スタートレックのコミュニケータを作る(資料編)

スタートレックとは

スタートレックというSFドラマがあります。
私が大好きな物語の一つです。

アメリカのテレビ局で1966年から1969年まで制作され、日本では日本テレビとフジテレビで放送され、何回も再放送がされています。(私も再放送で見ました。)
その後の作品と区別するためにアメリカでは「Star Trek: The Original Series (TOS)」と呼ばれているようです。

メインテーマソング「たーたーたたたたた」という曲は、アメリカ横断ウルトラクイズでも流れていたので、ご存じの方も多いかもしれません。
その主題歌とともに流れていたのが「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。 そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船、 U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。」というナレーションですね。

エンタープライズ号 (Smithsonian’s National Air and Space Museum)

邦題の「宇宙大作戦」は、ミッション・インポッシブルの邦題「スパイ大作戦」に着想を得た感がありますが詳細は不明です。

登場人物

主要な登場人物は、エンタープライズ号のカーク船長(海軍大佐)、副長でヴァルカン人のスポック(海軍少佐)、医療主任のマッコイ(海軍少佐)、機関主任のスコット(海軍少佐)、女性通信士官のウフーラ(海軍大尉)、アジア系の操舵士のスールー(海軍大尉)、操縦士のチェコフ(海軍少尉)

主人公のジェームズ・T・カークの階級はCaptainです。陸軍、空軍ではCaptainは大尉ですが、惑星連邦宇宙艦隊は海軍の流れを汲むので大佐ですね。
ミドルネームの「T」は原作小説で「トムキャット」と読んだ覚えがあったのですが、女好きという悪口だったようで、実際には「Tiberius/タベリアス」でした。

普通の軍隊組織なら有り得ませんが、西部劇的なロードムービーのような作りの物語のために、毎回、未知の惑星の調査に向かって危険な目に合うのは船長のカーク、副長のスポック、医療主任のマッコイで、この三人の掛け合いが面白かったです。

そういえば、物語はカーク目線なのでブリッジに入ると毎回「ぴゆーゆ」と号笛(サイドパイプ)が鳴っていました。本来の海軍艦ならば艦長が入る際に専門の担当下士官が笛をならすはずですが、そこは未来の宇宙戦艦ですからIDを識別して自動でサイドパイプ音を鳴らしていたのでしょう。

なぜか家にあった号笛(サイドパイプ)

コミュニケータとは

スタートレック(TOS)に出てくるコミュニケータとは、通信機です。
金色系の蓋(実際にはアンテナ)が付いた、レザー調の黒い本体の手のひらサイズの無線機です。
蓋をあけると「きゅーきゅきゅ」と独特な音がなり、内部のスイッチ操作で通信が可能です。
本体中央には、用途不明の渦巻き模様?がクルクルしています。

アンテナ開(OPEN)状態とアンテナ閉(CLOSE)状態

劇中に出てくる宇宙船のエンタープライズ号は、ワープ航法で光より早く宇宙空間を飛行することができます(仕様です)が、その華奢な構造から大気圏内には突入できないのです。
(都合よく)毎週、未知の惑星に飛来して調査を行うのですが、その際にはクルー(主として船長以下数人)が上陸します。
惑星に上陸するには、大気圏を往復する小型艇を使うのではなく、「転送装置」を使って一瞬で移動ができます。(特撮代を節約するのではなく、未来の技術の成果です。)
上陸したクルー(主にカーク船長)は、エンタープライズ号と連絡を取るために、このコミュニケータを使います。小型軽量の通信機ですが、中継機などは用いずに母船と連絡ができます。
また、惑星調査が終わって母船に帰るときはコミュニケータで「転送」と指示することで、クルーだけが艦内の転送機に転送されます。
このコミュニケータは、他の劇中に出てくる小道具とともに、「Wah Ming Chang」氏が制作されました。Chang氏は古典的名作、1960年の映画「タイム・マシン 80万年後の世界へ」に出てくる中世的なスタイルのタイムマシンを作ったことでも有名です。
(このタイムマシンの椅子は、中古の散髪屋で調達したようです。)

