前回、、オシロスコープ(SDS804X HD)付属品のプローブ「PB470」の周波数特性を確認しました。
今回は、注文していた Siglent 社のオシロスコープに接続して使用する信号発生器「SAG1021I」の動作確認を行います。
なお、販売されている色々なオシロスコープから、悩みながら Siglent 社の「SDS804X HD」を選んだ細かな過程は下の記事をご覧ください。
使用したオシロスコープ
この信号発生器は、Siglent 社製の色々なオシロスコープで使えますが、私の使用したオシロスコープは、Siglent の SDS804X HD です。
同社では安価なシリーズですが、最新式の解像度 12 ビットです。

SAG1021I 任意波形発生器モジュール
注文していた信号発生器が届きました。
1週間ほどで北海道まで届いたので、専用のオプション品としては迅速だと思いました。
荷姿
大き目の箱の中に、小さめの Siglent の段ボールが入っていました。

内部は、こんな感じです。

内容品です。
・信号発生器:SAG1021I
・USB ケーブル(太くてしっかりした作りです。)
・BNC ケーブル(良さげな感じのケーブルです。)

本体
信号発生器 SAG1021I の表面です。
良く見ると、型番の横には「50 MHz 125 MSa/s」と書かれています。
あれ?販売店の写真では「25 MHz」だったはずですが、50 MHz まで動くようにアップグレードされたのかな?
後で動作確認をしてみます。

端子側です。
BNC 端子が2つと、LED 表示器が4つ見えます。

USB 端子がある側です。

信号発生器の機能
販売店の HP に書かれている信号発生器の諸元です。
最大出力周波数は 25 MHz で、最小は 1 uHz でしょうか?
出力できる波形は、5種類と、45種類の内蔵波形に DC 出力があるようですが、外部から 10 MHz などの標準信号を入力することは出来ないようです。
チャンネル数 | 1 |
最大出力周波数 | 25 MHz |
サンプリングレート | 125 MSa/s |
周波数分解能 | 1 μHz |
周波数確度 | ±50 ppm |
振幅レンジ | 50 Ω: -1.5 ~ +1.5 V / High-Z: -3 ~ +3 V |
波形タイプ | 正弦波、矩形波、ランプ波、パルス、ノイズ、DC、内蔵波形(45種類) |
マニュアルの記載
それでは、SDS804X HD(日本語版)の記載に従って、信号発生器から波形を出力してみます。
なお、マニュアルが記載された後にオシロスコープのファームウエアに重要なアップデートがありました。
当ブログの「オシロスコープ バージョンアップ 2025」で記載しましたが、2024年6月24日に公開されたファームウエア 1.1.3.8 で、信号発生器を制御する機能の制限解除が実施されています。
それまでは有料($200 程度?)だった追加機能が無料で使えるようになっています。
マニュアルの27項目「任意波形発生器」に、信号発生器の使い方が記載されています。
ただし、上記のようにマニュアル記載時は、オシロスコープから信号発生器を制御するために有料のオプション機能をインストールする必要があったために「SD800XHD-FGオプションのインストールについては、「オプションのインストール」セクションを参照してください。」という記載がありますが、ファームウエア 1.1.3.8 以上にアップデートされていれば、この手順は不要です。
SAG1021I の接続
SAG1021I の左側の BNC 端子とオシロスコープの CH1 を付属の BNC ケーブルでつなぎます。(今回は 50Ω変換器を途中につなぎました。)
そして、付属の USB ケーブルでオシロスコープと接続します。

すると、オシロスコープが信号発生器を自動認識します。

波形の出力
SDS804X HD の日本語版のマニュアルには、「前面パネルの WaveGen ボタンを押す」と書かれていますが、表面パネルには物理ボタンの「WaveGen」は見当たらないようです。(私の眼が節穴なのかな?)

実際には、左上のメニューの Utility > Wave Gen を押して、信号発生器の機能を呼び出します。

メニューは右側に表示されます。

このメニューでは、
・信号発生器のオン/オフを切り替える。
・波形タイプを選択する(正弦波、方形波、ランプ波、パルス、ノイズ、DC、任意波形)
・周波数を設定する。
・レベル(振幅)を設定する。
・オフセットを設定する。
・その他の設定:出力負荷、過電圧保護、オートゼロなど
・システム情報とファームウェアのアップグレード
が選べます。
波形出力の際には、本体の LED が3か所(Busy 以外)点灯します。

Sine 波形
最初に、正弦波(Sine 波形)を出力してみます。
正弦波を除く以下の項目では、それぞれの波形の最大周波数で出力しています。
正弦波で設定できる最低周波数は 1 uHz でしたが、オシロスコープで観測できる最低周波数は、10 Hz でした。

正弦波で設定できる最大周波数は 25 MHz でした。
表面に記載されている「50 MHz」は入力できず自動的に 25 MHz になります。
(後から確認したところ、SDS3000X HD シリーズのオシロスコープにつなぐと、50 MHz で動作するようです。)

方形波(Square 波形)です。
設定できる最高周波数は、10 MHz でした。(波形の形は疑問符付きですが・・・)

のこぎり波(Ramp 波形)です。
設定できる周波数は最低の 300 kHz でした。

パルス波(Pulse)です。
設定できる最大周波数は、10 MHz でした。

ノイズ (Noise)波形です。
この波形には、もちろん周波数設定はありません。

任意波形 (Arb)です。
プリセットされた色々な波形が選べますが、マニュアルによるとパソコンに接続して専用ソフトで自由な波形も作れるようです。
今回は、プリセットの波形を出力してみました。
最大周波数は 5 MHz です。

