ドライバの歴史・種類とその使い方

「道具箱」第2回目は、基本的な道具としてドライバを紹介します。

道具には色々な種類がありますね。
日本には木工用に優秀な工具があります。鉋、鑿、鋸、錐、鑢、槌など、使ったことがあっても書けない(読めない)漢字も多くあります。これは、千年以上の木工中心の歴史からくるものですね。
エジプトやギリシャ、南米には、すでに当時の技術は失われたかもしれませんが、石を加工する優秀な道具があるはずです。

道具について

私が趣味の工作に使用しているような道具のルーツは諸説あると思いますが、ドイツではないでしょうか?
昔、博物館で世界大戦のときのロケット、特にV2ロケットを見た時は圧倒されました。ロケットの配管や噴射口の作りは、とても1930年代の作りではなく、JAXAの新型か?と思うほどでした。(脳内補正が入った、当時の思い出です。)
他の見学者は、横にあったアメリカ製のアポロ計画などのロケットに見入ってしまい、「小さいロケット」などと言っていましたが、私は、アポロよりずっと以前に出来たV2エンジンの細部を見た時に、使っている細かな部品やボルト類を見て当時のドイツのすごさを実感しました。
皆様ご存じのとおり、ロケットの父と呼ばれるフォン・ブラウン氏が大学生時代に作った(ロケットを元に後日開発された)のが、世界初のV2ロケット(弾道ミサイル)です。その後、アメリカ軍が根こそぎ持ちだしたV2ロケットの部品と亡命したブラウン氏の力で、兵器としてのアメリカのミサイルとアポロのロケットが出来ました。
これらの工業製品を大量生産するためには、道具が必要です。世界初のジェット機やロケットなどを実現するために、19世紀のドイツでは現在と同様の道具を世界に先駆けて作っていたはずです。

V2ロケット(米空軍博物館HPより)
V2ロケットのエンジン(米空軍博物館HPより)

話が大きく脇道にそれました。
今回の情報源としては、技術立国ドイツのブログなども参照したかったのですが、ドイツ語は全く分からないので、基本は日本語と英語の情報源から拾ったものになります。

「プラス・ドライバ」の歴史

「プラス・ネジ」の最初

「プラス・ネジ」の確認できた最初は、イギリスBirmingham州の発明家John Frearson氏の物です。Frearson氏は女性用スカートのフックを発明し1851年の第1回万国博覧会で展示した方として一部で有名です。(私は知りませんでした。)
「発明したネジ」の1884年の書類には以前の発明の改良と記載されています。以前の特許が見つからなかったのですが、溝の角度と中央を丸く削ることでドライバが入りやすくなり、材料も大幅に節約できると書かれています。(本当か?)
今回の発明は、当時使用していた色々なサイズのドライバでも簡単に溝に入って横にズレない事を目的に開発されたもののようです。アメリカに提出された1884年の特許出願の書類は「プラス・ネジ」の事について記載されていますが、「プラス・ドライバ」についての記載や図面は見つかりませんでした。

「プラス・ネジ」の商標登録 1884年

(John Frearson氏の記録と米国特許出願記録より)

「プラス・ドライバ」の歴史

ドライバとネジのセットで最初の物は、アメリカの家具職人・自動車整備工のJohn P. Thompson氏が1932年に特許申請した「十字形の溝」を備えた「ねじ」(米国特許 1908080) とそれに対応する「スクリュー ドライバ」(米国特許 1908081) です。

