2023年にブレードランナーというSF映画の主人公(デッカード捜査官)が愛用する架空の銃(デッカード・ブラスター)を Thingiverse で見つけたデータを利用して、3D プリンタで部品を出力して製作(フルスクラッチ)しました。
(作り方の詳細は、以下のリンクをご覧ください。)
しかし、記事内でも紹介しましたが、自宅にある積層型(FDM)の 3D プリンタでは、この銃の特徴でもある琥珀色で透明なグリップが再現できませんでした。

前回の製作では、材料に透明の PLA を使いました。
結果は半透明でもなく濁った白色といった感じで、上からクリアオレンジをスプレーして「それらしく」仕上げましたが、今でも出来には満足していません。

今回は、ネットで評判の良い透明の PETG フィラメントを使って透明な部品が作れるのかを試験してみます。
材料の違い
もちろん、光造形式の 3D プリンタなら、材料にレジンを使うので透明な部品が作れることは知っていますが、自宅にある積層型のプリンタでどこまで出来るのかやってみます。
取り扱いの楽な積層型の 3D プリンタの材料には、主に4種類あります。
PLA:一番安価で低温でプリント出来るが、硬くて加工が大変
ABS:PLA より多少高価、耐久性が高く比較的高温にも耐えるが、匂いが強くプリントが難しい
TPE:ゴムのような柔らかい素材
PETG:PLA より多少高価、ABS のように高耐久性だが匂いが少ない。加工も楽で透明性が高い
ということで、今回は PETG という素材を使って透明な部品(せめてすりガラス的な)が作れるかテストをします。
使用材料
PETG の透明フィラメントをネットで調べてみると、積層型の 3D プリンタでも透明な部品が作れるようです。(磨くことでレンズも作れるという情報を「かける」さんのブログで発見しました!)
他にも PETG を使った透明部品について色々な情報を確認できたので、実際に試してみます。
材料のフィラメントは、いつもの Amazon で購入しました。
今回購入した商品は、CC3D 社の透明 PETG フィラメントです。購入時はセールをしていたので PLA 並みの1,500円でした。

そのままプリント
最初は透明フィラメントが、ちゃんと出力できるか確認するために、今までの設定を変えずにプリントしてみます。
ブラスターのグリップを途中(厚さ 2 ~ 3 mm 程度)で中断した結果です。

始めて PETG の透明フィラメントで出力していました。
スジが目立ちますが、何となく下に置いた文字が透けて見えていて良い感じです。
「これは、結構簡単に透明な部品が出来るのでは?」(この時は、そう思っていました。)
設定を変更
私はスライサーソフト(3D プリンタ用のデータ変換ソフト)に「Cura」を使っています。
他にも高性能なソフトはありますが、使い慣れたものが良いので、このソフトで試験します。
色々な透明部品の製作例を見ましたが、必要な設定変更は「一方方向・高い温度・ゆっくり・冷却ファン停止」という感じみたいです。
高い温度を維持するために、前回 3D プリンタの「温室」を作っておいた事が役立ちます。
試してみた変更部分は表のとおりです。
| 項目 | 元の値 | 変更値 |
| Infill Density | 25 | 100 |
| Infill Line Directions | 空白 | 0 |
| Infill Pattern | zigzag | Lines |
| Infill Layer Travel Speed | 50 | 20 |
| Print Speed | 60 | 20 |
| Printing Temperature | 215 | 260 |
| Flow | 100 | 110 |
| Enable Print Cooling | True | False |
| Line Width | 0.4 | 0.5 |
変更後の出力結果は、縦に筋が入っていますが、さらに下の文字が良く見えてきました。
「良い感じじゃない?」

試験出力
プリント角度をゼロにすると筋が目立つので、45度に変更してブラスターのグリップを中断せずに最後まで出力してみました。
と言っても我が家の 3D プリンタでは、プリント速度を極端に遅くした今回の設定では、終了まで半日程度かかるので終わるまで放置して、終わったころに作業部屋に行ってみると・・・
見づらいですが、途中から「脱調」と呼ばれるプリントのずれが発生していました。