史上最も美しいと呼ばれるタイムマシン

情報収集

同じ様な趣味の方がいないかネットを調べると、すごい方(チーム?)がいらっしゃいました。
HeroCommさんのページを見れば、コミュニケータを作るために必要な全ての情報がまとめられています。(ここは本当にすごい情報量です。)
HeroCommさんの部品のページによれば、コミュニケータの各部品は以下のとおりです。

本体

コミュニケータの本体は、革張りに見えるように表面加工されたプラスチック製です。
その元となったのは、プラ製の筆箱です。(STERLING PLASTIC社製の「SLIDE-TOP pencil case」商品番号 #632
この筆箱のスライド式の蓋と内部の仕切りを除去して、全長23 cmほどの長さを10 cm程に切り詰めたものを型にして作られています。

本体の元となったプラ製の筆箱 (HeroCOmmさんのページより)

今回は、オリジナルの筆箱は手に入らないので3Dプリンタで作ります。
表面には、革張りに見えるように革状のカッティングシートを貼ります。

ミッド・プレート

ミッド・プレート(真ん中の金属の板)は、厚さ2 mm程のアルミ板から出来ています。
金属を加工するのは大変なので、アルミ板でうまく出来なければ3Dプリンタで部品を作ります。

アンテナ部

アンテナ部は、真鍮製の穴開き板を加工して出来ています。全く同じ穴径の真鍮の板を探すのは難しそうなので、似たような板をホームセンターで探します。
3Dプリンタで押し付けて加工するための治具を作ります。
フレーム部と中央の軸を加工したアンテナと半田で付けます。

中央リング

中央リングは、外径3.2 mmのアルミ製のリングです。
これは、たまたま部品箱にあった3.5 in ハードディスクの円盤(スプラッタ)を固定していた部品が同じ大きさなのでこれを使用します。(もちろん、当時はHDDなどなかったので、旋盤で加工して製作したのでしょう。)
中央リング内の内部にある「ぐるぐる」は「干渉縞」と呼ばれるもので、2種類の放射線状のパターンを少しずらしたものを回転させて出来ています。

HeroCommさんのページでは、その「干渉縞」のパターンの解析までされているので、それを利用させてもらいます。
ただし、本物のコミュニケータの回転機構は、アナログ式のストップウォッチを組み込んで実現していますが、入手は困難なので何かしらの方法を考えなくてはなりません。(通常の腕時計を組み込んでも秒針はカチコチと進むので同じようには出来ません。)

スイッチノブと表示灯部

スイッチノブは、AURORA社の T-Jetシリーズというスロットカー(コースを走らせて遊ぶミニカー)のホイール部品(Wheel Hub 8316)を使用しています。
これも、1960年代のミニカーの部品は入手難なので3Dプリンタで作ります。

表示灯部は、同じホイール部品をひっくり返して上部に人造宝石(ガラス製?)が付いています。
色はコミュニケータの製造時期により異なりますが、左が薄青、中央が赤、右側が青で作ります。

マイク・グリル

2001年宇宙の旅のHAL9000と同様に(形状は異なりますが)、コミュニケータのマイク部分も当時のラジオのスピーカ・グリルの金属製部品から出来ています。
当時のラジオは入手困難なので、これも3Dプリンタで作ります。

音響部品

アンテナを開けた時の「きゅーきゅきゅ」という特徴的な音響ギミックも内蔵したいところですが、HAL9000で使用した部品では大きすぎるので、他の方法を考えなければなりません。

必要部品

1 アンテナ用真鍮板(穴あき)
2 アンテナ用真鍮棒
3 アンテナ用ホイール
4 ミッド・プレートとコントロール・パネル用アルミ板

3Dプリンタで制作するもの
1 本体ケース上・下
2 ミッド・プレート
3 アンテナ加工用治具
4 スイッチノブ
5 マイク・グリル

革状のカッティングシートを貼る方法

カッティングシートを平らな面に貼るのは簡単ですが、コミュニケータの本体のように込み入った形状にきれいに貼るのは難しそうです。
方法として考えられるのは・・・
1 カッティングシートを温めて、少しずつ伸ばして貼る
2 温めたカッティングシートをバキュームフォームで吸引して貼る

バキュームフォームがあると、他の用途にも使えて面白そうですね。

使うかどうかわからないけれど、次回はコミュニケータの材料を集めつつ、バキュームフォームを作成します。

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