「プラス・ドライバ」の商標登録 1933年

Thompson氏が出した特許申請は、1933 年に正式に特許として付与されましたが、残念ながら、その権利は、オレゴン州の会社の常務取締役であるHenry F. Phillips氏に譲渡されていました。(その1年間に何があったかは不明です。発明したThompson氏が亡くなったのは1940年9月です。)
その後、この特許をもとに多数の会社にライセンスや新たな特許申請をしたPhillips氏は、航空業界、自動車業界にプラス・ネジを「うまく」売り込みました。
それまでアメリカで用いられていたマイナス・ネジは大量生産に不向きで、航空機や自動車を大量生産するためにはプラス・ネジが必須だったのです。
1940年には、Phillips氏が設立した「The Phillips Screw Company」は、ほぼ特許料だけで$1,323,000(約4億8千万円!:1$を¥360で計算)を売り上げています。
ところが、世界大戦中にアメリカ政府の何らかの怒り(敵国で儲けていた?)を買った「The Phillips Screw Company」は、1947年に国からの訴訟を受けて特許利用が困難となります。
それでも、一度広まった名称は残り、アメリカでは日本でいう「プラス・ドライバ」の事を「Phillips screwdriver」と呼びます。
(”Phillips screw and driver“, Michael J. Allen)

ちなみに、「マイナス・ドライバ」は「Flat Head Screwdriver」(又はslotted screwdriver)という見た目どおりの長い名前です。

ドライバの種類

これ以降の説明には、日本での名称を使います。
基本的にはJIS(日本産業規格)で細かなことが決まっています。
例えば、「JIS B1101」には「すりわり付き小ねじ」(Slotted head screwsの直訳ですね。)としてマイナス・ネジの規格が、「JIS B1111」には「十字穴付き小ねじ」としてプラス・ネジの規格が定まっています。
「すりわり付き小ねじ」や「十字穴付き小ねじ」では、お役所言葉で通じないので、通称で行きます。

プラス・ドライバ

No.0(ゼロ)、No.1、No.2、No.3、No.4の5種類があります。番号が大きくなるほどにサイズが大きくなります。基本的には、下の表のイメージですから、通常の工作にはNo.1とNo.2があれば大丈夫です。(細かな工作にはNo.0)
プラス・ネジには大まかな種類として、H型とZ型の2種類があります。それに合わせてPH形とPZ型のドライバがあります。この、Hが付く方がアメリカ式のPhillips型で、PZ型はヨーロッパ式のPozidriv型です。
ヨーロッパの有名な家具屋さんIKEAの商品はPZ型を使用しているそうです。このネジは、専用のドライバを用いればズレずにしっかりと閉められるのですが、日本やアメリカで通常に販売しているプラス・ドライバではズレてナメテしましますから注意が必要です。(北海道にはニトリしかないので関係ないです。すねてないです。)
PZ型は上から見ると「米」型に見えますがヨーロッパ式で英国EIS社の登録商標です。
ちなみに、プラス・ネジの頭に「・」が付いているものは「ISOマーク」で旧JISの識別用です。

No.サイズ
02mm
13mm
25mm
38mm
410mm
プラス・ネジの種類(JIS規格より。穴部分に色を追加)
PH型、PZ型、マイナスのビット・セット

マイナス・ドライバ

ネジの横幅で規格が決まっています。1.8mmから大体1mmごとに10mmまで12種類があるようです。M3のマイナス・ネジには「5」前後を使用します。

マイナス・ネジのJIS規格

ヘックス

いわゆる六角穴付きネジ用です。H1.5からH12まで10種類があります。M3の六角穴付きボルトには「H2.5」位が合いそうです。

六角穴付きボルトのJIS規格

トルクス

ヘックスの六角穴のように直角ではなく、波型の穴が開いたボルト用です。(JIS規格名は「ヘクサロビュラ穴付き小ねじ」という早口言葉のような名前です。)
頭に「T」が付きます。T1からT50まで18種類が確認できます。M3サイズなら「T10」ですね。

トルクス・ネジののJIS規格

ソケット

六角ボルト用です。このボルトになると、通常はレンチを使いますが、小さなもの用にはドライバもあります。H4からH24位までありますが、旧JISサイズがあるので面倒です。

