携帯型計測器の3回目は、全ての基礎となる電源を製作します。
電源は、ジャン測を揃えていた時は色々な種類の物を所有していましたが、重くて場所を取るので引っ越しの際に一部を除いて処分してしまいました。
また、今までに正電源のみの装置やオペアンプ用の正負電源装置、精密可変電源装置など何種類か作成してきましたし、簡単な3端子レギュレータによる電源部などは今でも回路の一部で使っています。
今回は昔のように回路図をひいて、基板をエッチングして1から作るほどの馬力もなくなりましたので、部品の組み合わせで行きます。
自宅携帯型計測器ケースの標準化と「EleLab」
そのままでは面白くないので、今後の計測器類の標準化を決めてから製作を進めます。
目標は、「Thingiverse」で何人かの方が公開されているElectric LAB(電子研究所?)の類です。
その中でも、Chrismettal – Binary_6さんが公開されている「EleLab」シリーズは良い感じです。
GitHubでも公開されています。(https://github.com/chrismettal/elelab_v2)
この、ケースを3Dプリンタで製作できるシリーズは、全てが共通のサイズ(横幅を除く。)で、各ケースの横に電源を取るコネクタが標準化されていて、どの組み合わせでも使用できるようになっています。
でも、3Dプリンタをよく使うようになると、この、板状のものを作るのには沢山の時間とすごい量の材料が必要になるため、毎回モヤっとします。
その為に、現在、板状のものを加工するためにレーザーカッタの製作を進めています。
実際に、上の写真の「EleLab」のケースを3Dプリンタでプリントするには、5つの部品を標準設定にして出力だけで40時間ほどかかり、約100mの材料が必要です。(Ultimaker Curaで簡易シミュレート)
通常3Dプリンタの材料は1kgで約300mと言われています。フィラメント1巻きで数千円なので、これのコストは千円程度、時間は2日ほど必要となります。
なんとか、ケースを3Dプリンタで作る労力を減らして、しかしオリジナルな計測器シリーズが出来ないか?
条件は、
1 安価であること。
2 簡単に壊れないこと。
3 入手性が容易なこと。
4 そして、サイズは、最低でも横幅が16×2のLCDが入る、横幅の内寸が85mm以上は欲しいです。
パラボ:Pa-Labシリーズと決定
色々と見比べて、考えて出した答えがこれです。
近くのイオンや西友内のSeriaでも入手可能、税込み110円で購入可能な「マグネットポケット 小物ケース」の大きいほう(耐荷重量500g)です。
内寸が約92mm×55mm×88mmなので、標準的な16文字2行のLCDが入ります。
内部は実測で、92mm×88mmです。
使用するであろう充電式電池で最長のリチウムイオン電池の18650が65mmですから、電池ケース込みで横で入ります。
秋月電子の両面スルーホール基板のBタイプが95mm×72mmなので、ギリギリ入りませんが、最近のArduinoやSTM32などのマイコンで簡単な回路を作るには十分な広さです。
そして、裏には強力なマグネットが2個ついているので、使わないときには縦でも横でも収納でき、使うときには机にガッチリくっついて動きません。
これを、我がラボの標準的なケースに採用し、ラボのガジェット、パラボ:Pa-Lab(Pao Laboratory)シリーズと命名しよう。(厨二病?)
それでは、電源の製作、やってみよう!