通常の「脱調」の原因は、3D プリンタの駆動系の不具合やプリント速度の設定が速すぎる場合に発生しますが、今までに何度もプリントして一度も発生していなかったので、今回の設定変更に原因がありそうです。
今度は、プリント中の状態を見ながら出力してみました。
動作音を聞いていると、出力が進んである程度の厚さになるとプリンタ・ヘッドが硬い物に擦れるような「ギシギシ」音がしました。
動作中はヘッドが邪魔で良く見えませんが、プリントしている部分が干渉してヘッドが当たっているようです。
そして、その音が続くと「脱調」が発生しました。

設定を変更した部分で、脱調の原因と考えられるのは、「Flow」ですね。
この値は、溶かした材料の押出量を「100%」から「110%」にして隙間を埋めるものでしたが、材料の押出量が多すぎるために盛り上がった部分にヘッドが引っ掛かって「脱調」してしまうようです。
仕方がないので、「Flow」を「107」まで下げました。
再試験
その他の設定はそのままで、Flow の値を 107 にしてプリントしてみます。
今度は成功しました。
グリップが最後まで出力できましたが・・・
見てのとおり、透明ではありません。

当然ながら厚みが増せば透明度は落ちると思っていましたが、もう少し透けていることを期待していました。
これでは、前回の PLA とあまり変わらない感じです。
磨き上げ
前回使用した PLA は、材質が硬くて加工が大変です。
ナイフや彫刻刀では削れませんし、表面をなだらかにするヤスリがけも簡単には出来ません。
しかし今回使用した PETG は、ナイフなどで簡単に加工ができます。
また、ABS では溶けた感じになって難しかったヤスリがけも PETG なら容易です。
先ほど出力したグリップの右上を、簡単にヤスリがけして磨き上げます。
最初は荒いペーパーを使い、最後は耐水ペーパーで磨いてみました。

表と裏を磨くと多少は透明度が上がるようです。
しかし、写真では分かりづらいですが、表面を磨いても内部が白く濁っています。
このままでは、何時間かけて表面をキレイに磨き上げても透明にはならない感じです。
加熱してみる
ネットで積層プリンタで透明部品を出力して、内部が白濁する場合の対処方法を探しましたが見つかりません。
しかたがないので、素人考えで内部の濁りが少しでも改善しないかと、加熱してみました。(加熱したら、内部が融合して透明にならないかなぁ・・・)
PETG は比較的高温まで耐える素材なので、クリームはんだを溶かすために使っているヒートプレートを使ってみました。
(実際には、溶けてヒートプレートから取れなくならない様に、加熱時にはアルミフォイルを敷きました。)

少しの時間、加熱してみましたが透明度が上がることはありませんでした。
その後、加熱を続けても溶け始めるだけで透明度は上がりませんでした。
後からの加熱では、内部の白濁を解消することは出来ないようです。
手詰まりですね。
現在の私の技術力では積層型 3D プリンタで透明な部品を作るのは難しそうです。
今後の予定
使用している積層型の 3D プリンタでは、今の段階では簡単に透明な部品を作ることは無理でした。
厚さが 2 ~ 3 mm 程度で板状の部品なら、それなりの透明度の部品が出来そうですが、製作したいグリップは複雑な形状で最大 12 mm 程度の結構な厚みがあるので、透明に仕上げるのは無理な気がしてきました。
さらに今回、3D プリンタが出力しているところを見てみると、ネジ穴部分を積層する時にヘッドが他と違う動きをするために、さらに内部に白濁を生じさせているようです。
これらを解消するには、2つの方法があります。
・光造形型の 3D プリンタを購入する10万円コース(材料費込み)
・プリントサービスを専門会社に依頼する(1万円以内?)
他に沢山の透明部品を作るのなら光造形 3D プリンタを導入しますが、現在の用途(小部品やケースの製作)には、手軽にプリントできる積層型の 3D プリンタ1台で十分です。
また、製作依頼の方がコスパが良さそうなので、次回は透明部品を(安価に) 3D プリントしてくれる専門業者を探してオーダーしてみます。


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