信号発生器の製作(Pa-Lab2号機)

携帯型計測器の4回目は、信号発生器の製作です。
前回、電源を作成したので、順番的に次に必要なのは信号源ですね。オーディオ帯から10MHzぐらいまでは欲しいです。
と言っても、今回の製作記事は以前作ったものの改修になります。

完成した信号発生器(Pa-Lab2号機)

信号発生器の仕様

以前作った信号発生器はこんな外観です。
これをPa-Labのケースに入れ直し、実験用のスペースを確保します。

この信号発生器は、サイン波、方形波、三角波を切り替え式
周波数出力は、(一部不安定ながら)50Hz~12MHz程度

昔流行った、金属ケースを加工したものですが、内部は秋月電子の信号発生器キットと、ロジックICで作った切替回路、PICで作った周波数カウンタの組み合わせで出来ています。電源は信号発生器基盤に±5V,100mAが必要ですが、計測器から回収した単電源から正負電源を生成する電源モジュールを使用しています。

この信号発生器を小型化改修します。
信号発生器の模式図

信号発生器の主要部品は、販売終了した秋月電子の「広帯域精密波形オシレータキット」です。MAXIM社(現在のANALOG DEVICES社)のMAX038という信号発生チップを使っていますが、現在、チップは製造中止で入手できないようです。(中華製の製品は、なぜかAmazonやAliExpressで販売しています。)

これを、手狭な実験用机で他の機材と並べて使うために、PaLab2号機として組み直すとともに、不具合場所の改善を行います。

信号発生器の製作

まずは、バラす前に機能確認を行います。
出力信号の切り替えは、基盤から無理やり配線を伸ばして外付けでコンデンサを追加して、スイッチを押すとロジックICによりリレーで切り替えて正面パネルにバー状に並べたLEDを点灯させるという力技でした。
キットの説明にもありますが、MAX038というICは、信号出力が不安定になるので、外付けで切り替えてはいけないと書かれています。そのせいもあり、6段階の切り替えが設定されていますが、ちゃんと信号が出力されない部分がありました。
3種類の波形の切り替えも、ロジックICで切り替えて、正面パネルのLEDを点灯させていました。
正面パネルには、BNC端子が2個あります。これは、上が周波数の出力、下はPICで作った周波数カウンタの入力端子になっていました。
調整用のボリュームは、主調整用と微調整用の2個が付いています。

結構な大きさの金属製のケースから、小型のPa-Labケースに入れるために機能を検討します。
1 出力信号を安定させるため、最短の配線で切り替えるよう改修
2 波形切り替えは、スライドスイッチに置き換え
3 周波数の微調整は廃止
4 周波数カウンタの入力も廃止
5 ただし、BNCで50Ωの出力だけでは不便なので、オーディオ用の端子を増設
それでも、現在使っているLCDはそのままではケースに入る隙間がないので、手持ちで小型の物に変更する。

電源部

現在の電源部は、以前、破棄予定の計測器(メーカー・型番は忘れました。)から回収した電源モジュールはCR BOX社のCX225-5という物を使用しています。色々と探しましたが、このモジュールの取扱説明書は見つかりませんでした。
これに+9Vを入力し、出力は±7V位が出力されるので、正と負の3端子レギュレータで±5Vを作って信号発生器基盤に送っていました。

今回、実験用電源で試験してみると、入力を+5Vとすると出力は±5V強でした。「MAX038」の電源の上限は±6Vなので許容値内です。
ノイズも計測器用だけあって少ないです。そのため、出力部の3端子レギュレータは廃止して、入力電圧を9Vから5Vにしました。
ケースの裏側に電源用のUSBタイプCコネクタと配線を取り付けました。

使用した電源モジュール
ケース裏に給電用USBコネクタを設置

周波数カウンタ部

周波数カウンタは、JK1XKPさんの「本格的周波数カウンター」を使用させて頂いています。このカウンタは、PIC16F84という8bitのマイコンを使用したものです。
他のマイコンで作り直すことも考えましたが、調子良く動いているのでPICはそのまま使います。
プリスケーラを用いて100Hz~2.5GHzまで計測できますが、今回の信号の上限は20MHzぐらいなので、「簡易型1」(100Hz~30MHzまで)にユニバーサル基盤で作り直しました。プリアンプ部は2SK241と2SC1815を使っています。
基準信号は、kyocera社のKTXO-18S(18S-03A-4)というオシレータで、12.8MHz ±3ppm程度ですが十分すぎる性能です。
LCD部で説明する理由から、オシレータの下にLCD用の可変電源を追加しました。

