単線を購入出来れば100円以下で購入できます。
2 プローブの径に合わせた直径のドリルの刃(ダイソーで100円です。)
3 ラジオペンチ(ダイソーで入手できます。)
プローブの測定
グランド・スプリングを取り付けるプローブの大きさを測ります。
SIGLENT SDS804X HD に付属しているプローブ(PB470)を例に、話を進めます。
プローブの先に付いているフック部分を外します。とても固くてネジ式?と思いましたが違いました。
力を込めて引き抜くタイプでした。
プローブのグランド線がつながる部分の直径は 4.8 mm です。
導通部分の長さは 5 mm 位でしょうか。
先端までは 10 mm 位ある感じです。
製作開始
グランド・スプリングを作った方の情報はいくつか見かけましたが、細かな手順は出ていなかったので、やりながら修正していきます。(行き当たりばったり?)
必要な単線の長さですが、とりあえず 5 cm で行きます。
銅線なので手で簡単に曲がります。
このままプローブの先に巻いてもいいのですが、自分が不器用なのを忘れてました。
せっかく付属してきた正常動作しているプローブを壊す恐れがあるので、ダイソーで購入したドリルの刃を使います。
キッチリと巻いたつもりでも隙間が出来るので、プローブのグランド部分の直径 4.8 mm より少し小さい 4.5 mm のドリル歯を使いました。
巻き始め部分をラジオペンチで押さえながら、キッチリと巻いていきます。
出来上がりは・・・
あれ?ちっちゃいです。短すぎですね。
ダメそうですがプローブに取り付けてみます。
本来の直径より少し小さく作ったので、ねじ込みながらはめるとプローブのグランド部分にしっかりと固定できました。
長さ的には使えなくはなさそうですが、やっぱり短いですね。
単線の長さを 6 cm にしてみます。
ドリル歯にしっかりと巻いて完成しました。
今度は良さそうですが、これでも短めかな?
実際に使うには、 単線の長さを 7 cm 位で作るとちょうど良さそうですね。
これで、グランド線を短くして計測が出来るようになりました。
長いグランドケーブルを使って、外部からのノイズが波形に乗ることが抑えられます。
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