ブレードランナー・ブラスターの製作

「ブレードランナー」という映画をご存じでしょうか?私が大好きな映画の1つです。
米国 ワーナーブラザーズ社が1982年に作成したSF映画です。

原作は、これも私が大好きなSF作家のフィリップ・K・ディック氏による「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。大きく話が違うわけではありませんが、主人公の雰囲気がだいぶ違います。(ハードボイルドではなく、いつものディック作品の主人公ですね。)

映画は公開当時は興行的には失敗作とされましたが、その後、色々なところで再評価されています。
映画の中で主人公が使用しているのが通称「ブラスター」です。
映画の主人公デッカードの名前を付けて「デッカード・ブラスター」などと呼ばれる「ブラスター」ですが、今までにいくつか作成・入手していました。(ほんの簡単な物ですが)

ペーパークラフトの「ブラスター」

1つ目が、ペーパークラフト職人の「uhu02」さんが公開されていたペーパークラフトのブラスターです。(http://uhu02.way-nifty.com/die_eule_der_minerva/004.htmlで製作用ファイルを公開されていましたが、現在は公開していません。)

ペーパークラフトのブラスター

写真では現物と見間違うほどのクオリティですが、実際にはペーパークラフトです。「uhu02」さんの高い技術力が分かります。

水鉄砲の「ブラスター」

次が、軽量の半透明プラスチック製で水鉄砲というギミックを備えた「ブラスター」です。特に実物に近い色のこの商品は販売して即品切れだったのですが、たまたま入荷予定のお店があって、即入手しました。

ブラスターの水鉄砲

どちらも、すばらしいクオリティなのですが、紙と空洞のプラ製のために、どうしても軽量なので持った時のズッシリとした重量感がありません。

「ブラスター」の構成

本物(映画上の架空の銃を本物というのは疑問ですが。)の「ブラスター」は、チャーターアームズ社のブルドッグという44口径の拳銃とシュタイヤー・マンリヒャー社の22口径のライフル銃を組み合わせて、引き金枠、特徴的な琥珀色で半透明のグリップ・パネルを追加した架空の銃です。

「ブラスター」の構成図

Charter Arms社のBulldogは、まだHPで販売しています。(このモデルは$452)

STEYR ARMS GmbH社の「.222 Model SLライフル」は販売終了しています。オークションでは約$2,000(下図は販売会社のHP)

時々、ネット上でレプリカの写真を見て「いいなぁ」と感じていました。特に「留之助ブラスター」は素晴らしい商品ですが販売終了しており、オークションなどで見かけても「モデルガン」(失礼な言い方ですみません)に〇十万円は難しいです。
一時期は、拳銃(ブルドック)とライフルのモデルガンの中古を探してきて、改造して作ろうかと考えていました。

「ブラスター」製作例の発見

ところが、ある時、いつものように電子工作などで使えるパーツのデータが無いか「Thingiverse」を見ていたところ、すごい製作例を見つけてしましました。
AndersFP氏の「PKD-2019 Blade Runner blaster.」です。

3Dモデル組立マニュアルのCG

実銃と変わらない部品を、1つ1つ3Dプリンタで作成して組み上げるという、下手な海外の「ブラスター」のキットより素晴らしい作品です。

それでは、映画「ブレードランナー」に出てきたブラスターの製作、やってみよう!

「ブラスター」の製作

入手した部品のデータを、3Dプリンタでプリントします。そして、バリや糸引きなどを除去して、組み合わせに問題が出ないようにヤスリ掛けをします。(写真を撮り忘れました。)

塗装の方針

塗装は、サーフェーサを拭いてから行いましたが、塗料はプラモデル用のスプレー塗料を使いました。
塗装の基本方針は、金属部分はプラスチック感を消すために1度メッキスプレーを塗ってからガンメタで、実銃でライフルのプラスチックの部品はツヤありの黒を塗装して、他の製作例で見かけた「さび色」は使わない方向で行きます。

使用したメッキ調スプレー

レシーバの組立

3Dプリンタのデータに同梱されている組立マニュアルどおりに組み立てます。

まずは、レシーバと引き金、ハンドルの部品を組み合わせます。
2mm×13mmのピンには2mmのアルミ線を切って使用し、4mm×10mmのスプリング2個は使用済みのボールペンから回収しました。

シリンダの組立

シリンダとシリンダのアームを組み立てます。シリンダのアームは、内部の軸がシリンダを固定するために前後します。そのために内部に入れる4mm×20mmのスプリングもボールペンから回収しました。

シリンダ
シリンダのアーム

トリガ周りの組立

トリガーガードと実銃の外側に増設して作られたアウターハンドルを準備します。
アウターハンドルは黒の艶消しで塗装しました。
使用するボルトは、M3×12mmとM3×20mmの艶消し黒の「六角穴付きボルト」を使用しました。

ハンドル部へ追加部品

今回の組立マニュアルにはありませんが、本物の「ブルドック」拳銃のグリップ内部には、バネとそれを固定する軸が入っています。
今回のグリップは透明ではないので見えませんが、見えるようになった時の為に、その軸を再現します。M3のボルト、ナット、挿入ナットなどを組み込みました。

実銃のグリップ部

これらを、レシーバに組付けます。

銃身の組立

銃身を組み立てます。銃身には鉛の板を丸めて詰め込みます。
これは、重心の調整と実銃の重さに近づけるためです。

銃身の後ろから鉛を入れます。
「拳銃」部分が出来ました。

拳銃弾の組立

合わせて弾を作ります。
拳銃弾は、「357マグナム」(マグナムといえば次元大介ですね。)を探して見つけた「.357 Hollow Point Dummy Round」を弾頭部分で分割して作りました。
これも、重さを出すために中に鉛を入れています。
色は、薬きょうを真鍮色に、弾頭は銅色に塗装しました。

