周波数カウンタを作る 16(ケースの製作)

周波数カウンタを作る企画の 16回目です。
今回は、前回で出来上がった RFC-5 周波数カウンタの新基板を、手のひらサイズのケースに入れて持ち運べるようにします。
RFC-5 を作り始めて12回目で、ゴールデンウイークを使って、ついにケースが完成しました。
(高性能な周波数カウンタ RFC-5 の設計者は、おじさん工房さんです。)

今までの記事の概略です。

1 siliconvalley4066 さんの「STM32F103C8T6で192MHz周波数カウンタ」を見て、この企画がスタート。TTL レベルで 66 MHzまで計測
2 市販品のアンプ(20 dBm 程度)をつないで 53 Mhz まで
3 手持ちの部品でブレッドボード上に作ったアンプで 24 MHz まで
4 自作基板でプリスケーラの機能確認(1/256、1/512)
5 おじさん工房さんの RFC-5 を組み立てる。測定周波数は ~ 1.3 GHz(プリスケーラあり)
6 RFC-5 のアンプ(120 MHz まで計測可能)と他の MCU(20 Pin)で動作確認
7 カウンタの入力を切り替える実験(40 MHz 程度までは切り替え可能)
8 RFC-5 をプリント基板化する前のアンプ類の接続方法の検討
9 RFC-5 のプリント基板の製造とオーダー
10 RFC-5 のプリント基板の動作確認が終了(測定上限周波数 190 MHz)、基板の無料配布を開始
11 RFC-5 プリント基板の組み立て方
12 RFC-5 プリント基板アンプ回路の評価
13 プリスケーラ基板の詳細な組み立て方法
14 LCD を I2C 変換アダプタのいらないタイプに交換
15 新型基板の設計と組み立て

周波数カウンタの一連の記事は、以下のリンクからも確認できます。

前回の内容

前回で、おじさん工房さんの高性能周波数カウンタ RFC-5 に市販高周波アンプ基板を乗せた、新 RFC-5 基板が完成しました。
測定可能な周波数は、上側の BNC 端子で 210 MHz まで、下側のアンプ端子だと 330 MHz 位までは測れるというスゴイ性能です!

しかし、このままでは持ち歩いて使えないので、ケースを設計して 3D プリンタで出力します。
ちなみに、すでに何回か試作品のケースの写真が出てきますが、完成品ではありません。
設計が良くなかったので、いくつか不具合があります。
・プリント基板に固定用のネジ穴がないため、フタが閉まらない。
・LCD の向きが180度反転している。
・アンプ用スイッチの固定位置がない。
・充電池を入れる場所がない。

最低でも、これらを修正しないと、実用的な周波数カウンタにはなりません。

ケースの設計

いつもの Fusion で 3D データを設計します。
残念ながら、小型化を優先した RFC-5 基板にはネジ穴が開いていないので、はめ込み式で作ってみます。
併せて、外付けのプリスケーラもケースに入れます。

個人利用なら無料の 3D 設計ソフト Fusion で、ケースの設計が終了しました。
(1行で書きましたが、実際には6つの試作品と数日の日数がかかっています。)

下の図面は、完成品の 3D 図です。

RFC-5 ケース

下のプリスケーラ・ケースの倍率は、上の本体とは違います。

プリスケーラ・ケース

いつものことですが、途中、微調整のために試作品が6個ほど出来ました。

RFC-5 ケースに組み込み

今回の周波数カウンタには、薄型のリチウムイオン充電池を内蔵します。
組み込み前に、再度この状態で動作確認しましたが OK でした。

上蓋部

まずは上蓋部です。
この上蓋に、LCD とスイッチ基板を組み込みます。

下のケース写真は、3D プリンタから取り出したままで表面処理前の状態です。(「糸引き」が見られますね。)
一応、部品をはめ込み式になる事を目指しましたが、LCD のガラス部に力を加えたくなかったので、ここはホットボンドで固定します。

上蓋部の完成です。
表面に文字を刻印しましたが、出力積層サイズを製作時間が節約できる 0.3 mm にしたので、細かな部分が潰れています。(改良することがあれば、次回は 0.2 mm で作ります。)

下側ケース

ケースの下側です。
ケースの下部には、薄型の充電池とアンプ部の電源スイッチを内蔵します。

プリント基板をケースに収めるには、出っ張っている電源スイッチ部を先に押し込むように入れます。
ピッタリと収まりました。(何回も微調整したのは内緒です。)

組み合わせ

出来上がった上蓋部とケース下部を組み合わせます。

一応、ケースを最後まで閉じることが出来ました。
パチンと止まっている訳ではありませんが、上蓋とケースは7か所の爪でしっかりと固定されているので、簡単に外れたりはしません。

プリスケーラ

プリスケーラもケースに入れます。
表面には、2種類の内、どちらの IC を使ったプリスケーラか分かりように型番も入れてみました。

内蔵するプリスケーラ基板も並べてみます。

ケース下部へプリスケーラ基板を入れます。

基板はピッタリと収まったのですが、ぐらつかないように軽くホットボンドで止めました。
上蓋を閉めると完成です。
上蓋は思ったよりもピッタリと締まりました。外すのに苦労するぐらいピッタリです。

側面です。
RFC-5 と合体する BNC と電源の端子が見えます。

機能確認

基板が完成した状態で動作確認は OK だったので、再確認しても問題ありませんでした。
ケースに収まると、見た目が良くなりました。(プリスケーラ用の電源端子がプラプラしてますが・・・)

RFC-5 単体での動作です。
前回と同様に快調に動いています。

オリジナル(上側)で 210 MHz 程度、アンプ(下側)で 300 MHz 位までは計測出来ます。

プリスケーラの合体

プリスケーラは RFC-5 の オリジナル側(上側)の BNC 端子に合体して使います。
その際には、忘れずに電源ケーブルを接続します。

BNC 端子の裏側にあるアンプの電源スイッチを切替えて、RFC-5 の周波数分周設定を 1/256 にすると、プリスケーラで分周した周波数が測れます。(プリスケーラを付けると、3 GHz 位まで計測できるようになります。)

評価

上の完成写真を見てください。
本体だけなら単3電池2個分、プリスケーラを付けても少し長い程度の小型ですが、単体で 300 MHz 程、プリスケーラを付けると 3 GHz 程まで計測できる高性能で手のひらサイズの周波数カウンタが完成しました。

しかし、当初の予定ではプリスケーラ部は「カチッとはめると電源が入って、分周倍率も自動設定される。」を目指していました。(下手くそですが、完成予想の手書き図です。)

しかし、現状では
1 BNC 端子にプリスケーラをつなぐ。
2 電源端子を差し込む。
3 スイッチで 1/256 に分周周波数を設定する。
という3つの手順が必要です。

私の能力では、これ以上の改良は無理そうなので、RFC-5 のケース作成は完成とします。

元々の周波数カウンタとしての RFC-5 の性能は、もちろん100点です。
ケースも十分実用的に出来たと思いますが、プリスケーラ合体部の構造に改善の余地があるので、満足度は95点です。
(あ、動作確認用の LED は付いていますが、充電・昇圧基板上の充電中を確認する LED が確認できる窓が必要です。次に 3D プリンタのファイルを改良する時に修正します。 )

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