前回、デジタル・オシロスコープ SDS804X HD が簡易スペアナ的な使い方が出来ることを確認しました。
今回は、このオシロスコープに付属してきたプローブ「PB470」の周波数特性を確認してみます。
なお、オシロスコープが故障したので、色々なオシロスコープから悩みながら Siglent 社の「SDS804X HD」を選んだ細かな過程は下の記事をご覧ください。
付属 プローブ
SDS804X HD に付属しているプローブは PB470 です。
このプローブのマニュアルに記載されている動作周波数は、70 MHz までのようです。

プローブのマニュアルです。
左上に 70 MHz の記載があります。

マニュアルから、プローブの性能を引用しました。
項目 | 値 |
帯域幅 | 70MHz |
立ち上がり時間 | 5ns |
入力抵抗 | 1MΩ / 10MΩ ± 2% |
入力容量 | 10 X : 14pF ~ 18pF |
最大入力電圧 | 1 X : 150V RMS CAT II 、10 X : 300V RMS CAT II |
補正範囲 | 15pF ~ 45pF |
SDS804X HD オシロスコープ本体の帯域幅は 70 MHz です。
しかし、前回の検証で BNC ケーブルで信号源と直結すると、FFT 機能では 300 MHz 位までは問題なく計測できました。
このオシロスコープの基本性能はすごく良さそうです。
(SDS804X HD オシロスコープで FFT 機能を試用した記事は、こちらをご覧ください。)
でも、プローブのマニュアルに記載された帯域幅は 70 MHz です。
本当に、プローブの計測上限がこの値どおりで、プローブが計測性能の足を引っ張るなら、プローブの買い替えを考えなければならないかな?
プローブ性能の検証
偉そうに「検証」などと言っていますが、自宅には専門的な計測器などは持っていません。
実際に試してみた内容は、自作した信号発生器を使って手動で周波数を動かして測っています。
その誤差などについてはとても大きいはずなので、以下の検証結果は参考程度でご覧ください。
検証方法
スペクトラム・アナライザと自動掃引機能の付いた信号発生器があれば簡単なのですが、そんなものは持っていないので、オシロスコープの FFT 機能と自作の信号発生器を使います。
使用したオシロスコープ
オシロスコープは、Siglent の SDS804X HD を使用しました。
同社では安価なシリーズですが、最新式の解像度 12 ビットです。

使用した信号発生器
信号発生器は、nobcha さんが設計された器材を使いました。
信号発生器(R909-VFO):10 kHz ~ 225 MHz

検証開始
オシロスコープと信号発生器(R909-VFO)をつなぎます。
まず、比較のために BNC ケーブルで接続します。
(BNC ケーブルをオシロスコープに接続する時に必要な、50Ωの終端方法は次回解説します。)
使用したオシロスコープの計測上限周波数は 70 MHz です。
オシロスコープの周波数帯域の上限とは、入力した信号振幅が 30% 減となる周波数です。
つまり、このオシロスコープなら 70 MHz で3割減の表示となるはずです。
グラフにすると、こんな結果になるはずです。

それでは、実際にオシロスコープの FFT 機能で信号発生器の出力を見てみます。
最初は最低周波数の 10 kHz にセットします。
そして、信号発生器の周波数調整ノブを回して周波数を上げてゆくと、オシロスコープの -40 dBm 辺りに張り付いていたラインが、0 dBm 位のところに移動して行きます。
(動画じゃないので言葉だと分かりづらいですね。観測波形を GIF アニメに出来たら、差し替えます。)
下の画像は、この信号発生器が出せる最大周波数の 225 MHz までノブを回した後の波形です。
予想に反して計測結果を見た限りでは 200 MHz を超えても大きな減衰は見れれませんでした。
BNC 接続だと、このぐらいの周波数までなら、ほぼフラットに見えます。

次に、オシロスコープに付属してきたプローブを信号発生器(R909-VFO)につなぎます。
なるべく外部ノイズなどの影響を減らすために、直径 5 mm の「BNC 変換コネクタ」を購入しました。(AliExpress で500円位でした。(送料別))

これを、プローブのフック部分とグランド線を外した先に装着します。

プローブで接続した時の波形です。
上の画面と変化がないように見えるほど減衰が見られません。

評価と次回の予定
今回は、SDS804X HD デジタル・オシロスコープに付属して来たプローブ PB470 の周波数特性を確認してみました。
正確な計測器で調べたわけではないので、信頼性は低いと思いますが「このぐらいまでは使えるかな?」という目安にはなったと思います。
全く事前試験をしていない器材では、結果も信用できないですよね。
しかし、今回のやり方は手動で周波数を掃引するという原始的な方法を使いました。
他のプローブや部品の特性を試験するには、この方法で良いのかな?という疑問を感じます。
そこで、新機材を導入予定です。
Siglent 社のオシロスコープ用の絶縁信号発生器オプション(SAG1021I)を注文しました。
オシロスコープの前に見える黒い箱が信号発生器の本体で、性能的には下の表のとおりです。
(データと写真は販売店より引用)

チャンネル数 | 1 |
最大出力周波数 | 25 MHz |
サンプリングレート | 125 MSa/s |
周波数分解能 | 1 μHz |
周波数確度 | ±50 ppm |
振幅レンジ | 50 Ω: -1.5 ~ +1.5 V / High-Z: -3 ~ +3 V |
波形タイプ | 正弦波、矩形波、ランプ波、パルス、ノイズ、DC、内蔵波形(45種類) |
これなら、自動で色々なプローブや部品の特性の試験が、(25 MHz までですが)簡単に出来そうです。
また、ラジオペンチさんのブログを参考に組み立てた「高速パルス発生回路」があるので、配線やプローブの立ち上がりの特性が見られるはずです。
保有しているデジタル・オシロスコープの SDS804X HD の計測できる最小パルス幅は 2 nS ですが、手持ちの各種プローブの特性の比較には使えそうです。
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