ヒートプレートの動作確認

初めて行う「自宅リフロー」に向けて、前回はステンシルを作りました。

今回は、リフローをやる時にメインとなる、ヒートプレートと温度計の動作を確認します。
(前回のカッティングマシンを使って、ステンシルを作る記事はこちら)

器材の準備

使用するのは、AliExpressから購入したヒートプレートとaitendoの温度計です。

このヒートプレートは、バックライト用LEDが一部だけ故障した場合に、そのLED部分を温めて取り外す道具として販売されているものです。
電源を入れると数分後に、自動的に表面温度が260℃で安定するPTCヒータが内蔵されています。
(と、販売元のHPに書かれています。)

AliExpressのヒートプレート

リフロー用のヒートプレートの温度を確認するのに準備したのは、aitendoで購入した温度計を分解したものです。
計れる温度の上限は300℃だそうです。

温度計を分解後して電源を単3電池に交換し、台座を足しました。台座の裏にはマグネットを付けて、鉄製の作業台に固定できるようにしました。

分解したaitendoの温度計

温度計の機能確認

ヒートプレートの温度確認の前に、aitendoの温度計を単体で機能確認をします。
室温と体温をそれなりの精度で計れることは確認しましたが、100℃以上の温度帯は未計測です。
最初は、ライターの火を近づけようかと思いましたが、炎の温度は800℃を超えるので温度計の上限を軽々と越えてしまいます。

そこで、他の物を作業部屋で探しました。熱源は、ダイソーで購入した、「グルーガン」です。(税別200円)

ダイソーのホットボンド

すでにグルーガンを分解して、中身を取り出しておきました。内蔵されているPTCヒータがこちらです。(3分クッキング風?)

調べたら、ダイソーのグルーガンに内蔵されているPTCヒータの設定温度は170℃位らしいです。aitendoの温度計が計れる最高温度の300℃以下なので、十分温度測定が出来ます。

PTCヒータと温度計のセンサを、ポリイミドのテープで固定します。
火災予防のために、お菓子が入っていた鉄製の缶のフタの上で実験します。

数分で安定して210℃程度で止まりました。思ったよりは高温でした。
グルーガンのPTCヒータは、グルースティックを溶かす金属製(アルミ合金製?)の口金を通して動作するので、説明で見た170度はヒータ部分の温度ではなく、口金の先の部分の温度なのかもしれません。
とにかく、この温度計で200度以上が計れることが分かりました。

ヒートプレートの温度測定

OLEDオシロスコープの基板に温度計のセンサをポリイミド・テープで固定して、ヒートプレートの上に置きます。
このヒートプレートは設定温度が260℃です。

通電して5分程度で温度が安定しました。
150℃です。ちょっと低いですね。
200℃以上は行くと思ったのですが・・・
マイナスドライバで基板を押し付けても浮いてはいないようで、温度変化はありません。

ヒートプレートの周辺には、囲いもフタもないので空中に熱が逃げているのでしょうか?
でも、販売元のHPで公開されている動画では、このヒートプレートを作業場所で普通に使っていたので、基板からLEDを外す程度の温度までは上昇するはずです。

放射温度計で、基板上の複数個所を計ってみます。
あれ?210℃以上を計測しました。

この放射温度計は安価でしたが、キッチンで空揚げやトンカツなどの揚げ物の油の温度を測るのに使っています。大活躍しています。
料理は毎回おいしくできているので、信頼できると思われるものです。

温度誤差の確認

困りました。aitendoの温度計と放射温度計の表示には60℃近い差があります。
さすがに60℃の誤差があると、SMDパーツやクリームはんだの温度管理が出来ません。
仕方がありません。計測器の出番です。

「Metex M-3860D」を出してきました。
自宅にあるマルチメータで、温度が計れるのがこれだけでした。(多分)
一応、K熱電対で1200 ℃まで計測出来ます。マニュアルに記載されている誤差は3%でした。


aitendoの温度計と同じ位置になるように、マルチメータのセンサを基板に固定します。

途中経過です。
100℃の手前までは同じぐらいの値を示していましたが、150℃を超えると数値の差が増えてきました。
マルチメータの値が正しいとすると、150℃帯でaitendoの温度計は40℃ほど低く表示されるようです。

同じ状態の時に放射温度計でも計ってみます。
ほぼ、M-3860Dと同じでした。こちらは優秀です。
これからも空揚げをおいしく作るのに、今までどおり役立ってくれそうです。

数分放置すると、205℃位で温度が安定しました。

販売元のHPに書いてあったヒートプレートの設定温度は260℃ですが、基板の表面にセンサを取り付けており、アルミ板から空間への熱の逃げなどを考えると温度の上昇はここまでのようです。
200℃でaitendoの温度計は、50度近く低く表示されています。
(放射温度計は、ほぼマルチメータを同じ値です。)

動作確認の評価

これだけ温度の誤差があると、aitendoの温度計はさすがにリフローには使えませんね。
(マニュアルに記載されている誤差は 1% で、本当ならばマルチメータより高精度ですが。)

今回、AliExpressで注文して、まだ届かないクリームはんだは通常の物と低温タイプも選んでみました。
低温用のクリームはんだの商品説明ページには、138℃で鉛フリーと書いてありました。
通常のクリームはんだは、183℃と書かれていました。

どちらも、このヒートプレートで十分に対応可能です。
ただし、aitendoの温度計は誤差が大きすぎて使えません。
分解して、誤差を修正する改造をするか、マルチメータを使うか考えなければなりません。
(色々な温度センサとSSRなどは部品箱にあるので、急いで温度制御装置を作るという選択肢もありますが・・・)

今まで、温度計測はセンサのデータシートさえ読んでおけば、センサの誤差範囲で計測できる比較的簡単なものだと思っていました。
その誤差も、せいぜい数℃程度で収まるものだと。
しかし、今回、3種類の温度計で計測してみましたが、50℃以上の誤差がありました。

この温度帯で思いつく身近な例では、揚げ物の「高温」は185~190℃、「中温」は170~180℃、「低温」は165~170℃などと言われます。これは、温度誤差 3% 以下を要求しています。
この精度は、マルチメータのセンサでようやく達成できるものです。(aitendoの温度計では全然無理そうです。)
そう考えると、料理人や慣れた主婦(主夫)の油の温度の見極め能力は、大変素晴らしいものだと感心します。

小型ホットプレートの温度確認

ついでなので、小型ホットプレートの表面温度も確認しておきます。
ホットプレートの中央辺りに基板を置きます。
センサはマルチメータのみを取り付けますした。

数分で安定しましたが、小型のヒートプレートより低い190℃位でした。
(ヒートプレートでは、205℃位までは上昇しました。)

放射温度計でも測定します。
基板上の数か所で測定しましたが、190℃位でした。

小型ホットプレートと言っても、7 cm四方の小型ヒートプレートと比べるとかなり大きい上に、190℃程度までしか温度が上がりません。
さらに、マルチメータの温度測定用ケーブルは非常に硬いので、センサーを張り付けると基板が浮き上がってしまいます。(今回の温度測定の際には、マイナスドライバで押し付けました。)

やはり予定どおりにヒートプレートで「自宅リフロー」をやってみます。
(早くAliExpressから部品とクリームはんだが届かないかなぁ。)

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