10MHz GPSDO を組み立てる その5(GPS受信モジュールの設定)

GPS衛星を利用した基準信号発生器の製作情報は、国内外に多数存在します。
その中には、時間測定用の設定である「位置固定設定」についての記載があります。

この設定は、高価なGPS用器材にだけ備わっている機能だと思っていましたが、普通に入手できる安価なGPSモジュールにも時間測定用の設定が存在することが分かりました。

U-bloxの「位置固定設定」

U-blox社のM8などのモジュールを設定するためには、同社のソフト「u-center」を使用します。
このソフトの「NAV5」欄の「Navigation Modes」にある「Dynamic Model」項目では、以下の設定が出来ます。

u-centerの設定画面

0 – Portable:通常の設定です。携帯端末で測位を行う際に使用します。
2 – Stationary:時間基準用のモードです。固定局(移動速度ゼロ)に使用できます。

そのほかに、Pedestrian(徒歩移動)、Automotive(自動車移動)、At sea(海上移動)、Airborne < 1g(重力加速度1G)、Airborne < 2g (重力加速度2G)、Airborne < 4g (重力加速度4G)、Wrist (腕時計)、Bike(オートバイ移動)などが選べます。

トランジスタ技術の「GPS電子工作特集号」のコラム(トランジスタ技術2016年2月号 P48)では、通常の設定と位置固定設定で1PPSのゆれ具合を測定していますが、誤差の標準偏差が標準では2.8nS、位置固定設定では1.6nSとなっています。(実際のグラフは、もっと差があるように見えます。)

ATGM336Hの「位置固定設定」

今回使用しているGPSモジュールは、「杭州中科微电子有限公司」の「ATGM336H」です。
このモジュールにも「位置固定設定」がないかを調査します。

ATGM336H

マニュアルの確認

マニュアルを探しましたが、中国語版のみしか見つかりませんでした。

「ATGM336H」のマニュアル

10ページ少々の中国語のマニュアルの中で参考になるのは

・ボーレート範囲: 4800 bps ~115200 bps
・デフォルト 9600bps
・8 データ ビット
・パリティなし
・1 ストップ ビット

という情報ぐらいでした。
色々と調べてみると、U-bloxのu-centerのように、販売元のHPに設定ソフトがあるようです。

それでは、「位置固定設定」を、やってみよう!

製造会社のHP

「杭州中科微电子有限公司」https://icofchina.com/のHPに行きます。(私は中国語が分からないので、右上の「English」を選びましたが、表示は中国語のままで何も変わりませんでした。)

製造元のHPです。右上の「English」を選んでも何も変わりません。

それっぽい項目を選びます。「下载中心」(項目をコピーしてGoogle翻訳したら「ダウンロードセンター」でした。)を押します。
「GnssToolKit3.zip」を選んでダウンロードします。(ウイルス検査は問題ありませんでした。)

「ダウンロード」のページ

ソフトウエア(GnssToolKit)で設定

ソフトウエアの設定

ダウンロードしたソフトは、インストールしなくても大丈夫です。お好きなフォルダに解凍してください。「ATGM336H」をパソコンにつないで接続先のComポートを確認してから「GnssToolKit3.exe」を実行します。(アンテナはなくても大丈夫です。)

ソフトを起動したら中国語が出来る人以外は、下図の所を押して「English」を選びます。
「設定を反映するにはソフトを再起動」の指示が出るので、「OK」を押してソフトを再起動します。
やっと理解できるようになりました。

「設定を反映するにはソフトを再起動」の指示

GPSモジュールの接続

「ATGM336H」をUSBモジュールを介して接続します。
まず、接続先のCOM番号にして、9600bpsに設定します。

何も起きないので、接続されていないのか何度もやり直しましたが、「View」の「NMEA」を選ぶと通信状況が確認できました。

実際の設定変更

「View」の「Configuration」を選びます。
その中から「PCAS11」を押します。

「Portable」から「Stationary」に変えて、下のバーにある「Send」と「Save」を押してモジュールに記憶させます。(下段を見るとコマンドラインから「$PCAS11.1*1C」と送っても設定が出来そうですが、セーブコマンドが見つけられなかったのでGUIでやるのが無難でしょう。)

確認のために一度ソフトを終了し、GPSモジュールを抜いて再度挿入します。
ソフトを立ち上げて同じ場所を確認すると、「Stationary」になっています。
設定変更は成功しました。

これで、1PPSの安定度がアップしたはずです。
GPSモジュールをGPSDOに組み込んで、正常動作を確認しました。
これから数日間、GPSDOを立ち上げてログを取って比較します。

コメント

  1. honkytonk より:

    こんばんは
    中国語のマニュアルは一応読んだのですが、CAS11の記述はなく、Stationaryモードは知りませんでした。情報ありがとうございます。今度試してみます!

  2. パオさん より:

    コメントありがとうございます。
    マニュアルは情報不足だったので、「ATGM336H」で検索して中国語のブログを翻訳サイトを駆使してやっと見つけました。
    大変お世話になったので、少しでもお役に立てれば幸いです。

    • honkytonk より:

      情報たすかります。F/Wを修正して昨夜から動かしてみています。ログはとっていませんが…

      私が参考にしていた仕様書は、CASIC多模卫星导航接收机协议规范 でした。これは、GnssToolKit3 の中にもはいっていました。こちらには、他の設定や通信プロトコルも説明されています。中国語なので雰囲気しかわかりませんでしたが…でも、CAS11の説明はなかったです。