任意波形は、AWG ダイアログボックスで Arb Type をタッチし、ポップアップウィンドウで任意波形を選択できます。
任意波形は6つのタブにまとめられていて、全部で45種類の波形から選べます。

その他の設定
「Wave Gen」メニューの「Setting」では、
・出力負荷:50Ω又は High-Z(50Ωを選ぶと単純に振幅が半分になります。)
・OVP(過電圧保護)をオン/オフ
・同期出力をオン/オフ
・ゼロ調整
・デフォルトに設定を戻す。
が選べます。

注意事項
このメニューの中の「Zero Adjust」を選ぶと出てくるメニューの「Auto Steps」を実行する際には注意が必要です。
とりあえず手順を紹介します。
1 この機能はオシロスコープの CH1 でのみ機能します。BNC ケーブルは CH1 に接続します。
2 「Auto」を押すと、それまでのオシロスコープの設定が勝手に変更されます。(オシロスコープの CH1 を 20 MHz の帯域幅制限、1 mV/div、トリガ CH1、自動、立ち上がりスロープ、レベル 0 Vに設定します。)
そして、オートゼロの調整が終わっても、以前の設定には戻りません!
3 何度か試してみましたが、オートゼロは失敗しました。
色々と調べて ±1 mV 以内になると成功らしいと分かったのですが、誤差が大きいままです。(ちゃんと CH1 に接続したのに、何が悪いのかな?)

システム画面
システム画面を選ぶと、こんな情報が表示されます。
また、現在は公開されていませんが、この画面から SAG1021I のアップグレードが行えます。

保存/呼び出し
今回は動作確認していませんが、SDS800X HD 単体で、波形データファイルなどを内部ストレージ、外部USBストレージデバイス、または LAN でつながった先に保存することが出来て、必要に応じて呼び出すことができます。
精度など
アマチュアの日曜電子工作好きなので、正確な精度を計測する機材などは持っていませんが、一応、信号発生器の周波数と出力振幅を見てみます。参考程度で御覧ください。
周波数
SAG1021 のカタログ上の周波数精度は「±50ppm」だそうです。
これは、結構な誤差ですね。
我が家で一番正確(と思われる)1か月弱電源を入れてある GPSDO を使います。
現在の GPSDO の周波数誤差表示は、+0.2 mHz 以下です。
オシロスコープに GPSDO の出力である 10 MHz を入力して、周波数カウンタ機能(画面右上の表示)の数値を見てみます。
「10.00010 MHz」ですね。
購入時にルビジウムの 10 MHz を計測してみた時には「10.00009 MHz」だったので、現在も同じ程度の誤差です。

SAG1021 のサイン波で 10 MHz を出力します。
オシロスコープの周波数カウンタでは「9.99994 MHz」です。
GPSDO との差は 160 Hz ですが、これが「計測器」の誤差として大きいのか小さいのかは、他に市販の信号発生器を持っていないので判断がつきません。
しかし、カタログ性能の「±50ppm」を大きく下回る +1.6 ppm 程度なので、この信号発生器は小さなケース内に十分信頼できるオシレータ(TCXO?)を内蔵しているものと思われます。(調整できれば最高なのですが。)

振幅
波形の正確な振幅を計測する方法がないので、DC モードで出力される電圧を確認してみます。
その前に、「オートゼロ」で調整できなかったので、手動でゼロ調整を行います。
オシロスコープのCH1 の振幅を「10 mV」にして、手動でノブを調整してから「Save」を押したら、「Zero adjust completed.」が表示されました。(手動調整後の誤差が 1 mV 以下と評価されたようです。)

購入時に基準電圧発生用 IC の出力 +5 V を、このオシロスコープで計ったところ「5.03 V」でした。
SAG1021 の設定を DC にして、出力できる最大の「3 V」を計測してみます。
オシロスコープの計測結果は「1.47917 V」でした。

基準電圧を計測した結果で、オシロスコープの振幅は小数点以下2桁ぐらいの精度はありそうなので、プラス側で 1.48 V、振幅としては 2.96 V 程度(誤差は 0.04 V)を検出しているようなので、SAG1021 の信号発生器としての振幅も信頼できそうです。(歯切れの悪い言い方ですが・・・)
評価と次回の予定
今回は、オシロスコープ専用の信号発生器(SAG1021I)の基本的な使い方と性能を確認しました。
小型軽量な本体は、私の狭い電子工作用の机の上で使うには最適です。
単体で信号発生器として使えない、基準信号の入力がない点はマイナスですが、信号発生器を使うときには、オシロスコープで波形を見ることが多いので大きな問題ではないと思いました。
何よりも「小型ガジェット大好き」なので、黒くてカッコよい外観だけで満足しています。
(この信号発生器がオシロスコープに合体して、内蔵できれば最高なのですが。)
また、周波数と振幅も思った以上に正確だったので安心しました。
しかし、「保存/呼び出し」機能(パソコン経由での波形生成も)や「同期出力」機能については確認できていません。
オートゼロ機能がエラーになるのも気になります。
また、「ボード線図」機能についても未確認です。
ボード線図という言葉自体を、オシロスコープ SDS804X HD の取説で初めて見たのですが、オシロスコープで接続された信号発生器を制御する大変便利な自動計測機能のようです。
(愛読しているトランジスタ技術の目次データベースで「ボード線図」を検索してみましたが、見つかりませんでした。)
次回は、これらの機能の使い方を勉強しながら解説したいと考えています。
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