今回の電源の仕様
電源の要求仕様(このぐらいの性能欲しいな)
1 出力電圧は3Vから12V、可能ならばもう少し上まで
2 出力電流は2A程度、それ以上は大型の電源で対応予定
3 手狭な実験用机(ただの折りたたみ机です。)に置ける小型
4 マイコンなどの試験が出来て、誤動作しない程度の低ノイズ
5 設定などが容易なこと
(自分で出した勝手な)要求仕様を満足するような電源ユニットを、AliExpress、Amazonなどで調べてみました。
大きく分けて2種類あります。
入力電圧より少し低い電圧まで出力可能な「降圧型」
入力電圧を昇圧してゼロVから規定電圧まで出力可能な「バックブースト型」
「降圧型」の代表例です。
型番 | 入力電圧 | 出力電圧 | 出力電流 | 値段 |
XY5008 | 6-55V | 0-50V | 8.1A | 5千円程度 |
WZ5005 | 6-55V | 0-50V | 5A | 3千円程度 |
XY-SK80 | 6-36V | 0.6-36V | 5A | 2千円程度 |
ZK4KV | 5-30V | 0.5-30V | 3A | 千円程度 |
「バックブースト型」の代表例です。
型番 | 入力電圧 | 出力電圧 | 出力電流 | 値段 |
XYH3606 | 6-30V | 0-36V | 6.1A | 5千円程度 |
XYS3580 | 6-36V | 0.6-36V | 5A | 2千円程度 |
実際に使ってみないと、使い勝手やノイズ、本当に規定電圧・電流が取り出せるのかは分かりませんが、追加でWiFi制御やリモコンが付く「XYH-3606」を購入してみます。
製作開始
電源ユニットにDC電源を供給する電源には、スイッチング式の小型の電源を用意します。
これは、次の計画があるので、当初は入力電圧12Vで行きます。(「XYH-3606」の取説によれば、20V以上ないと6Aの出力は取れないようですが、今回の用途は2A以下なので気にしません。)
動作確認が出来ている、12V 2A以上を確保できる中古のスイッチング電源をマイナスドライバで、内部に傷をつけないように慎重に「カラ割り」します。取り出したスイッチング電源の入力側にはAC100Vのコネクタを半田付けして、しっかりと絶縁します。
この状態で一度、動作確認をしましたが大丈夫でした。
(このような電源を「カラ割り」して使用するのは、自己責任でお願いします。)
ケースの加工
「マグネットポケット」を加工します。
裏には通気口(3Dプリンタで網を作りました。)を、横に100Vコネクタ用の穴をあけました。
ケース内に電源を入れてみます。
丁度よい感じです。一応、100Vを供給して、12Vが出力されることを確認しました。
負荷がないので当然ですが、発熱はありません。
正面パネルの作成
3Dプリンタで表面パネルを作成します。
データの作製には「Autodesk Fusion 360」を使いました。
個人利用ならば、10個のファイルまで無料で作成できるので、よく利用しています。
今回の正面パネルは、3Dプリンタで1時間少々、材料も3mほどで出来ました。
出来は違いますが、「EleLab」シリーズの20分の一以下の時間で出来ました。
(試作を2回した分を除いたのは内緒です。)
部品を取り付けて、「XYH-3606」の到着を待ちます。
「XYH-3606」のサイズは、商品販売のページにあったもので作りました。
到着した電源ユニットが…
ここまでは順調に出来ました。
ところが...
到着した「XYH-3606」のセットです。リモコン、温度センサにオプションのWiFi基板も注文しました。
実験用電源をつないで動作確認します。
「あれ?入力端子に12Vを入れても、何も表示されないぞ!」
リモコンを押すと、なにやら「ぴ」と音はしますが、何もLCDに表示されません。
AliExpressに連絡します。
状況は分かってもらえたようなので(私の英語が通じて良かったです。)、フタを外してみると...
LCDが、基板から取れています。
よく見ると、向かって右上の端子は少し半田の跡がありますが、その他の端子には何の後もありません。
「だめじゃん」
そのことを連絡して、新しいものを送ってもらいました。
製作再開
配線を行い、ケースに組み込みます。
電源完成
途中、電源ユニットが故障した状態で届いたため、完成までに時間がかかりましたが、入手性の良い部品を組み合わせることで、簡単に電源が自作出来ました。
まだ、WiFii基板の接続確認は行っていません。出力のノイズや負荷の確認と共に今後行います。
使い勝手など
標準で付属するリモコンは、最初、不要では?と思っていましたが、1つしかないノブでの操作性が悪いために、実際には必需品でした。電源のON、OFFが出来たり、出力電圧・電流が簡単に設定できるので大変便利です。
今のところ軽負荷では、入力電圧が12Vでもちゃんと36Vまで出力されています。
マイコンなどの簡単な試験には十分の性能です。
また、新しく「Pa-Lab」でケースの標準化が出来たので、満足度は95点です。
(標準化と言っても、1つ目で計画倒れの可能性があるため。)
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