六角ボルトのJIS規格

(VESSEL社 「ドライバー/ビット/ソケットと、ネジ/ボルト/ナットのサイズ関係」

ドライバの形状による種類

オフセット・ドライバ
狭い場所用のドライバで、角度が付いて片側にマイナスが反対側にプラスが付いています。

VESSEL社のHPより

スタビ・ドライバ
柄が短いドライバです。
さらに絵が短いタイプもあります。

VESSEL社のHPより
VESSEL社のHPより

ドライバの使い方

ドライバの回し方は「押し7 回し3」と言われ、回す力は3割などと説明されます。
ネジ(ボルト)は、頭の溝がナメてしまうと2度と使用できません。十分注意して回す必要があることから、そのように言われています。
しかし、実際には回らないネジを外すときには、全力で押すぐらいの心構えが必要です。逆に、回し始めは押す力が要らないので、回し9.5位で十分です。(この辺は、ある程度の経験が必要ですね。)
安全のために、力を込めるときにはドライバの軸の先に片手を添えると安定します。
基本的な事ですが、閉めるときには右回し、外すときには左回しですが、一部には逆ねじも存在します。
ドライバは、特殊な貫通型以外は叩いてはいけません。特にラチェット式や電動式ドライバの柄の部分をハンマ代わりに使用してはいけません。
サイズがあった物を使用しましょう。もちろん、ヘックスのネジを回すのにマイナス・ドライバを使ってはいけません。(自戒を込めて。)

お勧めドライバ

実際に私が愛用しているドライバは、新潟に本社のあるANEX社の「ラチェットドライバー 差替式 ボールグリップ クイックボール72 No.397-D」です。
細かな作業には向きませんが、電気工事、家具の組立、家電の分解などの日曜工作には十分な性能です。
近くのホームセンターでも売っていましたが、安売りしていたのでアマゾンで購入しました。
特徴は、
1 ラチェット式のドライバは色々ありますが、ギア枚数72枚で他社の倍近いので、細かな作業が出来ます。
2 ビットの差込口が深く、安定します。
3 付属するビットが、プラスとマイナスですが、マイナス側が電気工事の配線端子の穴にピッタリの特殊マイナス形状で使いやすい。(これ重要!)
4 柄の後方がボール型で力が入りやすく、力が要らないときは前方の細いほうで素早く回すことが出来ます。
5 柄の部分は絶縁体で出来ているので、感電にも安心です。(電気工事の際には、手袋を着用しましょう。)

ANEXのクイックボール72

これに、ヘックスとトルクスの差し替えビットを準備すれば、大概の工作には対応できます。(キッチンの水栓の修理や電気工事にもコレを使いました。)
もちろん、電子工作用には小型のドライバが別途必要ですが、叩かない日曜大工にはこれだけで大丈夫です。

購入したドライバ

精密ドライバ

精密ドライバは、下の写真の物をAmazonで購入しました。「精密ドライバーセット」です。98種類のビットが付いて2千円以下です。どんな特殊なネジでも外せます。(ビットの先の作りは「それなり」です。強い力で使うと1度で変形しそうです。)

小型電動ドライバ

また、勢いで電動も購入してしまいした。AliExpressの「精密電動ドライバーセット」です。
少し太めのボールペン位のサイズですが、強力なトルクがあります。

ANEXのドライバ用にはAliExpressで、ヘックスとトルクスの差し替えビットを購入しました。
BROPPE社のビット・セットです。安価ですが作りはしっかりしています。
しかし、ANEXのクイックボールはビットを納める穴が深いので、購入したビットでは少し短くて取り出すのが大変でした。

工具は、今では100均でも色々な種類の物が購入できます。しかし、ホームセンターや通販でレビューが付いているものを買った方が、結局は安く済みます。
私も材料としては100均で色々な物を購入しますが、道具はやめた方が良いと感じています。(個人の感想です。)
ANEXのドライバとビットのセットの評価は、90点です。
(ビットの軸が短かった!)ドライバ単体なら95点かな?

コメント