周波数カウンタ部

LCD部

周波数表示部はケースが大きかったので通常の16文字2行のLCD(SC1602、幅85mm)を使っていましたが、小型化するためにaitendoの福袋に入っていた小型の物(PX160242、幅66mm)に入れ替えます。(Amazon等で手に入る「HD44780」は約80mm)

aitendoの「PX160242」

ブレッドボードでLCDの機能確認です。まずは資料収集ですが、「PX160242」の取扱説明書は見つかりませんでした。
このLCDはaitendoで入手したものですが、同様のLCDはAliExpressでも購入可能です。バックライトはELらしくインバータ回路を作るのが大変なので使用しません。
ピンアサインは、それぞれの部品のページから拾いましたが、そのままでは動作しませんでした。たまたま、私が入手したものの配線が違っていたのかもしれませんが、動作したピン配置を「実際」の欄に記入しました。ご参考まで。(Pin1はNCです。)

aitendoAliExpress実際
23.3V3.3V4.1V
3GNDGNDGND
4DB7DB0DB7
5DB6DB1DB6
6DB5DB2DB5
7DB4DB3DB4
8DB3DB4DB3
9DB2DB5DB2
10DB1DB6DB1
11DB0DB7DB0
12EEE
13RWRWR/W
14RSRSRS
15LED_G_ALEDG_ALED_G_A
16LED_G_KLEDG_KLED_G_K
17LED_R1_KLED_R2LED_R2_K
18LED_R_COMLEDR_COMLED_R_A
19LED_R2_KLED_R3RED_R1_K
20LED_R3_KLED_R1RED_R3_K
LEDは左から番号付けしました。

まず、電源は3.3Vでは真っ黒で何も見えません。しかたがないので、「TL431」で+5VからLCDが表示される4.1V程度に可変できるような電源を作りました。
ケーブルは1mmピッチのフラット・ケーブルですが変換基盤があったので、それを使いました。

信号ラインはDB4~DB7の4本とその他を合わせても6本(電源を含めると8本)です。変換基盤がなければ直接ハンダ付けしたほうが早いかもしれません。

表面パネル

3Dプリンタで作ります。すでにPa-Lab1号機を「Autodesk Fusion 360」で作っているので、コネクタなどを追加するだけで簡単に出来ました。
(Pa-Labケースは下をクリック。戻るにはブラウザの「戻る」ボタンで。)

信号発生器基盤

秋月電子の「広帯域精密波形オシレータキット」は、そのまま余裕でPa-Labケースに入ります。
信号出力は、基盤に直接BNCコネクタを付けたので、基盤を正面パネルに固定できます。
周波数切替は、基盤から最短距離で小型の切り替えスイッチにつなぎます。
小型のロータリースイッチに基盤をカットして取り付けて周波数切替用のコンデンサを付けました。コンデンサは、SMDタイプを4つ付けました。これで50hz~20Mhz位まで可変できます。(取説には周波数切替用のコンデンサは直付するよう指示があります。

コンデンサ値周波数レンジ採用
470uF0.1Hz~1.5Hz
100uF0.5Hz~7.5Hz
10uf5Hz~75Hz
1uF50Hz~750Hz
0.1uF500Hz~7.5kHz
0.01uF5kHz~75kHz
1000pF50kHz~750kHz
82pF610kHz~9.2MHz
20pF2.5MHz~20MHz
周波数切替用のコンデンサ値
周波数切替SW

波形切り替えは、ロジックICで切替回路を組んでいましたが、検討したら2連のスライドスイッチで出来ることが分かったので、スイッチ切り替えにしました。

JU1JU2出力波形
オープンオープンサイン波
オープンショート三角波
ショートショート方形波
信号発生器基盤の波形切替対応表

取り付けていた微調整用のボリュームは、使用する場合を考えてケース内に残しました。

組み立て

出来上がったモジュールを組み立てます。
電源モジュールは、強力な両面テープでケース内上面に固定し、周波数カウンタは絶縁して左側に収めました。

LCD横にオーディオ用のコネクタと出力調整ボリュームを付けました。この部分だけは、コネクタを正面パネルに固定してからハンダ付けしなければならないので面倒でした。(これを追加しなければ、通常のLCDが入ります。)
なお、オーディオ用ボリュームのノブは、小型化するために3Dプリンタで作成しました。

オーディオ用コネクタのみ裏側に固定ナット
オーディオ用ボリュームのノブは3Dプリンタで作成

その他の部分はコネクタで接続するだけなので、簡単に出来ました。
この後、正面パネルに、いつものテプラでラベルを付けます。

波形切り替えは、□が方形波、~がサイン波、△が三角波です。

まとめ

PaLab2号機として蘇った信号発生器は、小型化されて良い感じです。
切り替えもちゃんと機能しているので、不具合も解消しました。満足度は95点です。

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