年末年始を使って「いつかはやろう!」と思って先送りにしていた OLED オシロスコープ基板のケースを作りました。
色々と紆余曲折はありましたが、何とか使えるペン型の携帯型オシロスコープが出来ました。

今までの OLED オシロスコープ製作記事のまとめは、以下のリンク先をご覧ください。
OLED オシロスコープ基板
ここで紹介している「OLED オシロスコープ」とは、ラジオペンチさんが製作した V300 と、siliconvalley4066 さんが改造した V402、新規開発の 2CH オシロスコープの3種類です。
(この中で、2CH オシロスコープだけはスイッチ操作が違うので、今回のケースには入りません。)
実際の完成した基板の姿です。
基板単体でも全ての動作が出来るように、入出力端子、変圧基板と操作スイッチが全て実装できるようになっています。
スイッチの配置は上の左から、AC/DC 切替、Down/Select/UP切替、ホールド、電源スイッチです。

ケースの製作
今回も 3D データは、個人使用なら全ての機能が無料で使える、Autodesk Fusion (旧名称 Fusion 360 )で設計しました。
(完成品の画像です。ここまでに多数の失敗作が・・・)

なお、Fusion には KiCad などで作った基板の 3D データを読み込む機能があります。
この機能を使えば、ピッタリなケースが簡単に出来るぞ!と思いました。
そう、最初は簡単に考えていたのですが・・・

実際に基板を入れてみると、微妙なところのサイズが合わなくて沢山の失敗作が出来上がりました。
今回はすべての残骸を並べてみました。(「俺の屍を越えてゆけ」といった感じですね。)
ボディ部分は13個の試作品が並びました。

最初の作品
すでに前回までのブログの記事にも書いてあるとおり、組み立てた後の動作確認では、使用している昇圧基板は乾電池(充電池も可)が1本でも正常動作することが分かっているので、小型化するために基板上に乾電池用の端子を追加(マイナス側の端子)します。
追加で使用した電池ケースの部品は、aitendo さんの「2025お楽しみ福BOX」に入っていた電池ホルダを使いました。
基板の空き地に穴を2つ開けて、裏側のベタ・グランド部分のレジストを剥がして半田付けしました。

この基板が入るように、最初のケースを作ります。
基板が入ることを優先して、スイッチの位置もケースのサイズも余裕をもって作りました。
また、手になじむペン型の形状は後から作るとして、単純な形状にしました。

見てのとおり基板の下に隙間がありますが、これは OLED を入れることを考慮しています。
(基板には、まだ電池の端子が付いていません。)
横から見ると、余裕をもって作ったので高さがありすぎました。
次は小型化を目指します。
ケースの小型化
KiCad から持ってきた基板の 3D データを見ながら、ケースを小型化するために多少の余裕を残して小さくしました。
さらに、OLED より前面は部品配置が少ないので、高さを削ってみます。
失敗しました。
考えてみればすぐに分かりますが、基板にはスイッチなどが付いている立体なのでギリギリに近いサイズを攻めると、傾けても何をしても組み立てた基板がケースに入りません。

初めてのロフト形状
ケースに入れる物が立体であることを考えつつ、小さいケースを目指します。
その為には、今までの四角いケースではなく、Fusion の「ロフト」という機能を初めて使います。
これは、2つの違った形の図面を用意して、下の形状から上の形状に変化する形を作れます。
今回のように上側に OLED が出っ張るような時にちょうど良い機能です。
(図は Fusion の HP から引用した、丸から四角へ変化するロフトの例)

早速、このロフト機能を使って、直角で変化の無かったケースの形状を変えてみました。
これで、不必要に出っ張っていた OLED 下部分の空間がなくなったので、とても持ちやすくなりました。
下の写真は、滑り止めや固定用のネジ穴なども追加したバージョンです。
(この角度で見ると、何だか空母のプラモデルみたいですね。)