フレームの組立

次にシュタイヤー社のライフル・フレームを作成します。
この部品は先頭側を下にして縦にプリントするのですが(横でプリントすると刻印が潰れる。)、8割程度で何度も失敗したので、途中でつないで作りました。
また、3Dプリンタでは刻印がきれいに出なかったので、プラモデルで使われるスジボリを入れました。

このフレームにはM4×4mmの「止めねじ」を使うのですが、頭がマイナスの物を探しました。

頭がマイナスの止めネジ

また、表面に見える部分の六角穴付きボルトは黒の「六角穴付きボタンボルト」を使います。
フレームが出来たら、本体に組付けます。

ボルトの組立

次にボルトを組み立てます。
内部に見える部分は、「メッキ調スプレー」の色のままとしました。
ボルトは、後方から回しながら挿入します。基本的にはそのまま入るはずですが、場合によっては削って調整後に再塗装が必要です。しっかり入れば頭の部分はフレーム先頭の穴から出てきます。

シリンダーカバーの組立

右シリンダーカバー

右側のシリンダーカバーを作成します。
ノブが2つ付きます。このノブは映画で使う銃を作るときに、旧式の「ウエーバー・ライフル」のスコープに付いていた調整用の部品を利用したそうです。

「ウエーバー・ライフル」のスコープ

左シリンダーカバー

次に左側のシリンダーカバーを作ります。
カバーには「照準器?」が付きます。
これは、映画撮影用の銃を作るときに金属製(日本製)の精密ドライバにLEDを入れて作成したそうです。今回は前後に3mm緑色のLEDを内蔵します。
また、前方に用途不明の白い配線が付きます。(撮影時に外部バッテリをつないだ説が有力です。)
LEDは内部から電源を取るので、配線を入れておきます。

小部品の製作

続いて、レシーバとフレームに取り付ける部品を作ります。
レシーバに取り付ける「シリンダ固定部品」を止めるネジは、頭がマイナスです。このサイズの頭がマイナスのネジが見つからなかったので、プラ製のプラスネジの頭をパテ埋めしマイナスに削って塗装しました。

シリンダ固定部品と作成したマイナスネジ
フレーム右側の部品

グリップの製作

グリップを作ります。
色々と試験を重ねましたが、うまくできなかったので不満が残ったところです。
写真では分かりませんが、透明の3Dプリンタ用フィラメントを使用して何度も試作を行いました。
「実銃」は、きれいな透明の琥珀色です。
これを実現するために、3Dプリンタ フィラメントの充填率を変えたり、プリンタ速度を変えたりしましたが満足な透明になりませんでした。(せめて、グリップの内部の構造が透けて見えると本物っぽいのですが。)

また、きれいな透明の琥珀色のフィラメントがなかったので、後から色を付けるのにも苦労しました。プリンタ・インクを塗ったり漬けたりしましたがフィラメントの材料のPLA素材は染まりません。
仕方がないので、クリア・オレンジのスプレーを薄く塗りました。

「実銃」のようなきれいなグリップを作るには、3Dプリンタでプリントしたグリップで型を作り、透明レジンなどの材料に色を付けて、流し込んで固める工程が必要ですが、そこまで出来ていません。

クリップフォルダーの組立

銃身の下に装着するクリップ・フォルダを作ります。
この部品は、22口径ライフルの部品を加工してそのまま使っています。(裏を見ると、そのままの刻印があります。)
側面にマイナスの止めネジを入れて、下内部にはクリップを固定するための磁石を埋め込みます。

クリップ・フォルダ
内部に磁石を埋め込み

クリップフォルダーへLEDの配線

クリップには赤いLEDを下に1個、左右に2個づつ入れます。
左側シリンダーカバーの「照準器」から延ばした配線のコネクタと3Vボタン電池のケース、スイッチなどを組み込み、上部には固定用の磁石を付けます。(クリップ・フォルダ側の磁石と方向を合わせます。)
クリップの右側面にはスイッチと「ON OFF」の表示があるので、手が震えながら白い塗料で塗りました。
クリップ・フォルダ、クリップ、チューブを銃身にM5×25mmの艶消し黒の「六角穴付きボルト」で固定します。

クリップの裏側
スイッチの左右に「ON OFF」を書き込み

グリップエンド等の組立

最後にグリップエンドの部品を作ります。
これは、実物はアルミの塊を削って作られた部品で、前方に何か黒いペンキ跡が見られるので、それっぽく作りました。裏は艶消し黒で塗装しました。

グリップ内部に重心調整と重さ追加の為に、鉛の板を切って入れます。

「ブラスター」の完成

全ての部品を組み上げると完成です。
重量は約500gでした。レプリカは800gぐらいなので少し軽いですが、持った感じは「ずしり」としていて良い感じです。

電源ON!
見づらいですが緑LEDも点いています。

その他の写真です。

ハンマの追加

ここまで出来た後に、「ハンマ」がない事に気づきました。
ハンマは「Blade Runner bulldog pistol hammer」として公開されていました。
これをプリントし塗装して、完成したと思った「ブラスター」を分解して、ハンマを取り付けてから再度組み立てます。(拳銃のレシーバまでバラして、ハンマ固定用の穴を開けて、ピンを入れました。)
組み上がると、ハンマはほとんど見えませんね。

まとめ

長年の夢であった「ブレードランナー・ブラスター」が出来上がりました。
十分な作り(設計がです。製作は未熟です。)で重量、電装も内蔵してLEDが点灯する「銃」は良いものが出来たと思います。
しかし、グリップの出来がもう少しなので、満足度は80点です。

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