フタ部分
何となく、ケースの本体部分は先が見えてきた気がするので(実はこの後も、結構な数の試行錯誤が続きますが・・・)フタ部分を作ります。
残念ながら、この基板はケースに組み込むことを良く考えていなかったので、フタを固定するためのネジ穴がありません。
しかたがないので、フタ部分は2つに分離して作ってみます。
Fusion の平面図からコピーして、2つに分かれた形状の試作品を作ります。
とりあえず、簡単な平板の形状です。
先端部分のフタは、固定するネジの空き地がないのではめ込み式にします。
OLED 部分以降のフタ部分は右上後方にネジ穴が作れました。

簡易試作バージョンのフタをケースの本体部分へ取り付けてみます。
ところが、困ったことにケース部分から電池が出っ張ります。
ケースの本体部分の高さを足す試作もしてみましたが、数 mm の違いで持った感じが良くありません。しかたがないのでフタの電池があたる一部を盛り上げて収めることにします。
この後も、スイッチ位置の微調整・フタの固定方法の改善などの改造をして、何とか使用できる程度の物が出来上がりました。
途中までの出力は 3D プリンタの設定で試作用の積層厚 0.3 mm で作りましたが、最終的に完成品は 0.2 mm でプリントしました。
確かに積層厚を細かくすると仕上がりはキレイなのですが、出来上がり時間が倍ぐらい違います。(1時間と2時間越え)
完成したケース
途中、色々と試行錯誤をしたことで Fusion で立体を設計するスキルが多少は上がった気がします。
(スキルが高ければ、ここまで試作で沢山の失敗はしないでしょうが・・・)
今回のケースには、これも初めての「文字入れ」をしてみました。
(完成版を作るぞ!と積層厚を 0.2 mm にして出力してみたら、操作部分の文字位置が間違っていたのは内緒です。)

上の写真では通常の単3電池が1本入っていますが、充電式のエネループに変えても正常動作しました。
入力端子は、壊れて破棄予定だったテスターの先を利用しました。
根元のネジ部分は M5 サイズだったので複数のナットを準備しましたが、プリント基板に取り付けた「板ラグ端子」の加工した穴径がピッタリ・サイズでナットがなくてもしっかり固定できました。

ケースの後方です。
siliconvalley4066 さんの V402 にはテスト信号端子があるので、後ろに端子を付けました。

ケースの下側です。
グランド端子は差し込み式です。
斜めの部分にも滑り止めを付ける事が出来ました。

操作スイッチ側です。
それぞれのスイッチの横には、凹みで文字を作り、用途が分かるようにしてみました。
また、指がかかる位置に滑り止めも追加しました。
こちら側から見ると、ネジは向かって左側しか止まっていないので、残念ながら向かって右側はフタが少し浮いた感じに見えます。
これは将来的には改善したいですね。

現在の不具合
Select スイッチと Hold スイッチの同時押しで機能するゼロセットも、UP か Down を押して電源を入れると動作する電圧測定機能も正常に動作しました。
しかし、Select を押したまま電源を入れると表示される、バッテリの電圧表示が変です。
ご覧のように「0.01 V」と表示されます。
多分、電源を電池1本で動作することを想定していないためだと思います。

評価など
去年の3月に簡単な気持ちで始めた「OLED オシロスコープを組み立てる」企画では、学ぶことが多かったです。
・初めて自分でプリント基板を KiCad で設計
・プリント基板製造業者の方と知り合い
・表面実装部品のプリント基板を発注
・自宅でステンシルを作りリフロー
・3D CAD でケースを設計
・四角ではない複雑な形状のケースを 3D プリンタで出力
と、振り返ると色々なことを体験できました。
(基板の切断以外は、ほとんどが自宅の作業部屋で行いました。)
その中でも、ずっとネットの向こう側の方だと思っていた「ラジオペンチ」さんや「siliconvalley4066」から連絡を頂き、色々な事を学ぶことが出来たのは大きな収穫でした。
私の電子工作レベルは、まだまだ「他人が作ったものを模倣して楽しむ」程度のDランクですが、「新しいものを発想して、設計し完成させられる」Cランクを目指してこれからも頑張ります。
これで「OLED オシロスコープを組み立てる」企画は一応の最終回ですが、自己評価はこれからの向上を目指して90点です。
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